”自然に還る”というコンセプトのもと、墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬。散骨などと並ぶ自然葬の一種で、近年希望者が増えているお墓のスタイルです。
樹木葬墓地は祥雲寺の千坂げんぽう前住職が、自然葬である散骨に影響を受けて発案し、地元住民の同意を得た後、1999年(平成11年)7月に宗教法人祥雲寺の墓地として一関市から許可を受けました。したがって、樹木葬は、当時、祥雲寺の里山墓地として紹介されました。この樹木葬霊園が注目を集め、その後日本全国に樹木葬霊園が広がっていきました。
散骨など自然葬の人気に伴い樹木葬も非常に人気がありますが、「樹木を墓標にしてご遺骨を自然に還す埋葬方法」という概念だけがあり、樹木葬はこういうものだという明確な定義はありません。
樹木葬のメリットとして上げられることのひとつに、一般墓に比べて費用を安く抑えられる点があります。その理由として、墓石を使わないこと、広いスペースを必要としないことという樹木葬の特長が大きく関わっています。最近では、既にあるお墓に納骨されている遺骨の一部を墓じまいして散骨、一部をお引越し、つまり改葬して樹木葬を購入するケースなどもあります。
また、樹木葬は、生前にお墓を探す方にとって、自然に還るため後継ぎが不要なことなども魅力的に見え注目が集まっているようです。
では、実際に樹木葬を行う場合、費用はいくらくらいになるのでしょうか?その詳細や、費用や樹木葬のタイプなどについて詳しくご紹介します。
樹木葬とは
まず、樹木葬の特長ともいうべき4つのポイントを確認してみましょう。
- 自然に還ることができる
- 後継ぎや承継者を必要としない
- 墓石代がかからず、費用を安く抑えられる
- 宗旨宗派を問わないことが多い
自然に還ることができる
樹木葬は墓石の代わりに樹木や花々などを故人の墓標とし、「自然に還る」という多くの人の願いを叶えられるような埋葬方法です。散骨などに比べると、墓標があることなどから参拝しやすいといわれています。
後継ぎや承継者を必要としない
樹木葬では墓石の管理を引き継ぐ必要がなく、多くの場合が永代供養されることになります。そのためお墓の後継ぎについて考える必要がありません。一定の年数を経てから遺骨の場所を移し、合祀となることが多いでしょう。核家族や独身の方も多い現代、承継者を必要としない樹木葬は現代のニーズに合ったスタイルといえるかもしれません。
墓石代がかからず、費用を安く抑えられる
樹木や花々を植えることで墓石の代わりにする樹木葬は、墓石の石材にかかる費用を安く抑えられます。また、故人の遺骨を他人の遺骨とまとめて埋葬することもあるスタイルを選べば、よりその費用は安く抑えられます。埋葬のスタイルについては記事後半でご紹介します。
宗旨宗派を問わないことが多い
”自然に還る”というコンセプトがある樹木葬では、故人の宗旨宗派を問わないことが一般的です。ただし施設によっては法要などをお寺の宗派に沿って行うといった条件がある場合もありますので、事前に必ず確認をしましょう。
いいお墓では宗旨や宗派などの検索条件を絞り込んでお墓探しをすることができます

樹木葬の費用の相場は?
