墓じまいとは、今あるお墓を撤去・墓所を更地にして、管理者へ土地を返すこと。墓じまいして取り出された遺骨は、永代供養墓や樹木葬、納骨堂といった別のお墓に引越し(=改葬)するのが一般的です。
この記事では、墓じまいが増えている理由や手続きの流れ、費用などをまとめて解説します。
墓じまいとは?
墓じまいとは、墓石を撤去・墓所を更地にして、土地の使用権を管理者に返還すること。墓じまいをするには、行政手続きと新しいお墓の準備が必要です。墓じまいをするお墓から、新しいお墓に遺骨を埋葬・供養する一連の流れを墓じまいとする考えもあります。
また、「墓じまい」と似た言葉で「改葬」というものもあります。まずは、両者の違いを整理しておきましょう。
墓じまい
「墓じまい」とは、お墓を撤去して墓所を更地に戻し、墓地の管理者に返還することです。埋葬されていたご遺骨は別のお墓に引越し(改葬)するか、合祀墓に埋葬するなどの選択をすることになります。
墓じまいには必ず改葬が伴います。お墓を片づけるからといって、お墓の中のご遺骨まで処分してしまうわけにはいかないので、ご遺骨をどのような形で供養するかを決める必要があります。
改葬
「改葬」は、今あるお墓からすでに埋葬されているご遺骨を取り出し、所定の手続きを踏んで、一般墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬など、別のお墓に移動させることで、いわば、お墓の引越しのことをいいます。
法律上、ご遺骨は勝手に処分したり廃棄することはできませんので、墓じまいや改葬をするには行政手続きが必要です。今あるお墓の管理者や住職などにもご理解をいただかなければなりません。また、お墓の撤去費用も決して安くはありません。
墓じまいが増加している理由
なぜ、墓じまいが増えてきているのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年度衛生行政報告例」によると、2022年度は全国で15万1,076件(前年比3万2,101件増)の墓じまいがありました。また、継承されないお墓・無縁墓を行政が撤去した件数は、全国で3,414件になっています。
墓じまいは、毎年、増加傾向にあります。これまでは、2019年度の12万4,346件が最多でしたが、2022年に急増する結果となりました。都道府県で墓じまいが多いのは、北海道(1万2,243件)、東京都(1万915件)、大阪府(7,934件)でした。
これまで大きな理由と考えられてきたのは「少子化などによりお墓の継承者がいない」ことが挙げられます。なお、「子どもたちにお墓を継ぐ負担をかけたくない」「高齢になりお墓の管理ができなくなってしまった」「お墓を維持するためにお金をかけたくない」など、墓じまいを考えている方々にはさまざまな理由があります。地方などでは、その地域一体が過疎化となり、墓じまいを考えなければならないという切実な状況にある場合もあります。
また、最近では、自分で埋葬の仕方を決めたいということで、今あるお墓をご自身で墓じまいした後、樹木葬、永代供養墓、納骨堂、散骨など、継承者を必要としない埋葬方法を選ばれる場合もあります。
ライフスタイルの多様性や、お墓に対する価値観の変化などが、墓じまいが増える要因になっているようです。
ご自身が墓じまいをするケース
お墓の管理をする子どもたちがいたとしても、お墓を継ぐことができない理由がある場合、墓じまいをすることもあります。特に多い理由として、現在の住まいがお墓のある場所から遠く離れているため、お墓参りになかなか行くことができないというケースです。
その場合、現在あるお墓を解体・撤去して、継承する方が住む場所の近くにお墓を移すことになります。そして、お墓に埋葬されていたご遺骨を取り出して、改葬先のお墓に移すことになります。改葬先は、一般墓のほか、樹木葬、永代供養墓、納骨堂、散骨という選択肢もあります。
無縁墓のケース
昨今、無縁墓が増加しています。無縁墓とは、お墓を継いでくれる人がいないままに、手入れも法要もされずにそのままの状態になっているお墓のことです。お墓参りもされないので、墓石は掃除もされず、墓石も古びた状態になっています。雑草などが伸び放題で霊園の景観を悪くしていることも多々あります。
お墓を継いでくれるお子さんがいないのか、あるいは、お子さんがいたとしてもお墓があることを知らずにそのまま放置しているのか、理由はさまざまです。継承者が名乗りでない場合、お墓は撤去されることになります。
墓じまいをしないとどうなる?
