ローソクの火を灯して、故人を供養するために使われる灯篭。電灯の少ない墓地では照明や目印にもなり、最近は景観のために設置されることも多いです。
灯篭の設置・処分をするときは、事前に注意点や費用について確認しておくと安心です。この記事では、灯篭の設置・処分の方法やかかる費用をまとめて紹介します。
灯篭を置く意味とは
灯篭(とうろう)とは、日本に古来からある照明器具のひとつ。灯篭には、暗闇を照らす明かりとしてだけでなく、宗教的な意味があります。
仏教では灯篭を「邪気を払うもの」だと考えていて、墓前灯篭には故人が道に迷わないようにという意味が込められています。また、灯篭流しや灯篭祭りは、火を灯して故人を供養するのが目的です。
その他、灯篭は庭園の景観を引き立てる装飾品としても親しまれています。形状や材質が多様で、趣向を凝らした灯篭も増えているようです。
灯篭の主な種類
灯篭にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や用途が異なります。ここでは、主な灯篭の種類を5つ紹介します。
墓前灯篭
お墓に設置される灯篭を「墓前灯篭」と呼び、ご先祖様を供養する目的で設置されます。また、お墓参りに来る人への目印や照明としての役割もあります。
仏式は丸型、神式は角型の墓前灯篭が使われるのが一般的ですが、用途にあわせてデザインはさまざま。広い墓地に灯篭があると、墓地全体が豪華で立派な印象になります。
立灯篭
「立灯篭」は長い柱のある伝統的な灯篭で、庭園や神社などでよく見られます。
代表的な立灯篭は、春日型や柚木型、御苑型など。もっとも有名な春日型は、柱(竿)が長く、火袋が高い位置にあるのが特徴です。春日型は、春日大社で使われていた灯篭が由来とされています。
雪見灯篭
「雪見灯篭」は、複数の脚と広い笠が特徴的な灯篭です。高さが低く、複数の足で支えられているため、安定感があって基礎が必要ありません。
庭園の池や水辺に設置されることが多く、風景のアクセントとして景観を引き立てます。形状には角型や丸型があり、庭園だけでなく、お墓の入口に目印として用いられることもあります。
置灯篭
「置灯篭」は、脚がなく、地面や庭石の上に直接設置できる小型の灯篭です。基礎や柱がないシンプルな構造で、火袋や笠が主体となっています。
置灯篭は高さ50cm程度の灯篭が多く、スペースを取らないため、ご家庭の玄関先や庭に手軽に置けるのが魅力。景観の向上だけでなく、夜間の足元を照らす役割も果たします。
活込灯篭
「活込灯篭」は、柱を地面に直接埋め込んで設置する灯篭です。基礎や基壇を持たないシンプルなデザインで、高さの調節ができるので比較的コンパクトな空間に適しています。
柱の下部に「コブ」と呼ばれるふくらみがあり、地中に埋めることで重心を安定させ、倒れにくくする効果があります。
灯篭の正しい置き方と火袋の向き
灯篭の各部の名称

立灯篭を例に、灯篭の各部の名称を紹介します。灯篭の主な部位は6つに分かれていて、上から玉・宝珠、笠、火袋、受、柱、地輪です。
灯篭のてっぺんにあるのは、玉・宝珠(ほうじゅ)。その下にあるのが笠(かさ)で、火袋の屋根となる部分です。
笠の下には火袋(ひぶくろ)があり、灯火を入れます。装飾品としての灯篭だと火は灯しませんが、火袋は灯篭に必須の部位です。また、火袋を支える部位が受(うけ)で、最下部にある地輪と対となる形状をしています。
柱(はしら)は、受と地輪を繋ぐ部位で、背の低い雪見灯篭や置灯篭では省略されることが多いです。地輪(じりん)は最下部にある足の部分で、六角形や円形が主流です。
灯篭の正しい置き方と向き
灯篭の火袋には上下があり、穴がある面が上側、ない面が下側になります。火袋の上下が反対だとロウソクを固定できないため、必ず正しい上下で設置してください。灯篭に火を灯さなくても、見た目に違和感があったり、バランスが悪くて倒れたりする危険性があります。
また、火袋の向きはデザインによって変わります。たとえば、丸い穴と三日月型の穴が空いている灯篭なら、太陽が昇る東に丸い穴を、太陽が沈む西に三日月形の穴を向けるのが一般的。石格子の彫刻がある火袋なら、一面だけくり抜いた窓があるため、その面を後ろにします。
