お墓や埋葬について規定された「墓地、埋葬等に関する法律」という法律があるのを知っていますか?
日常的に関わらないため意識することも少ないですが、お墓の継承やご家族が亡くなった際の火葬や埋葬についての手続きなど、大切なことが定められている法律です。
いざそういう場面になったとしても、葬儀会社の方や霊園の方に任せておけば大丈夫と思っている方もいるでしょう。しかし、故人の思いを尊重したら法律違反だった!なんてことにならないよう、1度は目を通しておくといいかもしれません。
この記事では、「墓地、埋葬等に関する法律」の内容と、霊園・墓地の使用規則、建墓契約についてわかりやすく解説します。
墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)
墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)とは
お墓や埋葬は「墓埋法」によって規定されています。墓埋法は正式名称を「墓地、埋葬等に関する法律」といい、昭和23年に制定されたお墓や埋葬について細かく定められた法律です。
そして、この法律の施行細則を定める法令として、厚生労働省令の「墓地、埋葬に関する法律施行規則」があります。ここで、お墓の法律的な定義、お墓に埋葬する場合の手続き、お墓の管理に関する規則や罰則を定めています。
昭和23年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」とは、
- 墓地や埋葬に関する用語
- 埋葬や火葬をする際のルール
- 墓地や納骨堂、火葬場などの経営者や管理者の義務
- 墓地、埋葬等に関する法律を違反した際の罰則
について規定された法律です。人が亡くなった後のことについて定められており、正式名称は「墓地、埋葬等に関する法律」ですが、一般的には「墓埋法」や「埋葬法」とも呼ばれています。
墓地や埋葬に関する用語の設定
墓地や埋葬などに関する用語については、第2条で以下のように定められています。
- 火葬:死体を葬るために、これを焼くこと
- 埋葬:死体を土の中に葬ること
- 改葬:埋葬した死体または、埋蔵や収蔵した焼骨を他のお墓や納骨堂に移すこと
- 墓地:墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事に許可を受けた区域
- 墳墓:死体を埋葬し、または焼骨を埋蔵する施設
- 火葬場:火葬を行うために、火葬場として都道府県知事に許可を受けた施設
- 納骨堂:焼骨を収蔵するために納骨堂として都道府県知事から許可を受けた施設
※埋蔵:焼骨の葬送方法 ※収蔵:納骨堂に収めること
埋葬や火葬、土葬をするときのルール
「墓地、埋葬等に関する法律」には、火葬や埋葬、土葬する際のルールなどが記載されています。多くの人が関わる部分なので、よく確認しておくといいでしょう。
- 埋葬や火葬は例外を除き、死亡後24時間経ってからでないと行えない
- 埋葬や火葬をするには市町村長の許可証が必要となっており、定められた場所でしか行うことができない
- 納骨は、都道府県知事から許可を受けた「墓地」以外でしてはならない
また、土葬など法律上は適法とされているものもありますが、自治体によっては条例で禁止されているものも。「墓地、埋葬等に関する法律」だけでなく、地域の条例も確認するようにしましょう。
墓埋法は制定後50年以上も経つ法律です。そのため、時代の変化に伴い現状と法のずれが生じている部分があります。墓埋法の制定当初、日本では火葬の割合は 約50%に過ぎませんでしたが、現在では9割以上を占めています。
墓埋法によると、遺体または遺骨を納める場所は「墳墓」と「納骨堂」の2つに分類されます。「墳墓」とは亡骸を埋葬、または焼骨を埋蔵する施設であり、一般のお墓のことを指します。「納骨堂」は、墓埋法の中では「他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県の許可を受けた施設」と定められています。
なお、墳墓を設ける区域が「墓地」で、遺骨の埋葬場所については同法の規定により、「墓地として都道府県知事の許可を受けた場所」でないと埋葬することはできません。なお、日本では土葬と火葬以外は法律上認められていません。
墓地・火葬場の経営者や管理者の義務
第10条~19条では、各施設(墓地や火葬場など)を管理・経営する際のルールついて記載されています。こちらでは、利用者である私たちと関わる部分を抜粋しました。
- 火葬場や墓地を経営する場合は、都道府県知事の許可を得なければならない
- 墓地を管理する場合は、埋葬許可証、改葬許可証または火葬許可証を受理してからでないと埋蔵させてはいけない
管理や経営部分に直接関わることは少ないと思いますが、埋葬をする際などに、管理者が許可証の確認をするか確認しておくことは大切かもしれません。
墓地埋葬法を違反したときの罰則
また、民法や刑法にも埋葬に関する規定や罰則があり、特に刑法第24章第190条には死体遺棄の規定がありますが、墓埋法で決められた方法以外の埋葬は この死体遺棄にあたるため注意が必要です。
では、「墓地、埋葬等に関する法律」に違反をした場合、どのような罰則があるのでしょうか。
罰則には、火葬や埋葬をする人に向けたものと、墓地や火葬場などを管理、経営している人に向けたものがあります。罰則内容は、数千円の罰金または数ヶ月の拘留などです。
基本的には葬儀会社や火葬場の方、霊園や墓地の管理者の指示に従っていれば、違反することはないでしょう。しかし、故人の遺志だから…と火葬を火葬場以外で行ったり、埋葬や納骨を墓地以外で行ったりした場合は違反の対象となりますので、注意が必要です。
参考:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号) |厚生労働省
