人生でお墓を購入する機会はあまり多くありません。ですが、一度立てると簡単に建て直しや移転ができないので注意が必要。お墓を購入するときは、お墓の種類や立地、費用など、さまざまなポイントをふまえて慎重に選びましょう。
この記事では、お墓を購入する流れや費用、失敗しないチェックポイントを紹介します。
お墓を購入する流れと手順
- どんなお墓を建てるか決める
- お墓を建てる霊園・寺院を探す
- 墓地購入の契約をする
- 墓石の打ち合わせをする
- お墓を建てる
お墓を購入する流れは、大きく5つのステップにわけられます。ここでは、墓石を墓標とする一般的なお墓「一般墓」を例に、お墓を購入する手順を解説します。
1.どんなお墓を建てるか決める
まずは、どんなお墓を建てるのか、家族・親族間で相談しましょう。お墓には、一般的なお墓である「一般墓」以外に、「樹木葬」や「納骨堂」など、幅広い選択肢があります。
また、墓石の種類やお墓のデザイン、霊園の場所、予算も決めておきたいところ。夫婦や親子、親戚で集まって事前に話し合っておくと、その後の流れがスムーズです。
2.お墓を建てる霊園・寺院を探す
どんなお墓を建てるか決まったら、条件に合うお墓を扱っている霊園・寺院を探します。気になる霊園・寺院は、資料請求して区画や価格などの詳細を確認。資料をもとに良さそうな霊園・寺院を絞ったら、現地に行ってみましょう。
交通アクセスや周辺環境、管理状況などは、実際に現地へ足を運んでみなければわかりません。現地見学では、霊園の担当者から具体的な説明を受けながら、その場で質問できます。1日で3〜5件は回れるので、近くに霊園があれば一緒に見て比較するのがおすすめです。
3.墓地購入の契約をする
要望に合う霊園・寺院が見つかったら、最終確認をして、墓地購入の契約をします。疑問や不安を残さないように、納得いくまで打ち合わせをしてください。
必要な書類を提出して、土地の使用許可を得る「永代使用料」や管理を依頼する「管理料」を支払うことで、墓地購入の契約が結ばれます。
4.墓石の打ち合わせをする
契約が完了したら、石材店で墓石の打ち合わせをします。霊園・寺院に指定の石材店がない場合は、複数の石材店から相見積もりを取得してみましょう。相見積もりした中から、石材店を1社決定します。種類や形、デザインを伝え、予算にあわせて墓石を選んでください。
民営霊園や寺院の場合、利用できる石材店が限られているかもしれません。決められている石材店がないか、契約前に忘れず確認しましょう。
5.お墓を建てる
お墓の工事(施工)が開始されます。お墓の完成まで、2〜3か月は見ておきましょう。工事の過程を見学したいときは、事前に石材店にお願いすれば立ち合いできます。
工事が完了したら、現地でお墓の仕上がりを確認し、契約時の図面や写真と比べて問題ないかチェックします。とくに戒名をはじめとする文字彫刻は、見落としがちなので注意が必要。問題なければ、残金の支払いをして墓石を引き渡してもらいましょう。
お墓(一般墓)の購入にかかる費用
項目 | 平均購入価格 |
---|---|
一般墓の購入費用 | 平均149.5万円 |
永代使用料(土地利用料) | 平均47.2万円 |
墓石費用 | 平均97.4万円 |
一般墓とは、墓石を墓標とする一般的なお墓。先祖代々受け継いでいくお墓のため、「家墓(いえぼ)」とも呼ばれます。
いいお墓が2024年に実施した「第15回お墓の消費者全国実態調査」によると、一般的なお墓の購入にかかる費用は149.5万円。購入費用の内訳は、墓石代が平均97.4万円、土地利用料が平均47.2万円でした。
一般墓は、墓石の種類や量、区画の面積などによって価格が決まります。霊園・寺院ごとに費用や内訳は変わるので、比較検討して費用感をつかんでおくと安心です。
お墓における墓石の種類
一般的な縦長の石塔は、「和型墓石」と呼ばれる墓石です。墓石には、オーソドックスな「和型墓石」の他に、横長の「洋型墓石」や個性的な形の「デザイン墓石」があります。
和型墓石
和型墓石とは、縦長の細長い石塔を特徴とした、日本で一番馴染みのある墓石です。一般的な和型墓石は四段構成で、上から「棹石」「上台石」「中台石」「芝石(芝台)」となります。棹石の正面には、家名や題目などを彫刻するお墓が多いです。
洋型墓石
洋型墓石は、横長で背の低い墓石。石の使用料が少なく、スペースも小さくて済むため、和型墓石より費用をおさえやすいです。また、背が低いぶん倒れにくく、地震にも強いです。
洋型墓石の主な形式は「ストレート型」「オルガン型」「プレート型」で、台石は1つまたは2つ。故人へのメッセージや漢字、レリーフなどを彫刻するのが一般的ですが、比較的自由なお墓を建てられます。
