墓じまいとは、現在あるお墓を撤去し、墓所を更地にして使用権をお寺や霊園の管理者へ返却することです。実際には、その後、別のお墓にご遺骨を埋葬・供養するまでの一連の流れを墓じまいと考えることが多いです。お墓を継ぐ人がいない、故郷から離れて暮らしていてお墓参りがなかなかできない、といった事情などにより、墓じまいが行われることが多いようです。
無縁墓になってしまうと最終的にお墓は撤去され、ご遺骨は合祀墓に納められることになります。そのため、家族を大切に思う人ほど、しっかりと墓じまいについて考えることが必要です。
この記事では、墓じまいを行う際の流れや、親戚同士のいざこざなど墓じまいに関連するトラブルとその解決法などについて解説します。
墓じまいの手順と流れ
墓じまいでは、今あるお墓の管理者の同意が必要になります。改葬先が決まっている場合は、改葬先の管理者との間で情報を共有しておかなければなりません。それも含めて、墓じまい・改葬の一般的な流れを簡単に説明します。
- STEP1改葬元に墓じまいの意思を伝える
- STEP2「受入証明書」を発行してもらう
- STEP3改葬先(または合祀墓など)への埋葬申請を行う
- STEP4閉眼供養(お魂抜き)を行う
- STEP5墓石を撤去する
- STEP1改葬元に改葬の意思を伝える
- STEP2改葬先の墓地を確保する
- STEP3「改葬許可申請書」「埋蔵証明書」を用意する
- STEP4改葬許可の申請を行い、改葬許可証を取得する
- STEP5閉眼供養(お魂抜き)を行う
- STEP6改葬先に納骨する
- STEP7開眼供養(魂入れ)を行う
墓じまいのトラブル事例と解決策
墓じまいや改葬では、さまざまな関係者の事情や気持ちからささいなことがトラブルの種になりかねません。起こりがちなトラブルを紹介しますので、事前に回避できるよう対策を練っておきましょう。
家族・親族間のトラブル
お墓とは、ご家族はもちろん親族にとっても心のよりどころともいえる存在です。だからこそ改葬は、その継承者の一存だけで決めずに、親族も交えてしっかりと話し合い、同意を得ることが大切です。
もともとあったお墓だけではなく、新しい改葬先を決定する際も同様に、できるだけ多くの親族が納得できる地域を選び、お墓参りなどに支障をきたさないように配慮しましょう。
埋葬したご遺骨を取り出すのは縁起が悪いと考える人がいる場合は、先祖を供養する上で最良の選択であることを理解してもらうほかありません。また、墓じまいは、高額な費用がかかるため、その費用負担を巡ってトラブルになるケースもあります。
家族・親族とのトラブルの解決策
ご家族や親族とのトラブルを避けるために大切なのは、勝手に決めることなく皆が納得がいくまで相談をすることです。例えば合祀タイプのお墓への改葬の場合、お墓参りができないなどの理由で、合祀されることを嫌がる親族がいるかもしれません。そういう場合は、個別埋葬できるタイプのお墓を選ぶことなども検討したいものです。
費用負担に関しては一人で抱えずに、親族間でどのように分担をするのかを決めることが大切です。自治体の補助金制度や費用軽減策なども考慮していきましょう。
急ぐことなく時間に余裕を持って、じっくりと話し合いをしましょう。
墓じまいで補助金が出る理由
墓じまいが増えている大きな理由の一つに、無縁墓の増加があります。無縁墓とは、お墓を継いでくれる人がいないままに、手入れも法要もされずにそのままの状態で放置されているお墓のことです。
管理されず、放置された無縁墓は、最終的にお墓の管理者や自治体が撤去することになります。無縁墓が増えることにより、撤去費用にお金がかかるため、自治体としても、無縁墓が増えることは避けたいと考えています。
無縁墓の撤去費用を抑えるため、自治体は補助金制度を設けて、適切な墓じまいを促しています。
寺院とのトラブル
改葬は、今あるお墓の管理者(寺院、霊園など)に改葬の意思を伝えることから始まります。この際、特に寺院墓地では、「改葬は認めない」「離檀する際に寺院から高額な離檀料請求をされる」「改葬許可申請書に印鑑を押してくれない」「閉眼供養をしてくれない」「未納の管理費をさかのぼって請求された」など、何かとトラブルになることもあるようです。
特に地方では、過疎化が進み檀家が減り続け、お寺の運営自体が立ち行かなくなるという声も多くあります。