樹木葬の費用相場は、立地や埋葬方法によって幅が出ます。ただし、一般墓と比べると石材に費用がかからないため、平均費用は安く抑えられることが多いでしょう。
全国平均 | 東京都23区 | 大阪府大阪市 | |
樹木葬 | 68.7万円 | 77.5万円 | 52.1万円 |
一般墓 | 176.1万円 | 172.7万円 | 166.2万円 |
また、2019年1月から12月までの1年間に「いいお墓」サイトを利用し、お墓を実際に建てられた方を対象として行った「お墓の消費者全国実態調査」によると、樹木葬の平均購入価格は68.7万円で昨年の数値を下回っています。
対して一般墓は176.1万円と昨年の数値よりも値上がりしています。人気が高まる樹木葬に価格競争が生まれてきていることがうかがえます。
樹木葬の費用の内訳
樹木葬の費用の内訳は以下の通りです。
- 永代使用料
- 埋葬料
- 銘板彫刻代
- 年間管理料
では、これらが何を意味するのかを詳しく見ていきましょう。
永代使用料
故人のお骨を埋葬する土地を使わせてもらうための使用料です。
“永代”という言葉のニュアンスから、お金を払えばその土地を永遠に使わせてもらえそうなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には一定の期間を経過すると、お骨を取り出して他の人のお骨と合祀されるケースがよく見られます。
「13年」「17年」など決まった期間(年忌法要の期間に合わせることが多いようです)骨壺に入れて埋葬し、合同墓などに合祀された後に遺骨を土に還すという方法がとられています。
合祀の有無やタイミングは契約する業者ごとに異なるので、契約のときに必ず確認をしてください。
埋葬料
故人のお骨を埋葬してもらうための手数料で、複数のお骨を埋葬する場合は1霊ごとに埋葬料がかかるのが一般的です。
家族全員で利用する場合、利用人数分の埋葬料を支払う必要があるので割高になることもあります。
また、埋葬料を永代使用料に含めている霊園もありますが、埋葬料を支払わなくて良い代わりに永代使用料そのものが若干高い場合もあります。
必ずしも、埋葬料がない=お得というわけではない点に注意をしてください。
銘板彫刻料
遺骨を埋葬した場所の近くに、銘板、いわゆるネームプレートを設置できるサービスです。
オプションとなっている霊園が多いですが、石材や金属に埋葬されている人の名前を彫って設置してもらえる嬉しいサービスです。
樹木葬はシンボルツリーが成長する関係で、お墓の様子が年々様変わりします。
こういった変化が楽しいという利用者も多いのですが、しばらく訪れていないと周囲の様子が変わってしまって、お墓がどの辺りにあるのかわかりにくくなる場合があるのですが、銘板があればどこに誰の遺骨があるのか明確になるので、お墓参りがしやすくなります。
年間管理料
運営費や管理費などとも呼ばれる、お墓の管理をしてもらうために必要な料金ですが、昨今の樹木葬では年間管理料が無料という霊園も増えてきました。
年間管理料が必要な霊園でも、契約時に、契約期間の管理料を一括で支払うケースもあります。契約時にしっかりと確認をしましょう。
樹木葬の種類・形式と樹木葬費用
“樹木葬”とひとことで言っても、埋葬の方法に違いがあり、当然、かかる費用も異なってきます。
- 個別埋葬タイプ…少し高め
- 合葬タイプ…平均的な価格
- 合祀タイプ…最もリーズナブル
そこで、埋葬方法別の相場についても把握しておきましょう。
個別埋葬タイプの費用と特長
20~200万円
個別埋葬タイプとは、遺骨1霊ごとに1本の樹木を植え、その下に個別に埋葬をするスタイルです。
植える樹木を選ぶことができたり、かつ、家族や夫婦などまとまった家族単位で個別に区画が用意できるため一般的なお墓と同じようにお参りもできるという、樹木葬の中では最もリッチな構成と言えるお墓です。
その分、費用も少し高めに設定されている霊園が多く、また年間管理料が必要になることも多いようです。
合葬タイプの費用と特長
10~60万円
1本の大きな共同のシンボルツリーの周囲に、複数人の遺骨を埋葬するスタイルです。
ただし、地下では区画が分かれているため、他人の遺骨と混ざることはありません。
個別埋葬タイプよりは費用を抑えることができ、樹木葬の中でも平均的な価格で購入できるのが合葬タイプ。年間管理料が不要という霊園も多くあるので、事前にしっかりと確認をしましょう。
合祀タイプの費用と特長
10~20万円
個別のスペースが存在せず、シンボルツリーの下で他の方の遺骨と一緒に埋葬するタイプの樹木葬です。
遺骨は土に還りやすいように粉砕されて土に直接埋葬されるか、土に還りやすい骨壷などに遺骨を入れて埋葬されます。
省スペースであり、個別の樹木の管理を必要としないため、永代使用料や埋葬料は安めで、かつ年間管理料も不要のところがほとんどです。
最もリーズナブルなタイプではありますが、「個別のお参りはできない」「遺骨を取り出すことができない」という特長があることも覚えておきましょう。
樹木葬費用の追加料金
樹木葬にかかる費用は、基本的にはここまで紹介してきたとおりです。
しかし樹木葬には、基本的な料金を支払って受けられるサービスに加えて、追加料金を支払って受けられるオプションサービスも存在します。
霊園や業者ごとに多くのサービスがありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
料金は千差万別なので、契約前に確認をしましょう。
法要料
僧侶を呼んで読経をしてもらうサービスです。
霊園全体で行う合同法要のほか、命日など任意の日に法要を行う個別法要があります。
合同法要は初期費用に含まれていることがありますが、個別法要は別途僧侶にお渡しするお布施などが必要になります。
樹木葬の費用・料金に関するまとめ
樹木葬では永代使用料・埋葬料・運営管理料などが必要になります。
樹木葬の全国平均コストは68万円くらいですが、樹木葬の種類によってもさまざまです。どのような樹木葬がいいのか、希望と予算を照らし合わせて選びましょう。また、オプションサービスについては各霊園または業者によって内容や料金が異なるので、事前に確認をしてください。
墓地霊園のタイプや区画でも費用が変わる?