灯篭は倒れない設置が重要
一般的な灯篭は、柱に対して笠が大きめの造りとなっています。地震が発生すると、揺れによって灯篭が倒壊したり、笠が落下したりする危険性があるので注意が必要です。
灯篭は、万一地震が起きても耐えられるよう、きちんと補強した状態で設置するのが大切。部材の接合部分に穴をあけ、ステンレスの芯棒を入れて固定したり、衝撃吸収パットを入れたりすれば、落下やズレを防げます。
灯篭を設置するときの費用
灯篭を設置するときの費用は、種類やサイズ、設置場所によって異なります。ただ、一般的には、小型灯篭は3万円〜10万円、中型灯篭は10万円〜30万円、大型灯篭は30万円〜100万円以上が費用の目安です。
また灯篭本体にかかる費用以外に、設置費用や運搬費用、基礎工事費用が必要。設置場所やデザインによっては追加費用が発生するため、必ず見積もりをとって確認してください。費用をおさえるなら、複数の石材店や業者に見積もりを依頼し、比較検討するのがおすすめです。
灯篭を処分するときの撤去費用
灯篭を設置する必要やスペースがなくなり、処分を考える方もいるかもしれません。
灯篭を処分するときの撤去費用は、1kgあたり30円〜45円が相場。一般的には灯篭の体積を計算し、人力で運べるか、細かく粉砕して運ぶかによって決まります。また、必要な作業や人数、重機などによっても金額が変わるため、事前の確認は必須です。
なお、使わなくなった灯篭を買取ってくれる石材店はほとんどありません。灯篭を処分するときは、解体や搬出のための費用を用意しておきましょう。
解体・撤去した灯篭の処分方法
処分した灯篭は、解体して撤去され、その後は石として扱われます。
庭園に設置された灯篭なら、クレーンで吊して運ぶか、先に細かく破砕して移動するのが一般的。解体工事会社に依頼した場合、人力または重機を用いて細かく砕いた後でトラックへ積み込んで運搬し、処分工場に持ち込まれます。
トラックで吊り上げて処分場で細かく破砕されたあとは、埋め立てに使われる砕石か、鉱さい加工して土木用の砕石に利用されることが多いです。石灯篭は、自然石を加工した灯篭とコンクリートなどで人工的に造られた灯篭とで処理が違うので注意してください。
灯篭を設置・処分するときの注意点
設置スペースに合わせたサイズにする
最近は墓地の面積が狭くなっているため、灯篭を設置するスペースのない区画もあります。どこに設置するのか、どのような大きさとデザインの灯篭にするのか、必ず確認しておきましょう。
石材店としっかり話し合った上で決めておけば、後でトラブルに発展しにくいです。なかには、オーダーメイドや狭いスペースで設置できる灯篭もあるので、検討してみてください。
灯篭を設置した目的や経緯を確認する
お墓や庭園に設置された灯篭は、先祖代々から長きにわたって使われていた可能性があります。そのため、灯篭を処分するときは、用途や目的を確認してふさわしい方法を選ぶべき。強い思いが込められている灯篭は、丁寧にお清めをしてから撤去した方が安心です。
また、有名な彫刻家が造った灯篭は、骨董品や古美術品などアンティークとして扱われるかもしれません。処分しない方がよい場合もあるので、事前に必ず確認しておきましょう。
灯篭の処分・設置のご相談は「いいお墓」へ
灯篭を設置するときは、地震や災害が起きても倒れないよう正しい置き方で固定するのが大切。また、もともと建てられていた灯篭を処分するときは、重さや立地をふまえて事前に必要な費用を確認してください。さらに、用途や目的を調べて処分する前にお清めもしましょう。
灯篭の処分・設置は、プロの石材店に依頼するのが一番。事故や怪我の心配がありませんし、一連の作業を安心して任せられます。「いいお墓」では、石材店の無料見積もりサービスを提供しています。灯篭の処分・設置でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。