無宗教の場合お墓はどうする

無宗教とは、特定の宗旨・宗派に属さず、宗教の教理や伝統様式にとらわれないという意味です。神仏に対する信仰心を持たない「無神論者」とは異なり、亡くなった方の霊を慰めるための葬儀を行ったり、故人を偲ぶお墓を民間や公営の霊園に設けたりというように、故人に対する供養は営みます。そこで、無宗教の方がお墓を選ぶ際のポイントや納骨について、注意点とともに紹介します。

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無宗教葬の特徴

無宗教の方の葬儀や供養では、僧侶や司祭といった聖職者を介さず、自由なスタイルで執り行うことができるという特徴があります。そのため、アットホームな雰囲気の中で故人を偲ぶこともできます。さらに、無宗教葬は読経や戒名の「お布施」が不要であること、定期的な法事に煩わされる心配がないなどの理由から近年人気が高まっています。

無宗教のお墓選びの注意点

以前の日本では、仏式の葬儀が一般的でした。これはすべての家に対してお寺の檀家になることを義務付けた江戸時代の「寺請(てらうけ)制度」の名残りです。
そして、日本人全体に占める「無宗教派」の現在の人口は、国内外の複数の機関によって調査されていますが、50%から80%とかなりバラつきが目立ちます。
この割合は算出方法の違いによるものです。例えば、地元に先祖代々のお墓があり、葬儀や法事のときには決まったお寺に法要を依頼している方は、厳密には仏教の信者といえます。しかし、普段の生活の中では特定宗派の寺院の檀家という自覚がない方は、無宗教であると回答する傾向があります。
こうした認識の違いはお寺と個人の間だけでなく、親族の中でも生じる可能性があります。無宗教の方のお墓を選ぶ際には経費やお墓のスタイルだけでなく、供養そのものに対する認識の違いがトラブルを引き起こす可能性があります。

無宗教で遺骨を納める方法

狭義での無宗教は葬儀に聖職者を介さないため、基本的には寺院の墓地に納骨することはきません。先祖代々の墓がある菩提寺であっても、お寺で檀家としての葬儀を行っていなかったり、戒名がないという理由で断られるケースもあります。そのため、お寺には事前に確認をしておきましょう。
しかし、納骨する方法はあります。

宗旨宗派不問の墓地、霊園を探す

新しくお墓を建てる場合は、地方自治体が管理運営する公営霊園を利用する場合、宗教は不問です。

また、宗教団体が民間に管理運営を任せている民間霊園、民営墓地でも、申し込みの条件の中で「宗旨宗派不問」とうたっているところは数多くあります。これらの墓地、霊園であれば、特定の宗旨宗派を信仰しなくても利用ができます。ただし、墓地を購入するにあたっては通常の墓地と同様、「永代使用料・墓石代金・年間管理費」などの費用はかかります。

宗旨宗派不問の永代供養墓、納骨堂を探す

もっと経費を抑えたい場合や、頻繁にお参りすることができない場合には、お墓を建てないという選択肢もあります。例えば、お寺や霊園が建墓した「永代供養墓」「納骨堂」に遺骨を納める方法が該当します。永代供養墓や納骨堂では、お寺の檀家になることなく利用できるものもあります。それぞれのお寺の考え方、運営方針にもよりますので、探してみると良いでしょう。

これらの納骨方法を利用しても自由にお墓参りをすることができます。また、お参りする人がいない場合でも「無縁仏」にはならないので安心です。

永代供養というのは、本来は後継者がなく、管理する方がいない遺骨を寺院が代わって供養してくれるというシステムです。しかし、近年は遺族にお墓を守る負担をかけないように選択する方が増えています。
必要な経費は、供養・管理にかかる「永代供養料」と納骨時に執り行われる「法要のお布施」、墓誌(戒名)に名前を入れる「刻字代」などです。いずれの場合でも、墓地にご遺骨を納めるときには役場が発行する「埋葬許可証」が必要です。

無宗教にふさわしい墓石のタイプ

お墓には、大きく分けて「和型墓石」と「洋型墓石」の2種類があります。墓石の好みや霊園墓地の環境なども勘案して気に入ったお墓を選びましょう。

日本人がお墓と聞いて思い浮かべるのは、江戸時代からの伝統をもつ「和型墓石」でしょう。「下台(芝台)」「中台」と呼ばれる2つの台石の上に、文字が刻まれた「石碑(竿石)」が乗っているのが特徴で、それぞれの墓石は上から「天・人・地」を意味します。墓前にはお参りのときに必要な水鉢・花立・香炉などの仏具がついています。
和型墓石は四角柱の竿石をもつ基本形のほか、細部の加工によっていくつかの種類に分かれます。竿石の天面がピラミッド状に尖った「角兜巾(ときん)」は神道向けの墓石で、石灯篭のようなフォルムの「五輪塔」は平安時代を起源とする古いモデルです。

一方、「洋型墓石」は和型にくらべて重心が低く、デザインバリエーションも豊富です。東京都を中心とする関東エリアで戦後になって多く建てられるようになりました。鮮やかな色の墓石に座右の銘やイラスト、美しい彫刻を施すなど自由にスタイルを選べるのが魅力です。カロート(納骨棺)を地下に設けることでより圧迫感のないロータイプも人気が高いようです。

いずれの場合も、特定の宗教を信仰していなくても建てることは可能です。石材店に宗教色を出さないお墓のデザインを相談してみましょう。

「お墓は要らない」という場合

多様化するお墓選びの選択肢として「散骨」があります。遺骨を海や山野、空中など故人の希望した場所に撒いて大自然に返すという埋葬方法です。
個人で行うのであれば、散骨地までの交通費や宿泊費と遺骨を粉末状にする費用のみで済みます。希望があれば献花や線香代がかかる程度です。しかし、後にトラブルにつながる可能性のことなどを考慮すると、故人での散骨はあまりすすめはできません。

一方、専門業者によっては複数の家族で船をチャーターするプランや、散骨を代行してくれるサービスなどもあります。

日本の法律では散骨に関する規定がないため、特別な手続きは必要ありません。しかし、個人の所有地に散骨することは許されません。また、過去には散骨地の近隣住民の精神衛生や海産物への影響があるとしてトラブルになったケースもあります。自治体によっては散骨を認めていない場合があるため、散骨予定の自治体に事前に問い合わせて確認しましょう。

まとめ

お墓や納骨について生きているうちに選択することは、終活の核とも言えます。時代とともに「死後は霊園の納骨堂やお墓に入る」という慣習は薄れつつあるものの、オリジナリティ溢れる墓石への納骨は根強い人気があります。
残された遺族のライフスタイルや故人の生前の宗教観によって理想的な供養を検討されている方、無宗教での葬儀を希望される方は、ぜひお気軽に相談ください。