家は一生ものと言いますが、お墓は子々孫々末代に至るまで引き継いでいく一家の拠り所でもあります。また、近年では価値観やライフスタイルの変化により、さまざまなタイプの「お墓」や霊園・墓地も出てきています。
お墓の購入は、一生に一度あるかないか。知識がないのは当たり前です。
分からないことはあいまいにせず、疑問とこだわりをもってお墓選びをしてください。後悔しないよう、お墓を決める前に知識を付けておくことが重要です。
仏壇や位牌などは、お墓と同様に故人の魂が入っているとされていますが、お墓との違いは、遺骨が納められているかどうか、ご本尊様を祀っているかどうかという点にあります。
故人の戒名・法号と死亡年月日を記してお祀りするのが位牌です(浄土真宗では位牌は用いません)。そして、仏教各宗派の本尊仏とともに、位牌や法名軸などをお祀りするのが仏壇です。また、仏具なども仏前に供えます。
わざわざ足を運んでお参りするお墓は、故人を身近に感じる仏壇とは異なる存在であります。しかし、故人と向き合い、故人の思い出を巡らせるための貴重な時間を生み出してくれる一種のシンボルとして、私たちの生活の一部となっていることに相違はありません。
ここでは、納得のいく霊園・墓地探し、後悔しないお墓・墓石・石材店選びのためのトピックをわかりやすく解説しています。
お墓選び、その前に
霊園・墓地を探すにあたって、押さえておきたい要点や、霊園・墓地の形態、購入の手順などについて参考になる記事を紹介します。
お墓の種類
お墓の形や大きさに決まりはありません。予算が許せば自由に形を決めることができます。しかし、霊園や墓地には決められた区画があり、その霊園や墓地ごとに墓石施工に関するガイドラインが存在しています。ただし、墓石の形態は大まかに分別することができます。
和型墓石
江戸時代に一般化した伝統的な墓石です。これは台石の上に、竿石と呼ばれる塔状の石を建てたものです。竿石とは、お墓の一番縦に長い部分の石です。ここに家名などの文字を刻みます。お墓というとこの和型墓石をイメージする方が多いのではないでしょうか。
洋型墓石
洋型とはいっても日本で造り出された墓石ですから、和洋折衷型と考えることができます。厚めの台石の上に、低く幅の広い石を載せた形が一般的です。最近はこの洋型墓石のタイプが増えてきています。洋型には「オルガン」型という形態もあります。これは正面から見ると横長の長方形の形をしており、棹石が斜めに角度がついているためオルガンの形に似ていることから「オルガン」型と呼ばれています。
デザイン墓石
一般的な形式にとらわれない個性的なデザインの墓石を求める方も増えてきました。この背景には家を基軸としていた墓地の在り方が、故人を主体としたものへと変化してきている事情があると考えられます。自由な形式を認める霊園などでは、故人の職業や趣味、宇宙観などを表した意匠的な墓石を見ることもできます。
現在では、上記3タイプが主流となりますが、「五輪塔」「宝篋印塔」「宝塔・多宝塔」「無縫塔」などの種類もあります。また、「神道」の墓石の形態は異なるものになります。
お墓の構造と各部分の名称
お墓の構造に決まりはありませんが、一般的な構造における各部分の名称を紹介します。
墓誌
墓誌は、そのお墓に埋葬されている先祖の戒名生年月日・没年月日など「銘」を刻むものです。功績などを刻むこともあります。
納骨室(カロート)
芝台の地下に納骨室を作ったもの(陸カロート)や、地上に納骨室を作ったもの(丘カロート)があります。納骨室は、石やコンクリートで作られています。納骨室の形式は地域によって異なります。
水鉢
先祖に水を供えるための鉢のことで、墓石の手前に作られることが多いです。
香炉
線香を立ててお供えする「立ち置き型」と、寝かせてお供えする「くりぬき型」があります。
卒塔婆立て
卒塔婆を立てておくためのものです。
卒塔婆は略して別名「塔婆(とうば)」ともいい、仏塔のことを意味しますが、一般的には『追善供養のために経文や題目などを書き、お墓の後ろに立てる塔の形をした縦長の木片のこと』をいいます。宗派によっては使用しない場合もあります。
卒塔婆立ては、石製や金属製のものまでさまざまな種類がありますが、機能に変わりはありません。
花立
墓石に備え付けられている、供養をする時に花を立てるものが花立です。
蓮華台
蓮華とは蓮の花のことで、通常は竿石の根本に設置される場合が多いです。
墓地、霊園の種類
墓地、霊園は大きく3つのタイプにわかれています。
公営霊園
都道府県、市町村などの地方自治体が管理・運営している墓地です。申し込みや問い合わせは、各都道府県や市区町村の役所になります。
公営霊園は、墓地にとって最も重要な永続性が保証されており、かつ、永代使用料や管理費が安く抑えられています。また、自治体が管理をしているので、宗旨宗派による申し込みの制限など宗教的な制約は一切ありません。ただし契約に関してはいろいろと条件がつきます。現住所がその自治体にある、お墓の承継者がいる、遺骨がある、などです。
募集に関しても、随時行っているわけではありませんし、募集があっても希望者が多い場合は抽選制で、購入が困難な場合もあります。
また、大規模開発の霊園が多いため、立地の面で不便なところも少なくありません。申し込みにあたっては十分な検討が必要です。
