墓じまいとは、先祖のお墓を片付け、お墓を建てていた土地をお寺や霊園の管理者に返却することを言います。お墓を継ぐ人がいない、故郷から離れて暮らしていてお参りがなかなかできないといった諸々の理由により行うことが多いようです。
この記事では、墓じまいをする時の流れや、改葬許可申請などの準備、費用相場、親戚同士のいざこざなど墓じまいに関連するトラブルなどについても詳しく解説します。
墓じまいとは
墓じまいとは、すでにある代々承継されてきているお墓を撤去してしまうことです。これまでお墓とは代々継いでいくことが当たり前でしたが、昨今、お墓を承継するということが難しくなってきている現状があります。何故、お墓を継いでいくことが難しくなってきているのか。その理由を見ていきましょう。
墓じまいはなぜ多くなってきているのか
1.無縁墓のケース
何故、墓じまいが増えてきているのか。その大きな理由の一つに、無縁墓が増えてきているということがあります。無縁墓とは、お墓を継いでくれる人がいないままに、手入れも法要もされずにそのままの状態になっているお墓のことです。お墓参りもされないので、墓石は掃除もされず、石材も古びた状態になっています。墓所も掃除などがされていないため、雑草などが伸び放題で霊園の景観を悪くしていることも多々あります。
お墓を継いでくれるお子さんがいないのか、あるいは、お子さんがいたとしても、お墓があることを知らずにそのまま放置しているのか、理由はさまざまです。お墓にある一定期間、管理をしてくれる人に対して管理費を納付してほしい旨を記載した看板が設置されますが、それでも承継者が名乗りでない場合には、お墓は撤去されることになってしまいます。
2.独自に墓じまいをするケース
お墓の管理をする方がいるケースもあります。しかし、何らかの都合によりお墓を継げない理由がある。そんな場合に、墓じまいをすることがあります。
このケースの場合、多い理由が、現在の住まいが、お墓のあるところを遠く離れているため、墓参りもままならないというという事情がある場合です。そのため現在あるお墓を解体、撤去し、承継する者が、自らが住む場所の近くにお墓を移すということになります。これはお墓のお引越し=改葬と呼ばれているものです。
この場合、墓石の中に埋葬されていた遺骨と取り出して、その遺骨を受け入れ先のお墓に移すことになります。
墓じまいはどのように行われるの?
すでにある菩提寺のお寺の代々墓から、遺骨を取り出し、墓石の石材を解体、撤去し、更地の状態にしなければならないということが、墓じまいの作業の基本となります。
工事は主に石材店にお願いすることが多いです。
工事をする前に、魂が入った墓石から魂の抜くというプロセス、魂抜き=閉眼供養という儀式を、お坊さんをおよびして行うことになります。僧侶にその場で読経をしてもらい、故人の魂を墓石から抜いてもらうことになります。その後、解体作業に取り掛かることになります。
解体された石材は持ち運ばれ、何もなくなった土地をきれいにならし、現状復帰することになります。

墓じまいの前に考えるべきこと
墓じまいには必ず、改葬が伴います。
お墓を片づけるからと言って、お墓の中の遺骨まで処分してしまうわけにはいかないので、遺骨をどのような形で供養するかを決める必要があります。
もし「承継者がいなくなる」という理由で墓じまいをするのであれば、維持費や管理費がかからない方法を考える必要があります。
そういった意味でも墓じまいは、内容や費用・流れをしっかりと理解した上で進めていく必要があります。
墓じまいの流れ・手順・方法
ここでは、墓じまいの一般的な流れをご紹介します。
親族で話し合いをする
墓じまいをするときには、必ず親族と話し合いを行ってください。
お墓を継いでいるのが自分だとしても、お墓は家族を象徴する意味もあります。
煩わしいと思わずに、1人ひとりの墓じまいに対する意見に耳を傾けるようにしてください。
墓じまいの旨を伝える
親族の間で墓じまいをすることの合意が取れたら、お寺あるいは霊園に墓じまいの旨を伝えましょう。スムーズに事を進めるためにも、あらかじめ電話などで相談しておくことをおすすめします。
改葬許可申請をする
遺骨をほかの場所に移すときには、改葬許可証が必要になります。必要な書類をそろえて、市町村に改葬許可申請を行いましょう。
なお、墓じまいをした後に自宅供養あるいは散骨をするのであれば、改葬許可証は必要ありません。しかし、お寺や霊園によっては改葬許可証がないとお骨を出してくれない場合があります。このあたりの解釈はそれぞれ異なるので、しっかり確認しておくようにしてください。
石材店を決める
次に、墓石の撤去作業をお願いする石材店を選びます。お寺側・霊園側が石材店を指定していないのであれば、複数の石材店で見積もりを取るといいでしょう。なお、一般的な墓じまいの予算はおよそ30万円です。
遺骨のメンテナンスをする
