このところテレビやネットなどでも話題になっている宇宙葬。何だかわからないけど面白そう。でも、もうちょっと詳しく知りたいなと思っている方はいらっしゃいませんか?
今回は、宇宙葬のサービスを提供している株式会社銀河ステージ(大阪本社:大阪府大阪市、東京本社:東京都港区)にお邪魔して、メモリアルプランナーの佐野高志さんに、お話を伺ってきました。
故人の遺灰の一部をロケットなどで宇宙空間に送り出すという葬送
――初めから大変ぶしつけで失礼ですが……、銀河ステージってどんな会社なんですか?
おおもとは出版社です。30年前から、大阪で経営情報誌の発行をしていますが、そこから派生してさまざまなビジネスを展開しています。
「銀河ステージ」も、近年のお葬式やお墓の問題を考えていた時に、宇宙葬を発見し「これだ!」と設立しました。世界唯一の宇宙葬の実績と豊富な経験を持つアメリカの民間ロケット会社と提携し、スペースメモリアル=宇宙葬を取り扱っています。
多様化するお客様のニーズにお応えするために銀河ステージでは、宇宙葬のほか、散骨や樹木葬、海外への納骨なども「銀河メモリアルサービス」として提供しています。
――宇宙葬について、すごく簡単に説明していただけますか?
宇宙葬というのは、故人の遺灰の一部をロケットなどで宇宙空間に送り出すという葬送です。
宇宙葬そのものは以前からあったもので、世界中で宇宙葬を施行した方も多数いらっしゃいます。
ちなみに、ここで言う宇宙空間というのは、国際航空連盟やNASAが定義している「カーマン・ライン」というのがあって、海抜高度100キロメートルを越えたところからを、宇宙空間と言っています。
――宇宙葬と一口に言っても色々な種類があるそうですね
当社で扱っているもので、大きく4つのプランがあります。
宇宙飛行プラン
これは遺灰を納めたカプセルをロケットに搭載し、宇宙空間へと送り出します。
人工衛星プラン
遺灰を納めたカプセルを人工衛星に搭載して、宇宙空間へ打ち上げます。打ち上げはNASA専用の施設で行われます。
宇宙空間に入った遺灰は、最長で240年間にわたって軌道上を周回します。宇宙飛行士や『スタートレック』の俳優など、これまでに世界各国でおよそ370名の方がこの人工衛星プランを利用しています。
また、人工衛星の位置は、有料になりますが、専用のアプリをダウンロードすることで確認することができます。
月旅行プラン
これは、1997年から行っているプランです。遺灰のカプセルを月面に送ります。
次回の打ち上げは2017年を予定しています。
宇宙探検プラン
その名の通り、宇宙をずっとずっと飛んでいくプランです。
宇宙帆船といって、太陽の光を受けて前に進む、ヨットのような探査機があるのですが、この探査機に搭載して、宇宙の果てまで旅を続けます。
過去には冥王星を発見した方の遺灰が、冥王星の探査船に搭載されたという実績があります。こちらも2017年に次の実施が予定されています。
めったに行けない宇宙旅行をプレゼント
――宇宙って聞くと、何か大変そうな気がしますが、簡単に申し込めるものなんですか?
簡単な流れを説明しますと、次のような感じです。
- 電話やFAX、メールにてご連絡ください。お申し込み書など、必要書類をお送りします。
- 必要事項を記入して書類を返送してください。搭乗者様(すでにお亡くなりになっている場合は故人様)のお写真も。
- お支払。現金、または銀行振込。クレジットカードでのお支払いを希望される場合は、事前にご連絡ください。
- 入金を確認して、遺灰収納キットをお送りします。遺灰を納めて返送してください。
- 旅行! お預かりした収納キットをアメリカへ送りカプセルへ収めます。その後、ロケットに搭載して、宇宙空間へ!
ご家族は、お申し込みをいただければ、アメリカでの打ち上げセレモニーにもご参加いただけます。
また、打ち上げ後は、セレモニーの様子やフライト時の映像を収めたオリジナルフォトフレームや打ち上げ証明書、セレモニーやフライトの様子をまとめた記念誌を贈呈しています。
――どのくらいの申し込みがあるものなのでしょうか?
当社では、宇宙葬を2014年からはじめていますが、現在までに2回打ち上げし5名の方が宇宙飛行プランを行っています。
また、人工衛星プランでの打ち上げを待っているお客様が、現在6名いらっしゃいます。
このほか、生前申し込みでは、30名以上の方からお申し込みをいただいています。
――生前申し込みを含めどのような方が宇宙葬を希望されるのですか?
いろいろな方がいらっしゃるので一概には言えません。
年代も30代から60代まで幅広いですし、性別で分ければ男性の方がやや多いですが、もちろん女性で申し込む方もいらっしゃいます。
ただ、皆様、さまざまな思いをお持ちです。
例えばお母様をお送りした方は、旅行好きのお母様と「これから海外旅行にも行きたいね」とパスポートまで準備したのですが、残念ながらお母様は旅行には行けなかった。そこで、めったに行けない宇宙旅行をプレゼントしたいというご希望もありました。
また、生前のお申し込みをされる方の中では、会社の経営者という方も多くいらっしゃいます。中でも「月旅行プラン」をご希望された方は、「もしものことがあっても、大切なご家族と、そして大事に育ててきた会社や社員たちを、月の上から見守っていたい」とおっしゃっていました。
一般のお墓や、樹木葬、散骨などと合わせての宇宙葬サービスも生まれるかも
――宇宙葬が広がると、お墓がなくなってしまうということはありませんか?
それはないでしょう。
遺灰の封入カプセルは4種類ありますが、中に入れられる遺灰はそれぞれ1グラム、2グラム、3グラム、そして7グラムです。
宇宙空間にお送りするのは遺骨や遺灰のごく一部だけですので、お墓の代わりになるものではありません。どちらかというと、夢というか、想いを伝えるサービスです。
――これから、この宇宙葬はどのように進化していくと思いますか?
以前、手元供養品で遺骨で作るダイヤモンドがあるので、「まずダイヤモンドに加工してから、そのダイヤモンドを宇宙に送ってほしい」といったお話を伺う機会がありました。
確かに、できないことはないのかもしれませんが、実際にダイヤモンドになった時に、打ち上げ後、時間を経て、宇宙空間から大気圏に再突入する際にきちんと燃え切るかどうか、安全性に懸念があったのでお断りいたしました。
でもそうした発想というのは新しい気付きと言いますか、例えば先ほども言いましたが、一般のお墓や、樹木葬、散骨などと合わせての宇宙葬サービスも生まれるかもしれません。
弊社パンフレットの表紙に≪宇宙へ 海へ 大地へ≫とある様に、「一部は“宇宙”、一部は“海洋散骨”、一部は“樹木葬”など、そして身近には“手元供養品”を」と言った組み合わせも可能です。
また、近年話題になっている「墓じまい」も、ただ合祀墓に移すのではなく、そうしたサービスと組み合わせることで、ご先祖様や亡くなった方を大切にする想いを伝えられるのではないかと思います。
――ありがとうございます。
宇宙葬というとなんだか壮大で、まったく別の世界の話のようなイメージでしたが、お話を聞いていると、たくさんあるお別れの一つということがわかりました。
普通のお墓とか、樹木葬とか、いろんなお別れと組み合わせるのも、夢が広がりそうです。
(文・構成 小林憲行)