樹木葬には大きく分けて、3つのタイプがあります。ただし、霊園タイプは場所や区画によってさまざまな特長があり、その形態は簡単に分けられない場合もあります。
樹木葬を選ぶ際には、一度は現地見学に行くことをおすすめします。
樹木葬では、お墓の場所や埋葬されたご遺骨の場所を示す「墓標」について霊園によっても取り扱いが変わってくることもあります。
「墓標」が明確にわかる場合もあれば、自然に還る散骨のように明確にはわからなくなるケースもあるので、新規購入の方も改葬の方もしっかりと確認をすることが必要です。
1、庭園タイプ
庭園やガーデニング風の雰囲気を大切にしたタイプです。寺院の境内にある墓地などにもみられ、限られたスペースを活用した都市型の樹木葬といわれています。樹木や花木をシンボルとすることも多いです。庭園タイプの樹木葬はガーデニング霊園・ガーデン墓地とも呼ばれます。樹木や四季の草花に囲まれ、きちんと手入れされた庭園のような雰囲気が特長です。都心にあり比較的小じんまりとしていることが多く、お参りをする際の便のよいことがメリットですが、郊外の墓地に比べ価格が高めになるデメリットもあります。また都市部の一画にあるため、景観がすこぶるよいというケースは少ないです。
2、公園タイプ
公園のような、整った自然を楽しめるタイプです。園内の一角を樹木葬のスペースとして環境整備していることが多いでしょう。墓域に樹木を1〜数本植えるスタイルが多いですが、ひと区画ごとに樹木を植える場合もあります。公園タイプの樹木葬は、郊外にあるため広く、庭園タイプ(ガーデニング型)よりも比較的値段が安めというメリットがあります。景観がよく明るい雰囲気で、散策していても気持ちが良いということも挙げられます。次に紹介する里山タイプとは違いきちんと整備されており、休憩所や洗面所が備えられていることも安心感がありメリットの一つといえます。
3、里山タイプ
自然あふれる山林の中で、ありのままの自然に還そうというタイプです。もっとも自然葬らしいスタイルで、墓域ごとに1本ずつ樹木を植えることが多いです。里山タイプの樹木葬は、自然の景観を活かすことがコンセプトのため、整地は最小限です。里山という言葉の通り生命力あふれる樹林の中に植樹し、根元に遺骨を埋葬し、土へと還します。一見して霊園と分からないことも多いです。里山なので広い土地が必要で、郊外から離れた遠方に霊園があることが多く、少々不便なのが難点ですが、樹林をそのまま活かしていますので、景観がよく自然に優しいことが特長です。
どんな霊園を選ぶと安くなる?
霊園のタイプ、遺骨の埋葬方法以外にも、霊園の管理母体によって費用は変わります。
管理母体には、主に公営霊園、民営霊園、寺院墓地の3つがあります。
1、公営霊園
市区町村など、自治体が管理・運営する霊園です。公営霊園の樹木葬は多くはありませんが、公園型が主流になっています。
費用相場は比較的安くなっていますが、抽選の倍率が高いというデメリットや、生前の予約ができない、利用条件があるなど、利用するためには狭き門をくぐる必要があります。

2、民営霊園
財団法人といった公益法人や宗教法人が運営を行う霊園です。民営運営の樹木葬は数多く、利用条件などもほとんどないため多くの方が利用しやすくなっています。
ただし、霊園の立地や埋葬の形態もさまざまな民営霊園は費用相場も幅広くなるため、事前にしっかりと調べ比較検討して選ぶことが大切です。それでも、一般墓と比べると費用は安く抑えられることが多いでしょう。

3、寺院墓地
寺院によって管理・運営される墓地です。近年の樹木葬需要の高まりに伴って、一般墓だけでなく樹木葬も行える寺院が多くなってきました。
歴史ある寺院が供養を執り行ってくれるなど安心して任せられる一方で、その寺院の檀家になるといった条件がついていることもあります。入壇料・お布施代が別途必要となる場合もあるので、しっかりと確認をしておきましょう。

樹木葬のメリット
樹木葬には大きく分けて4つのメリットがあります。
一般墓に比べて費用が安く済む
本来お墓に必要な墓石は、高額なものでは数100万という費用がかかります。しかし樹木葬では墓石が必要ないため、費用を安く抑えられる場合もあります。埋葬の方法によって費用は変わりますが、高めの方法を選んでも一般墓より安い費用に抑えられるでしょう。
自然に還ることができる
