「お墓を自宅の近くに移したい」「お墓の世話を引き継いだ」などの理由で、お墓の引越し(改葬)を検討する方が増えてきています。改葬では、今あるお墓(=改葬元)でかかる費用と、新しいお墓(=改葬先)でかかる費用、2種類の費用が必要です。
この記事では、お墓の引越し(改葬)にかかる費用の内訳と相場を紹介します。
お墓の引越し(改葬)にかかる費用の内訳
お墓の改葬に必要な費用の内訳は?
お墓を改葬するために必要な費用には2種類あります。
- 現在のお墓がある改葬元で必要な費用
- 引越し先である改葬先で必要な費用
また、改葬元や改葬先のお墓の種類や引越し方法などにより、費用が発生する場合と発生しない場合があります。
そもそもお墓の引越し(改葬)とは?
お墓の改葬とは、今あるお墓からすでに埋葬されているご遺骨を取り出し、所定の手続きを踏んで、一般墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬などの別のお墓に移動させることで、いわゆる、お墓の引越しのことをいいます。お墓を継ぐ人がいない、故郷から離れて暮らしていてお墓参りがなかなかできない、といった事情などにより、お墓の改葬が行われることが多いようです。
改葬には大きく分けて4つの方法があり、どの方法を選ぶかによって費用も変わってきます。
改葬の4つの方法
- ご遺骨だけを移動するパターン
- ご遺骨と墓石をまとめて移動するパターン
- ご遺骨の一部だけを新しい場所に移動して墓石も新設するパターン
- 複数のご遺骨があった場合に一部のご遺骨だけを移動するパターン
お墓の引越し元(改葬元)で必要な費用
- 必要書類の発行手数料
- 墓石の撤去処分、区画整備代(更地にする)
- ご遺骨の取り出し費用
- お布施代(閉眼供養など)
- 離檀料(寺院の檀家だった場合)
- 墓石運搬費用(改葬先で墓石を使用する場合)
ここからは改葬元で必要となる費用の詳細と相場を紹介します。
必要書類の発行手数料
お墓を改葬する時には、お墓のある場所の自治体やお墓の管理者と公的な手続きを行う必要があります。その手続きの中で必要な書類が「埋蔵証明書」「改葬許可申請書」「受入証明書」となります。その書類を改葬元の自治体の窓口に申請をした後、「改葬許可証」が発行されます。
埋蔵証明書
お墓の管理者(寺院、霊園など)から発行してもらう書類です。1通あたり300円~1,500円が相場となっています。「埋蔵証明書」は、「改葬許可申請書」の所定の欄に、墓地の管理者が証明をすることもあります。管理者が定める様式の書類でも構いません。
「埋蔵証明書」は、そのお墓に埋葬されている人数分の枚数が必要になる場合もあるため、昔からあるお墓は、ご遺骨の確認作業の進捗状況などにより、埋蔵証明書の取得に時間と費用がかかることがあります。
改葬許可申請書
お墓のある場所の自治体から発行してもらう書類です。発行費用がかからない場合もありますが、1通あたり1,000円程度かかる場合もあるようです。書類の形式は市区町村によって異なります。
ご遺骨を取り出すためには、「改葬許可証」が必要になります。「改葬許可証」が発行されるまでには時間がかかることがあるので、余裕をもって手続きを行うようにしてください。
受入証明書
改葬先が正式に決まりましたら、その改葬先の管理者に「受入証明書」を発行してもらいます。無料~1,500円程度が相場です。
墓石の撤去処分、区画整備代
改葬をする際には、改葬元にあるお墓を撤去し、墓所を更地にして返還しなければなりません。墓石を撤去した後、その土地を整備し、墓石を処分するなどの作業は、石材店にお願いすることになります。
墓石の撤去にかかる費用の相場
墓石の撤去はほとんどの場合、石材店が行いますが、費用としては1㎡あたり10万円~20万円程度が目安となります。
ただし、場所が狭いために作業者(クレーン車など)が使えず解体作業に時間がかかったり、作業が難しいケースの場合、料金が割増しになる可能性もあります。墓石の大きさや数も費用に反映されるため、実際に現地調査を行った上で見積りを提出してもらうことをおすすめします。
区画の整備にかかる費用の相場
お墓のあった場所は更地に戻す必要があります。費用は1㎡あたり10万円~20万円程度が目安です。
外柵などの付属品がある場合、外柵の撤去費用や整備費用を合わせた料金がかかることもあるので事前に確認をしておくとよいでしょう。
墓石を改葬先で使用する場合
改葬元の墓石をそのまま改葬先に移動したい場合は、区画面積、墓石の状態、移動距離などの条件により必要となる費用は異なってきます。
改葬先となる墓所と大きさが合わなければ、新たに加工する作業工程が増えることになります。墓石の状態によっては、加工ができない場合もあります。また、改葬先の寺院や霊園が墓石の移設を認めていないケースもありますので、事前に調べておく必要があるでしょう。
