故人が納骨されているお墓は、常にきれいにしておきたいものです。そのためにはタイミングを見てこまめに墓石掃除をすることが大切です。ここでは、墓石掃除の仕方から、そのタイミングや手順、必要な道具などを紹介していきます。
お墓を管理するということ
終の棲家であるお墓の管理には、公営霊園や民営霊園、寺院などの管理者が管理する部分と、お墓を所有する遺族が管理しなければならない部分があります。
公営霊園や民営霊園、寺院などの管理者が管理しているのは墓地の共用部分です。年間管理費は支払っていますが、管理費は設備や共用部分などの維持管理に充当する費用のことで、年単位、数年単位で支払うのが一般的です。この管理費を支払うからこそ、霊園や寺院の管理者が水汲場や通路の清掃、設備の修繕などを定期的に行ってくれるのです。
自分のお墓は自分で掃除をする
管理料を支払っているのだから、お墓の掃除や管理は、供養と共に永代に渡り公営霊園や民営霊園、寺院墓地が行ってくれるものだと考えがちですが、お墓の敷地内の管理や掃除は、原則として使用者が行うことになっています。自分のお墓は自分で掃除をしなければならないのです。
墓石の掃除には、お墓の外見をきれいにするだけではなく、劣化を食い止め長持ちさせる効果があります。墓石は定期的にキチンとお手入れしていれば、経年劣化を抑え長く使うことができます。
お墓の掃除代行サービス
お墓のある場所から遠く離れた場所に住んでいる、忙しいなどの理由で、あまりお墓参りに行くことができない人も中にはいます。そういう人のために、お墓の掃除を請け負う代行サービスを行ってくれる業者もいます。利用を考える方は、何社か見積りをとって比較検討をしましょう。
掃除のタイミングや服装の選び方
お墓の掃除はどのようなタイミングで行うのか。また、お墓の掃除に適切な服装について紹介していきます。
掃除はお墓参りのタイミングで
お彼岸やお盆に多くの人はお墓参りをします。この時期以外、「法事」や「命日」、帰省した時や「回忌法要」をはじめ、生前の故人のことを思い出した時、故人に何かを相談したい時、結婚など慶弔の報告、あるいは故人の誕生日を偲ぶ時などにお墓参りをすることが多いでしょう。こうしたお墓参りのタイミングで、お墓の掃除を行うことが多くなってきます。
掃除の際の服装
お墓参りのタイミングでお墓の掃除をすることが多いでしょう。お墓参りには、できればきちんとした身支度で出かけたいものですが、お墓の掃除をすると服を汚したり濡らしたりする可能性もあります。
お墓参りは頻繁に行われるものではありませんので、日常風雨にさらされ雨や湿気などの水気が浸透した墓石は、かなり汚れていることがあります。そのため、汚れても構わない服装で出かけることをおすすめします。
墓石掃除の流れ
墓前でご先祖様にお参りする前に墓石掃除をすることにしましょう。この時、ご先祖様に対する奉仕の気持ちを忘れずに墓石掃除をすることが大切です。ここでは、墓石や仏具の掃除の方法をご紹介します。
香炉
香炉に置かれたままの線香の灰や燃えカスなどを取り除きましょう。線香の燃えカスなどが香炉に残っていると、線香が上手く立たなくなってしまいます。
花立(花筒)
花立の枯れた花などを取り除きましょう。花立を水洗いしキレイにすることで、持参した生花を供えられるようにします。取り外しができるタイプの場合は、近くの水道に持って行って洗い流しましょう。
水鉢
水鉢の溜まった雨水やごみを洗い、新たに水を供えられるようにしましょう。取り外しができるタイプの場合は、近くの水道に持って行って洗い流し、取り外しできない場合は、雑巾を使って中のゴミをキレイに拭き取りましょう。
墓石