墓じまいをせず、お墓をそのままにしておくとどうなるのでしょうか?
お墓を購入した際、土地を借りる契約(使用権)になっているため、お寺や霊園に管理料を支払う形となります。そのため、放置されたお墓は管理料の未払い状態が続き、一定期間を超えると「無縁墓」として扱われて強制的に撤去されてしまいます。
強制撤去された場合、ご遺骨はほかの人のご遺骨と一緒に合祀墓に入ることになるため、後から「もう一度埋葬し直したい」と言ってもできなくなります。継承者がいないなどの状況の場合は、必ず事前に墓じまいについて考え、お墓の放置は避けなければいけません。
墓じまいの手続きの流れ・手順・方法
墓じまいの流れは、新しく引越しするお墓の場所や、埋葬方法などによって異なってきます。墓じまいをする際の手続きは自治体によっても違いますので、今あるお墓の所在地の役所で改葬に必要な手続きや書類を確認する必要があります。
以下では、墓じまいの一般的な流れをご紹介します。
1. 親族で話し合いをする
墓じまいをするときには、必ず親族と話し合いを行ってください。お墓を継ぐのが自分だとしても、お墓は家族を象徴する意味合いもあります。わずらわしいと思わずに、親族一人ひとりの墓じまいに対する意見に耳を傾けるようにしましょう。
2. 墓地管理者へ墓じまいの旨を伝える
親族の間で墓じまいをする合意が取れたら、今お墓があるお寺や霊園に墓じまいの旨を伝える準備をしましょう。墓じまいをスムーズにすすめるには、あらかじめご相談をして、ご家庭の事情を理解してもらうことが大切です。突然、墓じまいをしたいということを、一方的に伝えるのはおすすめしません。双方が分かり合えた上で、気持ちよく墓じまいをしたいものです。後述しますが、「埋蔵証明書」は、現在のお墓の管理者に交付をしてもらうことになります。
3. 新しい納骨先を決める
墓じまいをするときには、ご遺骨をどのように供養するかを考えなければいけません。主な方法としては、「一般墓」「永代供養墓」「納骨堂」「樹木葬」という選択肢があります。後述しますが、「受入証明書」は、新たな改葬先のお寺や霊園の管理者に交付をしてもらいます。
4. 墓石の撤去を依頼する石材店を決める
次に、墓石の撤去作業をお願いする石材店を選びます。お寺や霊園が石材店を指定していないのであれば、複数の石材店で見積もりを取るとよいでしょう。
全国1,000件以上の石材店と提携している「いいお墓」では、お客様のご要望に合わせて、最適な墓じまい業者を紹介いたします。
5. 改葬許可申請の手続きを行う
遺骨をほかの場所に移すときには、改葬許可証が必要になります。必要な書類をそろえて、市町村に改葬許可申請を行いましょう。
このときに必要となる書類は「埋蔵証明書」「受入証明書」「改葬許可申請書」の3点です。
「改葬許可証」は、ご遺骨を取り出すために必要になります。なお、「改葬許可証」が発行されるまでには時間がかかることがあるので、余裕をもって手続きを行うようにしてください。
6. 閉眼供養を行う
墓じまいをするときには、必ず閉眼供養を行わなければなりません。これはお墓に宿っている魂を抜く作業のことで、魂抜きとも呼ばれています。なお、僧侶に閉眼供養をお願いするときには、お布施をお渡しするのが通例となっています。浄土真宗の場合のみ、魂を入れる・抜くという概念が無いことから閉眼供養を行いません。
7. 墓石を撤去する
ご遺骨を取り出してから墓石の撤去を行い、お墓があった場所を更地にして、その土地の使用権を管理者(お寺や霊園)に返却します。ご遺骨の取り出しは自分で行うことも可能ですが、墓石の解体工事を担当する石材店に依頼するのが通例です。土葬の遺骨は、土を落としてから火葬を行なわなくてはいけないので注意が必要です。
8. 改葬先に遺骨を納める
新しい埋葬先のお墓にご遺骨を納めます。このとき、僧侶に依頼してお墓に魂を入れる開眼供養も行ってもらいます。僧侶に閉眼供養をお願いするときには、お布施をお渡ししましょう。埋葬時には、管理者に「改葬許可証」を提出します。
墓じまいの費用相場と内訳
墓じまいの費用は大きく分けて、以下の3つです。
- お墓の撤去