寺院とのトラブルの解決策
まずは、住職をはじめ、お世話になった方々に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。そして、改葬の理由を正しく伝え、理解をしてもらうことです。
お寺で墓じまいをする時には、これまでの感謝の思いを込めて「離檀料」をお渡しすることがあり、その場合、離檀料の相場は数万円~数十万円だとされています。しかし稀に、お寺側から高額な離檀料を請求されるトラブルに発展することがあり、なかには数百万円、あるいは数千万円を請求されたケースもあるようです。
なお、未納の管理費を請求された場合、5年より前の未納分の管理費については支払う必要はありません。納得いかないようなことがあれば、弁護士などの第三者を交えて話し合いをすすめることが得策です。改葬先には、基本的に仲介に入ってもらえません。
永代使用料のトラブル
お墓を購入する際、寺院や霊園に永代使用料を支払っていることと思います。この永代使用料は、今後使用しなくなるからといって返金されることは基本的にはありません。お手元に墓地の使用規則などがある人はぜひ確認してください。ほとんどの墓地で「永代使用料の返納はしない」という旨の記述があるはずです。
永代使用料のトラブルの解決策
トラブルを避けるためには、契約前に確認をしておくことが最善です。なお、契約約款の差止め事案や個々の状況によっては返金を命じる判決も出ています。
石材店とのトラブル
墓じまい・改葬を行うときは、墓石の解体・撤去後、更地に戻して管理者に返却をしなければなりません。これらの作業は石材店に依頼しますが、その条件として「改葬元の許可を得ている」「改葬元が許可を出している石材店が工事を行う」が挙げられます。墓地で大がかりな工事をするため、事前に改葬元に連絡をしておく必要があります。
また、公営霊園以外では、提携先の石材店があるのが一般的で(指定石材店制度と言います)、その石材店以外は基本的に工事を行うことができないケースがあります。この制度が導入されているかどうか確認した上で、どの石材店にお願いをするのかを決める必要があります。
また、石材店との間でも、「想定していたよりも高額の費用を請求された」というトラブルもあるようですので、頭に入れておくとよいでしょう。
石材店とのトラブルの解決策
改葬について事前に墓地の管理者に話を通す際に、石材店の指定についても確認しておくのがトラブル回避の第一歩です。改葬先で依頼する石材店と同じなら話はスムーズですが、もし異なる石材店だったとしても、事前の情報共有がなされていれば話が複雑になることはないでしょう。
工事を依頼する石材店の評判を事前にチェックしておくことも大切です。
さらに、石材店からの高額請求に驚いたとならないよう事前に詳細な見積もりをきちんと取ること、高額な費用を請求されたら弁護士など専門知識を持った第三者に委ねること、この2点を押さえておきましょう。
そのほかのトラブル事例
ご遺骨をお墓から取り出す際に、身元不明の骨壺が出てきたという事例もあります。また、骨壺に雨水などがたまり、ご遺骨が水びたしになっていることなどもあるようです。長年にわたり納骨室を確認してこなかったために、こういった初めて直面することなども起こり得ます。
トラブル解決策
古くから継承されてきたお墓の場合、身元不明の骨壺(ご遺骨)が出てくることがあります。その場合は、読経を行ってもらい、納骨室から骨壺を取り出してもらうようにしましょう。ご遺骨が水びたしになっていた場合は、洗骨してもらい埋葬し直すようにすると良いでしょう。
こういった時には、石材店や自治体の方などに相談・協力をしてもらい進めていきましょう。
墓じまい後の改葬先、選び方のポイント
墓じまいをするときには、ご遺骨をどのように供養するかを考えなければいけません。主な方法としては、「一般墓」「永代供養墓」「納骨堂」「樹木葬」を改葬先にする方法があります。また、「散骨」「手元供養」といった方法を選択することもできます。
一般墓
一般墓とは、家族や一族など家単位で継承していく従来型の伝統的なお墓を指します。いわゆる「お墓」と聞いたときに最初にイメージするものが一般墓と言ってよいでしょう。