お布施代と遺骨の取り出し費用
一般的にお墓を撤去したりご遺骨を取り出したりする際は、お墓に眠るご先祖さまの魂を鎮め、魂を抜き取る儀式=閉眼供養を行います。閉眼供養を行う際には僧侶に立ち会っていただき、お墓の前で読経をしてもらいます。
お布施の費用相場
閉眼供養の供養していただいたお心付けとして、僧侶にお布施をお渡します。1万円~3万円が相場です。宗派によって閉眼供養が必要ない場合には、お布施は必要ありません。
遺骨の取り出し費用の相場
ご遺骨の取り出しは、多くの場合、石材店が行ってくれます。相場は1名様分のご遺骨につき3万円前後です。ご遺骨を自分で取り出す場合は、この費用はかかりません。
離檀料
お墓がお寺にあり、そのお寺の檀家であった場合、改葬をすると檀家を離れることになるため離檀料を支払います。檀家でない場合は不要です。
離壇料の費用相場
離檀料に決まった金額はなく、できる範囲で気持ちとしてお包みします。
目安としては、法要の際に包むお布施と同じくらいで数万円~数十万円程度が一般的ですが、お墓の大きさや地域性、これまでの檀家としての付き合いの深さなどによって異なります。金額に悩んだら、お知り合いの檀家さんやご住職などに相談して決めるのもよいでしょう。
離檀料として高額な金額を請求されてしまうケースもあります。お寺は檀家からのお布施を資金に運営していますので、檀家が減ると運営が厳しくなるという現状があります。まずは、住職をはじめ、お世話になった方々に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。そして、改葬をする理由を正しく伝え、理解してもらうことが重要です。
墓石運搬費用
これは元のお墓で使用していた墓石を、改葬先でも使用する場合、改葬元から改葬先まで墓石を移動させるための費用です。墓石を撤去処分する場合は、この費用はかかりません。
墓石運搬費用の相場
費用の相場は20万円~80万円と幅があります。墓石の大きさや移動距離によって変わります。
ただし、墓石を移動させる場合は次のようなことに注意が必要です。よく確認したうえで、墓石の移動を検討してみてください。
- 墓石が古く、運搬時に壊れる、改葬先で倒壊するおそれはないか?
- 改葬先の墓地の区画に収まる大きさか?
- 改葬先の墓地が墓石の受け入れを許可しているか?
お墓の引越し先(改葬先)で必要な費用
- 永代使用料
- 新しい墓石代(新しいお墓を建てる場合)
- お墓の基礎工事、据付工事費用(新しいお墓を建てる場合)
- 事務手数料
- 埋葬費用
- お布施代(開眼供養など)
- 入檀料(改葬先が寺院だった場合)
次に改葬先でご遺骨をお墓に納めるまでに必要となる費用を説明していきます。
永代使用料
永代使用料とは、お墓の土地の使用権料のことです。お墓を建てる区画はあくまでも借りている土地なので、そこに所得税や相続税、固定資産税などは発生しません。また、当然ながらほかの人に使用権利を譲渡することもできません。
永代使用料の費用相場
永代使用料は、区画の大きさや向きによって価格が変動し、地価が高い都市部は永代使用料も高くなる傾向があります。「第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)」によると、永代使用料(土地利用料)の全国平均金額は47.2万円となっています。
これは不動産と同様に、墓地のある場所や区画の広さによって変わるので、改葬先の相場を事前に確認することをおすすめします。一度支払った永代使用料は、特別なことがない限り、原則返還はされません。
新しい墓石代
改葬先の墓地で新しくお墓を建てる場合、新しい墓石を用意するための費用がかかります。「墓石の本体」「外柵・納骨室(カロート)」「施工費」などが該当します。
墓石代の費用相場
選ぶ墓石の種類によって費用には大きく差がでますが、100万円~200万円が相場のようです。
墓石を新しくするのではなく、改葬元から運んだものを使用する場合は墓石代はかかりませんが、代わりに墓石の運搬費用や加工費が必要となってきます。
お墓の基礎工事、据付工事費用
お墓を建てるためには、その区画の基礎工事と、墓石の据付工事が必要です。基礎工事は重い墓石を支えるための土台を造る重要な作業になります。耐震加工や土台を造る材料、工事の方法によってかかる費用が変わってきます。
工事費用の相場
据付工事は墓石の大きさや、外柵などの付属品の有無によって異なりますが、基礎工事と合わせて10万円~30万円程度が相場のようです。ほとんどの場合、墓石を購入した石材店で工事を行ってもらうため、墓石の費用と合わせて石材店に支払うことになります。