- 行政手続き
- 新しい改葬先のお墓
お墓の撤去
お墓を更地にする相場は1㎡あたり10万円程度です。通路が狭く作業車(クレーン車など)が入らない場合は料金が加算されることもあります。また、お墓を撤去する前の閉眼供養で僧侶に読経をしてもらいますが、そのお礼としてお布施をお渡しします。数万円程度が一般的です。
お寺が管理していたお墓を撤去して改葬する場合、檀家を離れることになるため離檀料を払うこともあります。離檀料は数万円から数十万円程度が一般的ですが、離檀料に法的根拠はなく、お寺によって対応はさまざまです。トラブルを防ぐには、墓じまいをする理由をあらかじめお寺に理解していただくことが大切なポイントです。
また、永年お墓に埋葬されていたご遺骨は大変傷みやすい状態になっていたりします。そのため、ご遺骨を洗ったりする作業が必要となる場合があります。ご先祖様のお骨を守るためにも、専門の業者に依頼してメンテナンスをしてもらうのが良いでしょう。専門業者に依頼する場合、数万円程度だとお考えください。
行政手続き
墓じまいをするときは、役所や墓地の管理者から数種類の書類を交付してもらう必要があります。自治体や管理者によって、金額はまったく異なります。発行時に数百円~1,000円程度の手数料が発生しますので、事前に確認をしておきましょう。
新しい改葬先のお墓
既存のお墓から取り出したご遺骨を納めるため、新しい改葬先のお墓を用意する必要があります。お墓の一般的な相場は30万円~100万円程度ですが、お墓の場所や形態、大きさなどよって大きく費用は異なってきます。それぞれの埋葬先のお墓の相場をご確認ください。
墓じまいは、総額で35万円~150万円程度はかかることになります。墓じまいの費用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
墓じまいした遺骨の納骨先・お墓
墓じまいをするときには、ご遺骨をどのように供養するかを考えなければいけません。主な方法としては、「一般墓」「永代供養墓」「納骨堂」「樹木葬」という方法があります。また、「散骨」「手元供養」といった方法を選択することもできます。
一般墓
一般墓とは、家族や一族など家単位で継承していく従来型の伝統的なお墓を指します。いわゆる「お墓」と聞いたときに最初にイメージするものが一般墓と言ってよいでしょう。
一般墓は、納骨室(カロート)に納めるご遺骨の数に(基本的には)上限がなく、管理費を支払うことで永続的に使用することができます。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023 年)」によると、一般墓の平均購入価格は152.4万円です。小スペースの一般墓(墓石がセットされたタイプなどもあり)の中には、100万円くらいでお求めいただけるお墓もあります。
合祀されず、先祖代々のお墓を引き継いでいく一般墓があることで、先祖代々の供養を自分たちで手厚く行うことができます。墓参りのために親族が集まるきっかけになるなど、ご家族のより所にもなるでしょう。
永代供養墓
永代供養墓とは、お墓を継承する人がいなくなったときでも、管理をするお寺が責任をもって供養を続けてくれるお墓のことです。納骨堂や樹木葬も永代供養墓の一種です。
埋葬方法は、合祀型や個別埋葬型があります。合祀型は永代供養墓の中でもっとも費用が安く、3万円~10万円程度が相場です。一度合祀されるとご遺骨を取り出せないというデメリットはありますが、ほかの永代供養墓に比べて格段に費用を抑えることができます。個別埋葬型は、一定期間ないしは永代にわたり個別に供養されるため合祀墓より価格が上がり、100万円近い価格設定の場合もあります。
納骨堂
納骨堂とは、ご遺骨を納めた骨壺を安置するための建物のことです。管理のしやすさや立地の良さから、近年ではお墓ではなく納骨堂を選ぶ人が増えてきています。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023 年)」によると、納骨堂の全国平均購入価格は77.6万円です。