墓石を使わず、シンボルとなる木の下に埋葬をする樹木葬。そのメリットであり大きな特長となるのが、「自然に還る」という点です。また、「散骨」などほかの自然葬と比べてお墓参りが可能だということもメリットのひとつでしょう。
承継者がいなくても安心
核家族化が進む現代において、承継者がいないという夫婦や独身の方も増えています。墓石を作ることがない樹木葬は、お墓を引き継ぐ必要がないので安心です。また、樹木葬の多くは永代供養墓であるため、お墓の供養や管理などは、寺院や管理事務所が代行して執り行ってくれます。最近では承継者不足の問題から、埋葬されている遺骨を永代で管理してもらえる永代供養墓、樹木葬、納骨壇などの別のお墓に移動させる「改葬」を行う方も増えています。
宗教・宗旨・宗派を問わない
樹木葬はほとんどの場合、宗教・宗旨・宗派を問わずに埋葬を行えます。寺であっても同様です。ただし樹木葬によっては、法要は寺の宗派で行うなどの指定がある場合もありますので、事前に確認をしましょう。ただし、周忌の法要や法事などを執り行うことは多いです。
樹木葬のデメリット
樹木葬には大きく分けて4つのデメリットがあります。
遺骨を取り出せない場合がある
樹木葬の埋葬方法は、個別型と合祀型の2つに分けられます。合祀をした場合は、遺骨を取り出すことができないので注意をしましょう。
故人に対する個別のお参りが難しくなる場合がある
樹木葬は、納骨の際に散骨することもあるため、埋葬された遺骨がある場所を示す「墓標」が不明になる場合があります。その場合はお墓参りの際に故人に対する個別のお参りが難しくなってしまいます。後日、別の霊園や区画に改葬しようとしても、遺骨を取り出せない場合があります。また、樹木葬自体が新しい概念のお墓のため、周囲からの理解を得ることが難しいこともあるといわれています。
交通アクセスが悪い場所が多い
樹木葬は「庭園タイプ」「公園タイプ」「里山タイプ」の3タイプがあります。中でも「里山タイプ」の墓地はその自然の豊かさゆえに郊外にあることが多く、駅から遠い、山奥にあるなど交通アクセスが悪いこともあります。
自然だからこそ荒れてしまうことも
花や木々は自然のものであるため、残念ながら植物が枯れてしまう場合があります。また、自然の多い場所では、お墓自体はきれいに保たれていても、周辺までは管理が行き届かないこともあります。事前に現地に行って雰囲気や管理状況を確認することが大切です。


ペットと入れる樹木葬もあります
いつも一緒の時を過ごしてきた、家族の一員である大切なペット。最近では人間だけでなく、ペットのための樹木葬も登場しています。ペットの樹木葬には、家族の一員として人間と一緒に埋葬するタイプのものと、ペットのみを埋葬するタイプのものがあります。
ペットと一緒に眠れる樹木葬
ペットの埋葬は、法律によって規制されていませんが、仏教による宗教上の理由で人間と一緒の埋葬を避ける墓地・霊園が多くみられました。しかし樹木葬は、宗教にとらわれない供養方法であるため、ペットと一緒に眠れることがあります。ペットと一緒に埋葬ができる樹木葬のタイプは個別タイプがほとんどで、合祀タイプはほとんどありません。ペット一緒に入れる樹木葬にかかる費用相場は、人間を埋葬する樹木葬とあまり変わりはありません。
ペットのみを埋葬する樹木葬
ペットのお墓としては、墓石を建てるお墓や納骨堂のイメージがありますが、最近では樹木葬も増えています。ペットのみを埋葬する樹木葬の料金は、5万円前後が相場となっています。
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よく調べて、樹木葬を具体的にイメージしましょう
年々、人気が高まっている樹木葬。本人だけではなく、残される家族にとってもお墓は大事な場所です。比較的新しいスタイルの樹木葬をお求めになる方は、ご家族など周囲の方々にしっかりと理解をしてもらう必要があります。
ご利用の人数、立地などでも樹木葬のスタイルは大きく変わります。そのため、まずどのような樹木葬を選びたいのかを決めましょう。そして、ぜひ実際に現地に行ってその雰囲気や詳細を確認することをおすすめします。ご家族にも納得してもらった上で、安心のお墓選びをしたいものですね。また、位牌や戒名、仏具、供花、仏壇、葬式、散骨などの仏事ごとについてのご相談も、是非お気軽にお問い合わせください。

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