雨風に耐えてきた御影石などの墓石には、ほこりや泥、水垢などの汚れが付着しています。まず、たっぷりの水をかけて丁寧に洗い流していきます。汚れや水垢が目立つことがあれば、丹念に磨いてください。水垢はスポンジやタワシでは落ちにくい汚れのため、墓石用の洗剤を使って水垢を落とします。
墓石を磨き終えたら、きれいな布で水を拭き取り、拭き掃除をして終了です。また、墓石を光沢ある美しさを保つためにはコーティングを施すという方法もあります。
墓石掃除の大切なポイント
墓石掃除をする際の、大切な掃除のポイントを説明します。
草むしり対策
雑草などの草むしりのためには、小さな鎌を持参すると便利です。玉砂利が敷いてある場合、砂利の間の草の根っこが取りにくいのですが、鎌があれば簡単に除去できます。除草剤などを使用することも考えられます。
植木や樹木の剪定・はさみを用意
敷地内に植木や樹木などの植え込みがある場合、木が大きくならないよう剪定して手入れをする必要があるため、植木バサミを持参するとよいでしょう。道具さえあれば、素人でも簡単な剪定はできます。木は年数が経ち大きくなるにつれ根っこも広がり、石の外柵を圧迫してひび割れや崩れの原因ともなります。
玉砂利の掃除
玉砂利は、見栄えのよさや雑草対策として墓石のまわりに敷かれますが、次第に玉砂利が土に沈んで汚れていきます。この場合、園芸用のシャベルで玉砂利を掘り起こして目の粗いザルに入れ、汚れや苔など黒ずみのこびりつきを洗浄してから敷き直します。
ザルがない場合は、水を入れたバケツに玉砂利を入れてかき混ぜる方法もあります。汚れが落ちにくくなった玉砂利は、いっそ新しいものに取り換えることも選択肢のひとつです。
玉砂利がキレイに設置してあると、非常に美しく高級感を醸し出す墓所になることでしょう。
墓石の洗い方
墓石に付着したホコリを取り除いた後、墓石の石材を水を含んだスポンジややわらかい布で洗います。それでも汚れが取れない場合、タワシを使ってもかまいません。ただし彫刻の部分や、角は欠けやすいので、力を入れすぎないよう優しくこするように磨いてください。スクレーパーやカッターで、無理やり汚れを削ることは、素人がやってしまうととれない傷がつく可能性がありますので避けましょう。
水垢やシミがついていて、磨いても取れない場合は、仏壇店などで販売されているシミ抜き用の洗剤を使えば、大体の水垢は見違えるように落とせることができます。普通の家庭用洗剤や塩素系洗剤は墓石を変色させたり、かえって墓石を傷めることになるのでタブーです。
墓石の文字の掃除
墓石の文字が彫ってあるところの掃除は歯ブラシを利用すると便利です。磨き終えたら水で拭き取り、掃除を仕上げます。
用意しておきたい墓石掃除の道具
墓石掃除をする際の、用意しておきたい道具の紹介をします。ホームセンターや100均など市販の店で揃えることもできます。
雑巾・手ぬぐい・タオル
柔らかい布製がよいでしょう。汚れを拭き取る、落とす際に使用します。水分を拭く、乾拭きして乾かすなど用途に分けて複数枚用意しておくとよいでしょう。
スポンジ
スポンジにはたっぷりと水分を含め、ゴワゴワした面ではなく柔らかい表面を使用します。メラミンスポンジなどを使用します。
刷毛
柔らかい刷毛は墓石の文字や彫刻の汚れなどをこそぎ落とすのに便利です。
たわし
頑固な水垢やシミ、しつこいよごれを取る際には、たわしを利用します。墓石は硬い石材ですが、金属性のたわしや、研磨成分を含んだ薬剤を使用する場合は、墓石を傷つけないよう気を付けましょう。特に墓石の光沢を保つためにコーティングを施している場合は、たわしで擦るとコーディングが剥がれてしまう恐れがあります。細かい溝の汚れには、毛が入り込んで掃除ができる、墓石掃除専用のたわしもあります。