また、墓地の区画の広さや重機(クレーン車など)が使用できる環境かどうか、作業の難易度などによってもかかる費用が前後する可能性があります。詳しい費用は、石材店の方に現地調査を行っていただいた上で見積書を提出してもらいましょう。予算と照らし合わせながら検討することをおすすめします。
事務手数料
改葬先の管理者に、事務的な手続きの費用として支払います。
また、改葬を行うために役所から入手する「埋蔵証明書」「改葬許可申請書」のほか「改葬許可証」の発行手数料などもかかってきます。
改葬先の事務手数料の費用相場
それぞれの墓地や霊園によって金額は変わりますが、だいたい数千円が相場です。
申請書類の費用の相場
改葬をするときは、役所や墓地の管理者から数種類の書類を交付してもらう必要があります。
自治体や管理者によっては金額は異なりますが、発行時にそれぞれ数百円~1,000円程度の手数料が発生しますので、あらかじめ問い合わせて確認しておきましょう。
なお、埋蔵証明書については「そのお墓に埋葬されている人数分」の枚数が必要になるため、昔からあるお墓は、ご遺骨の確認作業の進捗状況などにより、埋蔵証明書の取得に時間と費用がかかることがあります。
ご自身で手続きができないときは、行政書士などに代行してもらうこともできますが、その場合は行政書士へ報酬を支払う必要があります。
お布施代と埋葬費用
新しいお墓にご遺骨を納める際には、お墓に故人の魂を墓石に迎え入れ礼拝の対象とする、開眼供養とよばれる儀式を行います。
お布施の費用相場
閉眼供養と同様に僧侶に立ち会っていただくため、目安として5,000円~1万円のお布施をお支払いしましょう。多くの場合はこの開眼供養の際に合わせて納骨も行うので、埋葬費用も必要になります。
戒名料の費用相場
改葬先が寺院墓地や一部の民営霊園の場合に、戒名をつけることが求められる場合があります。なお、改葬元で既に戒名がある場合でも、改葬先の宗派が異なると戒名の付け直しが必要になることもあります。必要となる費用は、改葬先の寺院や霊園の管理者にお尋ねください。
納骨費用の相場
ご遺骨をお墓から取り出す時と同様に、1名様分のご遺骨につき3万円前後を石材店に支払います。宗派によって開眼供養が必要ない場合や、納骨を自分で行う場合、この費用は必要ありません。
入檀料
改葬先の墓地がお寺だった場合、入檀料が必要になる可能性があります。入檀料とは、そのお寺に檀家として入る際に支払うものです。
入檀料の費用相場
10万円~30万円が相場となっています。
お布施の扱いになるため金額に決まりはありませんが、お寺の格式や大きさ、地域によって異なるので、金額は住職に相談するなどして判断するとよいかもしれません。
ただし、入檀しなくても受入れてくれるお寺もあるので、お寺にあるお墓を改葬先に選んだからといって、必ずしも入檀料が必要なわけではありません。
その他、お墓の引越し(改葬)に必要な費用
最後にこれまで説明してきたもの以外で、場合によっては費用が必要となる事例を紹介します。
ご遺骨の郵送にかかる費用の相場
改葬元のお墓から取り出したご遺骨を改葬先のお墓まで運ぶ際、望ましいのは自分の手で運ぶことですが、それが難しい場合には郵送するという方法があります。
ご遺骨を郵送する場合、宅配業者の多くはご遺骨の運搬は受け付けないよう規定で定められていますが、郵便局の「ゆうパック」であれば郵送を行ってくれます。
一般の荷物と同様に、郵送する際の箱の大きさや郵送先までの距離で運賃を計算します。重さは25㎏以下と決まっているようなので、郵送するご遺骨が多い場合は分けて送ることなどを検討しましょう。
ご遺骨の郵送を考えている方は、郵送費用のことも頭に入れておくとよいでしょう。
改葬代行サービスの費用相場
近年、お墓の改葬を行う方が増えてきていることに伴い、その作業を請け負う代行業者も増えてきています。代行業者に依頼した時の相場は30万円程度です。
改葬代行サービスの費用の内訳は以下のようになります。
- 必要書類の申請と取得に約8万円
- 墓地管理者との交渉、同行に約5万円
- 墓石の解体工事に約10万円~15万円
- ご遺骨の移動作業に約3万円~5万円
- 法要儀式の手配に約2万円~3万円
必要な部分だけを依頼できる業者もあるようなので、全体の予算と照らし合わせながら、一つの手段として検討してみてもよいかもしれません。
墓じまい(改葬)を行う業者をご紹介
墓じまい(改葬)は完了するまでの手続きも多く、必要な費用も不透明なところが多いのが実態です。まずは、複数の業者から見積りをとることで費用の全体感を把握しましょう。
全国1,000件以上の石材店と提携している「いいお墓」では、お客様のご要望に合わせて、最適な墓じまい業者を紹介いたします。