民営霊園
財団法人や社団法人、宗教法人が事業主体であり、民間企業が運営の委託を受けているケースもある霊園です。宗旨宗派を問わず申し込むことができます。
公営霊園に比べると永代使用料や管理費などは多少割高ですが、遺骨の有無などで申し込みに制限がかけられることはほとんどありません。
霊園によってはお墓のデザインや大きさなどを自由に選べる場合もありますが、石材店は指定されている場合が多いようです。
寺院墓地
寺院墓地は、大抵、寺院の境内地にあり、その寺院が管理している墓地のことをいいます。
寺院墓地のお墓を求めるということは、そのお寺の檀家になることが前提となっている場合がほとんどなので、必ずその寺院の住職にお寺の行事やお付き合いの仕方などについて確認しておいた方がよいでしょう。同時に、住職の人柄についても、長く信頼してお付き合いできるかどうか考慮に入れる必要があります。
メリットとしては、手厚く供養していただけるという点です。お墓が境内にあるので法要を本堂で営むことができ、依頼をすれば僧侶が読経して供養してくれます。お寺の中にあるので、管理面でも安心です。
新たな埋葬方法のお墓
昨今では、石材を使った従来型のお墓だけではなく、新たな埋葬方法のお墓も注目を集めています。
永代供養墓
永代供養墓は寺院や霊園が承継者に代わって供養や管理をしてくれるお墓のことで、承継者がいない方や、家族に面倒をかけたくないという理由から、近年需要が高まってきています。
永代供養墓には、永代使用料が個別のお墓よりも比較的安いなど、さまざまなメリットがあります。ただ、永代供養墓と言っても、遺骨を合祀・合葬するものから個別に保管するもの、また納骨する場所が地下だったり地上だったりと、さまざまなタイプがあります。
納骨堂
納骨堂とは、骨壷に入った遺骨をそのまま納めておく建物のことです。納骨堂は、公営霊園や寺院の中に設置されていることが多いです。最近では、駅から近い場所に納骨堂が設けられることも多く、また、機械式の自動搬送式納骨堂などにも人気が集まっています。
納骨堂は一般的なお墓と違って、墓石が不要です。そのためコストを抑えることができるというメリットがあります。
近年では、お墓を相続する家族のいない方が、納骨堂のあるお寺や寺院に永代供養を頼むことも多くなっています。
樹木葬
”自然に還る”というコンセプトのもと、墓石の代わりに樹木を墓標とするのが樹木葬です。散骨などと並ぶ自然葬の一種で、近年希望者が増えている埋葬のスタイルです。
メリットとして挙げられることのひとつに、一般墓に比べて費用を安く抑えられる点があります。その理由として、墓石を使わず広いスペースを必要としないという樹木葬の特長が大きく関わっています。最近では、既にあるお墓に納骨されている遺骨の一部を墓じまいして散骨、一部をお引越し、つまり改葬先として樹木葬を購入するケースなどもでてきています。
また、生前にお墓を探す方にとって樹木葬は、自然に還るため後継ぎが不要なことや、石材をあまり使わないためリーズナブルなことなどが魅力的に見え注目が集まっています。
霊園・墓地選びの流れ
お墓は一生に一度の大きな買い物です。気に入らなかったから買い替えるというわけにはいきません。それだけ慎重に選ばなければならないのです。お墓を選ぶ際、どのような点に注意すればよいのか、後々、後悔しないですむお墓選びをしていきましょう。
資料請求で複数の墓地の情報を手に入れる
資料請求で気になる霊園の情報を手に入れましょう。
お墓の種類だけでなく、民間霊園、寺院墓地、公営霊園など運営母体などもチェックできます。
霊園の見学予約
気になる霊園が決まったら、現地で見学をしましょう。
資料だけでは確認できないポイントや、交通アクセスなども確認しましょう。
家族が来やすい立地を選ぶことがポイントです。
墓石・石材店の選び方
霊園・墓地の場所が決まったら、墓石選び。あらかじめ墓石のことを知って、イメージや要望をある程度明確にしておけばその後の流れがスムーズになります。
石材の種類には何があるの?どんな形のお墓を建てたらいいの?といった、墓石の種類・形・デザイン、工事・施工の流れや加工・彫刻について参考になる記事を紹介します。
墓石・石材店選びのチェックポイント
- 石のサンプルを手にとってチェック(石の色合いや艶)
- 実際に建っている3年以上経ったお墓からも、石をチェック(建立年月日から判別できます)
- 石の種類、使用量、加工、施工などによって、費用が変動
- チラシやインターネットでの表示価格だけで判断しない(前面に出しているものは標準的なもの多し)
- 偏見は捨てる(国産=いい石、中国産=粗悪ということはありません)
- 個性や想いの部分も大切に
墓石・石材店選びの注意点
しかし、同じようにみえても御影石にも実にたくさんの種類があり、品質や価格の差も千差万別。チラシ広告などでは、概して安い石種や標準的なものを前面に出していることが多くなります。
「石材を違うものにしたら、価格が2倍になった!」
「ちょっと石種を変えただけで値段が80万も上がった、なぜ!?」
ダイヤモンドの希少価値が分からない人はいませんが、墓石材に関しての価値や知識をもっている人は稀です。霊園や墓石店さんのチラシやインターネット表示価格だけで、墓石を判断しないようにしましょう。