デザイン墓石
デザイン墓石は、オリジナルのデザインが施された墓石。形や構成に決まりはなく、楽器や動物など、バリエーション豊かなお墓を建てられます。墓石の形はもちろん、イラストや言葉、家紋など彫刻の自由度も高いです。
デザイン墓石には、パターンが決まっている「セミオーダー式」と、一からデザインを作る「フルオーダー式」の2種類あります。デザインや石種にもよりますが、和型・洋型墓石より高額になりやすいです。
お墓・墓石を購入する方法
お墓・墓石を購入するルートはさまざま。墓石を購入する代表的な方法として、「石材店」「霊園」「インターネット」の3つを紹介します。
石材店
墓石を専門に扱っている石材店は、お墓の建立に関する相談を随時受け付けています。実物を見ながら、墓石の形やデザイン、石種などを自由に選べるのがポイントです。石材店は、全国規模の大手の会社もあれば、地域に根付いた小規模な会社もあります。いずれにせよ、要望をしっかり聞いて最適な墓石・石材を提案してくれる石材店を選ぶのが大切です。
霊園
霊園によっては「指定石材店制度」があり、利用できる石材店が限定されています。とくに民営霊園や寺院墓地は、指定石材店を用意している可能性が高いです。基本的に、指定石材店以外には建墓を依頼できないので、必ず事前に確認してください。
インターネット
最近はインターネット販売をしている石材店が増えています。パソコンやスマートフォンから手軽に検索でき、さまざまな墓石を比較できて便利です。ただインターネット販売だと、墓石の色や質感がイメージと違うかもしれないので注意が必要。また、霊園・寺院によっては受け入れてもらえないため、事前に確認をとりましょう。
お墓の運営主体
一般的なお墓は、一度建てたら代々受け継がれていくもの。ですが、運営主体の予算が不足していたり、経営が傾いたりすると、十分な管理ができなくなるかもしれません。
お墓を購入するときは、霊園・寺院の運営主体の将来性や永続性を見極めるのが大切です。また、運営主体による霊園・寺院の違いを理解しておきましょう。
寺院墓地
寺院墓地とは、寺院が運営している、お寺の一角にある墓地のこと。お寺によって宗教・宗派が決まっていて、宗旨宗派の制限があったり檀家になるよう求められたりする可能性があります。
檀家になると、納骨後の法要を寺院墓地のあるお寺にお願いするため、建墓したあともお付き合いが続きます。長い付き合いになるので、住職の人柄や対応も確認しておくと安心です。
民営霊園
民営霊園は、財団法人や社団法人などが運営している霊園。委託を受けて民間企業が管理・運営している霊園も多いです。民営霊園は、管理が行き届いていて近代的な施設がほとんどですが、料金はやや高めとなります。
公営霊園
公営霊園は、都道府県や市区町村などの自治体が運営している霊園。民営霊園より安い金額でお墓を建てられますが、応募資格を満たしていないと申し込みできません。また、応募人数が多いと抽選となり、人気の公営霊園は非常に倍率が高くなっています。
お墓を購入するときの注意点とポイント
- 価格・費用
- 立地・交通アクセス
- 霊園内・周辺の環境
- 施設・設備
- 管理体制・状況
- 宗教・宗旨・宗派
- 相続税
お墓を購入するときに注意したい、7つのチェックポイントを紹介します。
価格・費用
お墓を購入するときに必要になる費用は、大きく「永代使用料」「管理料」「墓石代」の3つ。永代使用料は墓所の使用権を得るための費用、管理料はお墓を維持・管理するための費用、墓石代はお墓の建立にかかる費用です。その他、彫刻費や開眼供養、納骨・年忌法要などにかかる諸経費もあります。
とくに永代使用料と墓石代は高額になるので、お墓の購入前に念入りに確かめてください。
永代使用料
永代使用料とは、お墓の土地を使用する権利を得るための料金。お墓を建てる区画は霊園・寺院から借りている土地なので、所得税や相続税、固定資産税などは発生しません。また、当然ながら他人に譲渡することもできません。区画の大きさや向きによって価格が変動し、地価が高い都市部は永代使用料も高くなる傾向があります。
管理料
管理料とはお墓の維持経費で、管理費から墓所の共有部分のメンテナンス代や水道代、電気代などが賄われます。管理費は数千円〜数万円とそこまで高額ではありませんが、支払いが滞ると区画の使用権をはく奪されてしまう恐れがあるので注意が必要です。
墓石代