長い間お墓の中に安置されていた遺骨は、溶解していたりカビが生えていたりすることがあります。骨壺内の水抜きをするなどして、遺骨をできるだけきれいにしてあげてください。なお、戦後間もない時期に埋葬された遺骨は未火葬の場合があります。その場合は、再火葬申請をしてから火葬を行うようにしてください。
墓石を撤去する
墓石を撤去し、お墓があった場所を更地にします。
お墓を建てた土地の永代使用権を返納することで、墓じまいは終了です。
墓じまいの行政手続き
墓じまいをした後に遺骨をほかの場所で供養するときには、改葬許可申請の手続きをしなければいけません。このときに必要となる書類は「埋葬(納骨)証明書」「受入証明書(永代供養許可証)」「改葬許可申請書」の3点です。
埋葬(納骨)証明書
埋葬(納骨)証明書は、現在のお墓の管理者に交付してもらいましょう。なお、公営霊園の場合は各市町村が窓口となっている場合もあります。
受入証明書(永代供養許可証)
受入申請書(永代供養許可証)は、新たな納骨先のお寺・霊園の管理者に交付してもらいます。散骨や手元供養を行う場合は、どのような手続きを踏めばいいかを事前に市町村に問い合わせておきましょう。
改葬許可申請書
埋葬(納骨)証明書と受入証明書(永代供養許可証)が用意できたら、改葬許可申請書を記入して3点セットで提出しましょう。改葬許可証は、遺骨を取り出すために必要になります。なお改葬許可証が発行されるまでには時間がかかることがあるので、余裕をもって手続きを行うようにしてください。
墓じまいの撤去費用
墓じまいには、今ある墓所を現状復帰するほか、移転先の墓地の費用などもかかってきます。
現在の墓所の撤去費用
墓じまいの現状復帰のためにかかる費用は、10~12万円/㎡が一般的であるといわれています。
改葬を行う場合の費用
先祖の故人の遺骨を、霊園などに改葬する際(魂入れ、開眼供養の儀式を執り行う)の費用相場は、現在の墓所の撤去費用のほか、改葬先の墓所を確保する費用も加算されます。
合わせて200~300万円くらいだといわれています。
改葬を行う場合の注意点
元あった墓所の墓石を、遺骨を取り出した後、移転先の霊園の墓所で使用したいと思うかたがいるかもしれません。
しかし、古くなった墓石を倒壊させずに移動させることは難しいですし、移転先の霊園の墓所の大きさや墓石建立のガイドラインに沿わない可能性もあります。
墓石を移動させたい場合には、移転元と移転先の石材店や霊園などの確認をする必要があります。
改葬をする方へのご祝儀について
永代供養墓へ移すなど、新しいお墓がまだ建っていない場合は、お祝いできるような状態ではないため、香典を入れる際に使う不祝儀袋に「お供え」「御仏前」と書き5.000円~1万円ほどを包んで差し出します。
散骨など
先祖の遺骨を納める方法として、永代供養墓や合祀墓への埋葬や改葬以外の埋葬方法で、散骨という方法もあります。
海などに粉骨した遺骨を撒くことになりますが、専門の業者さんなどに相談してみることをおすすめします。
墓じまいで追加でかかることのある料金
墓じまいには、追加費用が発生することがあります。まず、お墓が山奥にあるなどで重機の使用が難しい場合は、お墓を更地に戻すときに相場より高い工事費を請求されることがあります。
また、それまでの墓地で使っていた墓石を運んで新しいお墓の墓石にしたい場合、その墓石の運搬費用と設置費用がかかります。
少しレアなケースですが、遺骨が完全に火葬されておらず肉片などが付着している場合は再火葬をしなければならなくなります。戦後の混乱期に他界された遺体の場合、火葬場の火力が低かったことや、死亡者が多いため急いで火葬しなければならなかったなどの事情があるため、完全な骨になっていないケースが見られるようです。
再火葬を行う場合は、役所に再火葬する旨を申請して許可書を取得し、火葬場の手配をしてから火葬する必要があります。火葬の代金と、火葬時に僧侶を呼んだ場合はお布施が追加費用として発生します。
墓じまいのトラブル
きちんとした話し合いをせずに勝手に墓じまいをしてしまうと、大きなトラブルに発展してしまうことがあります。
お墓を継いでいない親族でもお墓には思い入れがあるものなので、全員が納得できるまで事前に話し合うようにしてください。
また、墓石の撤去をするときに石材店から法外な費用を要求されることもあるようです。
お寺側が石材店を指定しているときはほかの石材店を選ぶことができないので、しっかりと対処する必要があります。
穏便に済ませられるのが理想ですが、どうにもならないときには専門業者に相談するようにしてください。
墓じまいとお寺のお布施、離檀料
お寺の墓地の墓じまいをするときには、これまでの感謝の思いを込めて「離檀料」をお渡しするのがマナーです。
離檀料の相場は、3万円~20万円だといわれており、これは法事1回あたりのお布施とほぼ同等の額となっています。
ただし、稀ではありますがお寺側から高額な離檀料を請求されることがあります。
なかには、数百万円、あるいは数千万円を請求されたケースもあるようです。
運悪くこのようなトラブルが起こってしまった場合には、弁護士など専門家に相談するようにしてください。