参考:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年7月13日厚生省令第24号) |厚生労働省
墓地、埋葬等に関する法律の施行規則と改正
施行規則とは、法律を施行するためにさらに細かく記載されたものになります。
主に
- 埋葬や火葬の許可を申請する際の手続き
- 改葬や墓じまいの許可を申請する方法
- 墓地や火葬場の管理について
などが記載されています。
特に、無縁墓による改葬ついては問題が多く、少子高齢化や核家族の現代には適していないと批判も多くあり、平成11年に改正が行われました。
将来承継が難しい場合は、墓じまいの手続きをしたり、永代供養付きのお寺や霊園に改葬したりするなど早めの対応ができるよう家族でしっかりと話し合いをしましょう。
墓地、埋葬等に関する法律の改正
また、平成24年にも墓地の経営許可に関する権限について改正が行われました。
これまでは、経営の許可については都道府県が権限を持っていましたが、改正により市長が権限をもつことに。市長が権限を持つことで、より民意を反映した墓地開発が行われることが期待できますが、行政ごとに判断基準が異なることにもなります。
最近では、墓地開発許認可が下りにくい地域でも可能なケースも出てきており、今後の墓地開発にも大きな影響を及ぼすでしょう。
墓地埋葬法には散骨・手元供養の記述がない
経済的な理由や、承継者がいないことからお墓を作らず、ゆかりの場所に「散骨」をしたり、遺灰や遺骨を自宅で「手元供養」をしたいと考える方も多いでしょう。
お墓などに納骨しないことは問題に感じるかもしれませんが、実は、どちらも法律上規定はありません。
散骨については墓埋法には規定がなく、これまでは認められていませんでしたが、現在では葬送のための祭祀として節度を持って行われる限り、遺骨遺棄罪に該当しないとされています。
手元供養については、都道府県の条例などでもとくに制限や問題はないため、自宅で保管することは可能です。しかし、散骨をする場合は、市区町村によって条例で禁止されている場合も。希望する場所がある場合は、該当する地域の条例などを確認しましょう。
また、ペットの霊園については、墓埋法でも廃棄物処理法でも対応できていないなど、法の見直しが求められているのが現状です。
霊園・墓地の使用規則
公営霊園・民営霊園・寺院墓地の形態を問わず、使用する霊園・墓地によってそれぞれ「利用規定」や「使用規則」があり、使用者の資格、使用の目的、墓地使用料・管理料、使用を取り消される場合の規定などが定められています。
規定・規則に当てはまらないと使用を認めてもらえなかったり、違反した際は場合によって墓地の返還を求められたりすることもあります。お墓を購入する前には、その霊園・墓地の規定や規則内容をチェックして、把握しておきましょう。
霊園・墓地の使用規則のチェックポイント
- 寺院の宗旨宗派
- 入壇条件や寺院規則
- 徒歩で行った場合の道路状況(坂道の勾配、車の往来など)
- 住職さんのお人柄やお寺の雰囲気
あわせてチェック:お墓の費用の構成要素
- 「墓石費用」:墓石の本体、外柵・納骨棺(カロート)、施工費の合計
- 「永代使用料」:お墓の土地の使用権料
- 「管理費」:お墓の維持経費
建墓契約
お墓は住宅と同じように、“永代使用権(土地部分)”と、“墓石部分(建物部分)”で構成されており、価格や契約もそれに準じています。
法律的にお墓の永代使用権は、霊園・墓地の経営主体(寺院などの宗教法人・財団法人)との契約。墓石部分に関しては、建墓を請け負う石材店との契約という形になります。
お墓を購入する際に、各種契約書もチェックしておきましょう。
建墓契約に際して提示される書類(例)
- 工事契約書……契約に関する書類
- 注文内訳書……施工内容の明細書
- 彫刻指示書……墓石に彫刻する文字の内容・図面
- 振込用紙……代金支払の振込用紙
- 建墓ローン契約関連書類……ローンを希望する場合
建墓契約の契約書に記載されている基本事項(例)
- 墓石の種類
- 個数
- 代金額
- 引き渡し期限(納期)
- 引き渡し方法や墓石の加工や設置に関する内容
- 要する日数
- 支払期限・支払方法(見積書または内訳書)
建墓契約の契約書に記載があっても無効になることがある条項事例
業者側に一方的に有利な内容で、著しく公平を失すると解釈される契約条項については、契約書に明記してあっても、消費者契約法第8条ないし10条により消費者保護の見地から裁判上は無効とされる可能性が高くなります。
- 「いかなる場合にも業者は一切の責任を負わない」などという条項
- 業者の債務の履行に関してなされた不法行為により生じた損害につき、賠償責任の全部又は一部を免除する条項
- 契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合に、それにより消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
- 契約の解除に伴う損害賠償の予定や違約金を定める条項で、その金額が契約解除によってその事業者に生じる平均的な損害額を超える時は、その超過部分
- 消費者側の支払うべき金員の不払いにつき損害賠償額の予定や違約金を定めた場合で、その金額が消費者側の支払うべき金員に年14.6%を乗じた額を超えるときはその超過部分
- 民法1条2項定める信義誠実の原則に反して、消費者の利益を一方的に害する条項
お墓に関する法律の正しい知識を学んでおこう
お墓や墓地、埋葬などに関することは、「墓地、埋葬等に関する法律」という法律で定められています。基本的に違反することはないと思いますが、承継者が途絶えてしまう場合や改葬する際にはしっかりと確認をしてから行いましょう。
とくに、承継者について不安がある場合は、納骨堂や永代供養墓を利用するなど将来を見据えたお墓選びをすることも大切です。
また、古い法律でもあるため、今後法律が改正されることも考えられます。お墓に関わる際は改正についても確認するようにしてくださいね。