墓石代とは、墓石の本体、外柵、納骨棺(カロート)、工事・施工費を合計した料金。お墓の立地・条件や石材店によって、費用は大きく変わってきます。なお、公営霊園は自由に石材店を比較検討できますが、民営霊園は石材店を指定している場合が多いので注意してください。
立地・交通アクセス
家族がお参りしやすい立地・交通アクセスは、お墓選びの大切な要素です。足腰が弱ったり車に乗れなくなったりしても、お墓参りしやすい霊園・寺院を選びましょう。健康なときだけでなく、先々も考えて霊園までの距離や交通手段を確認しておいてください。
初回の現地見学だと、霊園まで送迎サービスがあるかもしれません。ですが実際の立地やアクセスを体感するため、公共交通機関を利用するのがおすすめです。また、現在は車のない人も、状況が変わったときのために駐車場の大きさをチェックしておきましょう。
自宅からの距離
自宅からの距離が遠いと、お墓参りに行くのが億劫になりやすいです。お盆やお彼岸など、家族がこまめに足を運べるよう、できるだけ自宅から行きやすい霊園・寺院を選びます。
霊園までの公共交通機関
自宅から霊園までの公共交通機関を確認します。電車・バスの路線や乗り換え回数までチェックして、負担の少ないルートを選びましょう。
徒歩での道路状況
最寄り駅から霊園まで、徒歩で訪問するときのアクセスも確認しておきましょう。急な勾配の坂道があったり、車の往来が多かったりすると、家族に負担をかけるかもしれません。
車でのルートと所要時間
自家用車を持っている方は、自宅から霊園まで車で行くときのルートと所用時間も確認します。
霊園内・周辺の環境
一般的な霊園・墓地は屋外にあります。夏の日照りや冬の降雪、雨風など、季節・天候によって霊園内の環境も変わります。また、あわせて霊園の周辺環境もチェックしておきましょう。山や川、海などの景観は心を和ませてくれますし、お墓参りがてら立ち寄れるスポットがあれば、家族団らんの一時も過ごせます。
日当たり・風通し
日当たりは季節や時間によって変化するため、できるなら何度か足を運んで確認したいところ。また、風通しのよい区画は、湿気がこもりにくく、お墓のお手入れがしやすいです。
水はけ・地盤
土地や区画によっては、地盤がゆるかったり、水が溜まりやすかったりします。水はけが悪いと、お墓の地下にある納骨棺(カロート)に影響を及ぼすかもしれません。
樹木
区画に落葉樹があると、お墓掃除の負担が大きくなります。また、樹木の根が墓域に及ぶと地盤が隆起する可能性があるので注意してください。
施設・設備
霊園・墓地によって、施設・設備の充実度が違います。管理事務所や駐車場、休憩所などの有無を確認しておきましょう。法事・法要の予定がある方は、専用会場のある霊園・寺院を選ぶと手配がスムーズです。また、霊園や設備がバリアフリーだと、お年寄りや車椅子の方でも無理なくお墓参りできます。
駐車場
街の中心部にある墓地だと、お墓参り用の駐車スペースがないかもしれません。霊園・墓地に駐車場があるか、何台駐車できるか確認します。
管理事務所・売店
管理事務所は、お墓に関する相談や手続きの窓口です。いざというときのために、場所やスタッフの対応を確認しておきましょう。また、売店にお花やお線香が準備されていると、手ぶらでお墓参りできるので便利です。
休憩所
お墓参りの途中で立ち寄れる休憩所があると、高齢者やお子さんのいるご家庭は安心です。
法要施設(本堂・礼拝堂)
寺院墓地は基本的に本堂がありますが、民営・公営霊園はまちまちなので確認しましょう。
管理体制・状況
霊園・寺院の管理体制がおざなりだと、お墓や区画が荒れてしまいます。実際に現地見学をして、霊園内の清掃や用具、景観の状態を確認してください。
とくに新しい霊園は、管理状況をもっとも注視したいところ。できたばかりの霊園は当然きれいですが、大切なのは時間が経ってもきれいな状態を維持できるかです。管理事務所がなかったり、管理人が常駐しなかったり、備品を置かなかったりする霊園・墓地もあるので、事前に確認しておきましょう。
清掃の状況
霊園の参道や共用スペースが、きちんと清掃されているか確認します。霊園・寺院によっては、墓所の区画は個々のご家庭の管轄になるため、あわせて確かめてください。
墓参用具
ほうきや手桶、ひしゃくなど、お墓参りに必要な道具が用意されているか確認しましょう。また道具が壊れたり古びたりせず、きれいに保たれている霊園・寺院は安心です。
植込み・芝・樹木の手入れ
霊園内にある植込みや芝、樹木などの手入れが行き届いているかチェックします。
宗教・宗旨・宗派
霊園・墓地によって、受け入れできる宗旨宗派が違います。ご自身が属している宗旨宗派は何か、確認しておきましょう。先祖代々引き継ぐお墓は先々まで影響するため、家族・親族を含めて検討しておくのが安心です。また、墓地の利用にあたって、檀家になる必要があるか確認しておいてください。