歯ブラシ・ブラシ
タワシではうまく落とせない節目や彫刻面、名前や戒名などは、歯ブラシがあると便利です。歯ブラシは、細かい凹凸面などに使用します。彫刻面はタワシよりもブラシでやさしく擦るように仕上げます。
墓石用洗剤
家庭用洗剤や塩素系洗剤、酸性洗剤ではなく、墓石専用の洗剤を使い、洗い流しましょう。
ゴム手袋・軍手・虫よけスプレー
手の保護のために使用します。また、墓地の周辺は草木や樹木が生い茂る場所が多いため、蚊などの対策用に虫よけスプレーがあるといいでしょう。特にお参りの多いお盆の時期は、雨が降ることも多いため、虫よけ対策は考えておく必要があります。
スコップ・シャベル
墓所を掘ったり、砂利を移動させたりする際に使用します。
袋
ごみなどを入れて持ち帰れる袋なども用意しておきたいものです。
貸してくれる墓石掃除の道具
墓石掃除をする際の、霊園や寺院で貸してくれる可能性が高い道具を紹介します。
ホウキ、チリトリ
敷地内の溝や節目に溜まった砂や掃くことや、落ち葉やごみを楽に取り除けるため、ぜひお借りしましょう。
手桶、柄杓
水を運ぶ際、お参りの際に使用します。
バケツ
墓石掃除をするための水を運ぶ際などに使用します。
お墓参りの作法
お墓周辺の掃除と墓石掃除を終えたらお墓参りを行います。
生花
花立に水を入れ、生花を飾ります。
供物
お菓子や果物、故人が好きだったものをお供えします。供物の食べ物は、お参り後に持ち帰ることがマナーとなっています。そのままにしておくと、腐ったり動物に荒らされたりする可能性があるためです。
肉や魚などは殺生につながるため、お供え物としては不適切と考えられています。また、故人が好きだったお酒やタバコをお供えするのは、マナーを守りさえすれば問題ありません。ただし、お参り後はきちんと持ち帰るようにしましょう。
線香
線香に火を点け、線香を香炉に手向けます。線香は束のまま火をつけてから、人数分に分けてお供えするのが一般的です。
参拝
故人と縁の深い順番にお参りをします。
お参りの姿勢
墓石よりも体を低くするのが礼儀なので、しゃがんで合掌礼拝します。
数珠を持参
お墓参りをする時は数珠を手に合掌するのが作法です。
お墓参りの後で
お参りが終わったら、最後に食物や酒、ジュースなどの缶類の供物は、カラスなどの鳥や猫などが散らかさないよう放置せず持ち帰るようにしましょう。
卒塔婆について
古い卒塔婆は抜いて、墓地の焼却炉でお焚き上げをしてもらいましょう。
墓石掃除の代行業者(墓参り代行)という選択肢も…
お墓が現在の住まいから遠方にあるなどの理由で、なかなかお墓参りや掃除にいくことができないという方も増えています。そんな方のために、最近では、墓石掃除の代行サービスを行う業者も出てきています。
墓参り代行サービスとは
お墓参りの代行をしてくれる際に、墓石掃除も行ってくれるサービスです。サービス内容は、お墓参りのほか、墓石区画内の掃除、墓石の清掃、花立て・水鉢など付属品の清掃などになります。
お墓参りや清掃を実施している様子を写真や動画に撮って、報告をしてくれるサービスまでがセットになっている業者が多いです。適当な作業をおこなったり、実際に墓参り・墓石掃除をしていないということなどがないよう、こういった細かなサービスが付帯しています。
墓参り代行サービスの料金相場
お墓参りと墓石掃除をセットで、1回あたり1~2万円程度の比較的お手頃な値段が相場となっています。また、年間契約などを継続する場合などは、割引となる場合もあるようです。お墓が遠く、お参りが大変な方は検討してみるとよいかもしれません。