納骨堂はお墓の管理を引き継ぐ必要がなく、多くの場合が永代供養されることになります。一定の年数を経てからご遺骨の場所を移す合祀タイプのほか、継承する方がいる限り使用し続けることができる永代使用タイプもあります。
樹木葬
自然の中にご遺骨を埋葬する供養方法を樹木葬と呼びます。もっとも一般的な樹木葬はシンボルツリーの周りにご遺骨を納める方法ですが、土に埋めて自然に還す方法もあります。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023 年)」によると、樹木葬の全国平均購入価格は66.9万円です。
なお、樹木葬と似た埋葬方法として散骨がありますが、何も知らずに行うと法に触れてしまう可能性があります。散骨をする場合には、専門業者に相談するようにしてください。
散骨
散骨とは、故人のご遺骨を粉末にして山や海などへ撒くことをいいます。永久にご遺骨を手放すため維持費がかかりません。しかし、特定の参拝スペースなどはなくなります。費用は、5万円~30万円程度が目安とされています。最近では、一部のご遺骨を散骨し、残りのご遺骨をお墓に埋葬するという「分骨」を希望される方もいらっしゃいます。
手元供養
手元供養とは、ご遺骨の全部または一部を小型の骨壷などに納めて自宅で安置する方法になります。専用のアクセサリーなどの中にご遺骨を納めて、身に着ける方法などもあります。維持費がかからないのがメリットですが、供養する者がいなくなった場合のことを考えておく必要があります。費用は供養方法によりさまざまですが、数万円~数十万円を目安とすると良いでしょう。
墓じまいのトラブル例と対策
墓じまいのトラブルは、親族、お寺、石材店との間で起きることが多いです。
親族とのトラブル
墓じまいのトラブルとして多いのは、親族とのトラブルです。きちんとした話し合いをせずに勝手に墓じまいをしてしまうと、大きなトラブルに発展してしまうことがあります。お墓を継がない親族であってもお墓には思い入れがあるものなので、親族全員が納得できるまで事前に話し合うことをおすすめします。
寺院とのトラブル
寺院墓地では、「墓じまいは認めない」「離檀する際に高額な離檀料請求をされる」「改葬許可申請書に印鑑を押してくれない」「閉眼供養をしてくれない」などと、何かとトラブルになることもあるようです。特に地方では、過疎化が進み檀家が減り続けると、それこそ死活問題であるという声も多くあります。
まずは、住職をはじめ、お世話になった方々に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。そして、墓じまいをする理由を正しく伝え、理解してもらうことです。簡単に解決しない場合は、弁護士などの第三者を交えて話し合いを進めることが得策です。改葬先の方は、基本的には仲介に入ってもらえません。
石材店とのトラブル
石材店に墓石の撤去を依頼した際に、高額な費用を請求されてトラブルになるケースがあります。逆に安すぎる場合も要注意です。撤去した墓石の処理方法などについても確認しておきたいものです。
事前に複数の業者から相見積りを取った上で、その業者の評判などの情報も収集して、墓じまいを依頼する石材店を決めることをおすすめします。
全国1,000件以上の石材店と提携している「いいお墓」では、お客様のご要望に合わせて、最適な墓じまい業者を紹介いたします。
後悔のない墓じまいにするには事前準備が大切
墓じまいを行うことで、子どもたちへの負担も軽減でき、お墓を無縁墓にする心配もなくなるというメリットがあります。しかし、墓じまいを勝手に進めてしまうとトラブルが起きかねません。
親族やお墓の管理者(お寺・霊園など)にご理解をいただき、スムーズに墓じまいができるよう事前準備はしっかりしておきたいものです。
墓じまい(改葬)を行う業者をご紹介
墓じまい(改葬)は完了するまでの手続きも多く、必要な費用も不透明なところが多いのが実態です。まずは、複数の業者から見積りをとることで費用の全体感を把握しましょう。
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