「宗教不問」の霊園墓地は、宗教・宗旨・宗派が一切問われません。「在来仏教」は、天台宗・浄土宗・浄土真宗・真言宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗など、昔からある日本の代表的な仏教宗派に限られます。その他、神道・キリスト教・新興宗教など、特定の宗教・宗派の指定がある霊園・寺院はその宗教に改宗・帰依しなければなりません。
相続税
故人が亡くなったあとお墓を購入するなら、購入代金は相続税の対象になりません。お墓は、祖先や神仏を祀る「祭祀財産」とされていて、相続財産とは区別されています。祭祀財産は特定の1人にしか相続されないため、非課税対象になっているのです。ちなみに、お墓の購入代金は所得控除の対象にもなりません。
ただ、生前にお墓を購入しておくと、相続財産から費用を差し引けるため、相続税対策になります。
一般墓以外のお墓と購入にかかる費用
最近は、一般墓に限らず、さまざまなスタイルのお墓が選ばれています。お墓の種類によっても費用が変わるので、合わせて確認しておきましょう。
納骨堂
2020年(n=777) | 2021年(n=455) | 2022年(n=859) | 2023年(n=585) | 2024年(n=1620) | |
---|---|---|---|---|---|
納骨堂 | 87.7万円 | 91.3万円 | 83.6万円 | 77.6万円 | 80.3万円 |
納骨堂とは、遺骨を保管するための施設です。屋内にある施設が多く、都心部を中心に増えています。屋内にあるぶん管理の手間がかからず、立地が便利でお墓参りしやすいのが魅力。また、墓石が不要なので、一般墓より費用をおさえやすいです。
「第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)」によると、納骨堂の平均購入価格は80.3万円。過去5年間の推移を見ても、納骨堂の費用は75万円〜85万円前後です。
樹木葬
2020年(n=777) | 2021年(n=455) | 2022年(n=859) | 2023年(n=585) | 2024年(n=1620) | |
---|---|---|---|---|---|
樹木葬 | 68.8万円 | 71.7万円 | 69.6万円 | 66.9万円 | 63.7万円 |
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標とするお墓で、自然の中に遺骨を埋葬します。日本では新しい埋葬方法ですが、お墓の継承者が不要だったり費用をおさえられたりすることから、注目されています。また、「死後は自然に帰りたい」という自然回帰志向から、樹木葬を選ぶ人も多いようです。
「第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)」では、樹木葬の平均購入価格は63.7万円でした。過去5年間の平均購入価格をみると、樹木葬の費用は60万円〜70万円で安定しています。
永代供養墓
永代供養墓とは、霊園・寺院がお墓の管理や供養をしてくれるお墓。お墓の継承者がいなかったり、途絶えたりしても、霊園・寺院が責任をもって管理を続けてくれます。お墓の継承者がいらないのはもちろん、管理料もかからない永代供養墓が多いです。
永代供養墓の費用相場は5万円〜150万円で、種類や条件によって金額が大きく変わります。
合祀墓
合祀墓とは、複数人の遺骨をまとめて埋葬するお墓。骨壺から遺骨を取り出して埋葬するため、後から個別の遺骨を取り出せません。
合祀墓は、個々の墓石やスペースがないぶん、通常のお墓より費用をおさえやすいです。実際に、合祀墓にかかる費用の相場は3万円〜30万円と言われています。また、お墓の管理・供養を任せられるので、無縁仏になる心配もありません。
お墓の購入を検討中なら「いいお墓」へ
お墓は、一度建てると簡単に建て直せません。改葬となると、数百万円という大金がまた必要になってしまいます。だからこそ、お墓選びは慎重に行うべき。お墓の購入は一生に一度あるかないかの大きなイベントなので、焦らずゆっくり考えてみてください。
「いいお墓」では、お墓の種類や予算にあわせて、全国各地の霊園・寺院を探せます。資料請求や現地見学の申し込みもできるので、お墓探しをよりスムーズに進められるでしょう。お墓の購入をお考えの方は、ぜひ「いいお墓」をご活用ください。