一般墓は、納骨室(カロート)に納めるご遺骨の数に(基本的には)上限がなく、管理費を支払うことで永続的に使用することができます。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、一般墓の平均購入価格は152.4万円です。小スペースの一般墓(墓石がセットされたタイプなどもあり)の中には、100万円くらいでお求めいただけるお墓もあります。
合祀されず、先祖代々のお墓を引き継いでいく一般墓があることで、先祖代々の供養を自分たちで手厚く行うことができます。墓参りのために親族が集まるきっかけになるなど、ご家族のより所にもなるでしょう。
永代供養墓
永代供養墓とは、お墓を継承する人がいなくなったときでも、管理をするお寺が責任をもって供養を続けてくれるお墓のことです。納骨堂や樹木葬も永代供養墓の一種です。
埋葬方法は、合祀型や個別埋葬型があります。合祀型は永代供養墓の中でもっとも費用が安く、3万円~10万円程度が相場です。一度合祀されるとご遺骨を取り出せないというデメリットはありますが、ほかの永代供養墓に比べて格段に費用を抑えることができます。個別埋葬型は、一定期間ないしは永代にわたり個別に供養されるため合祀墓より価格が上がり、100万円近い価格設定の場合もあります。
納骨堂
納骨堂とは、ご遺骨を納めた骨壺を安置するための建物のことです。管理のしやすさや立地の良さから、近年ではお墓ではなく納骨堂を選ぶ人も増えてきています。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、納骨堂の全国平均購入価格は77.6万円です。
納骨堂はお墓の管理を引き継ぐ必要がなく、多くの場合が永代供養されることになります。一定の年数を経てからご遺骨の場所を移す合祀タイプのほか、継承する方がいる限り使用し続けることができる永代使用タイプもあります。
樹木葬
自然の中にご遺骨を埋葬する供養方法を樹木葬と呼びます。もっとも一般的な樹木葬はシンボルツリーの周りにご遺骨を納める方法ですが、土に埋めて自然に還す方法もあります。「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、樹木葬の全国平均購入価格は66.9万円です。
なお、樹木葬と似た埋葬方法として散骨がありますが、何も知らずに行うと法に触れてしまう可能性があります。散骨をする場合には、専門業者に相談するようにしてください。
散骨
散骨とは、故人のご遺骨を粉末にして山や海などへ撒くことをいいます。永久にご遺骨を手放すため維持費がかかりません。しかし、特定の参拝スペースなどはなくなります。費用は、5万円~30万円程度が目安とされています。最近では、一部のご遺骨を散骨し、残りのご遺骨をお墓に埋葬するという分骨を希望される方もいらっしゃいます。
手元供養
手元供養とは、ご遺骨の全部または一部を小型の骨壷などに納めて自宅で安置する方法になります。専用のアクセサリーなどの中にご遺骨を納めて、身に着ける方法などもあります。維持費がかからないのがメリットですが、供養する者がいなくなった場合のことを考えておく必要があります。費用は供養方法によりさまざまですが、数万円から数十万円を目安とすると良いでしょう。
墓じまいでトラブルを起こさないために、じっくり話し合いましょう
人々のライフスタイルは一昔前とは大きく変化しており、生まれ育った土地で一生を過ごす人は少なくなりました。お墓を継承していくのが難しいと判断したら、墓じまいを考える機会かもしれません。
しかし、お墓をなくすというのは心の拠り所が一つなくなることでもあります。墓じまいをした瞬間に、ご先祖様を亡くしたような気分になることもあります。
まずは、ご家族や親族で話し合ってみてください。問題点や不明点が出てくることもあると思います。そこで、相談したいことやお悩みごとが出てきたら「いいお墓」までお気軽にお問い合わせください。
墓じまい(改葬)を行う業者をご紹介
墓じまい(改葬)は完了するまでの手続きも多く、かかる費用も不透明なところが多いのが実態です。まずは、複数の墓じまい業者から見積もりをとることで費用の全体感を把握しましょう。
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