浄土宗の宗祖である法然上人の軌跡と、歴史を感じられる浄土宗大本山「光明寺」
ここでは浄土宗七大本山に数えられる2つの光明寺、鎌倉の「天照山蓮華院 光明寺」と京都の「紫雲山 くろ谷 金戒光明寺」について説明するとともに、西山浄土宗(せいざんじょうどしゅう)の総本山である長岡京市の「西山浄土宗総本山 光明寺」を紹介します。
浄土宗七大本山とは
浄土宗では、京都の「知恩院」が総本山(本山を統括する寺院)とされており、それに続く格式の高い寺院として、7つの大本山(七大本山)があります。そして浄土宗七大本山は以下の寺院のことを指しています。
- 増上寺(東京都港区)
- 光明寺(神奈川県鎌倉市)
- 善光寺大本願(長野県長野市)
- 金戒光明寺(京都市左京区)
- 知恩寺(京都市左京区)
- 浄苑華院(京都市上京区)
- 善導寺(福岡県久留米市)
大本山・天照山蓮華院 光明寺(神奈川県鎌倉市)
天照山蓮華院 光明寺は浄土宗七大本山の一つで、御本尊は阿弥陀如来です。鎌倉幕府の第4代執権北条経時の帰依を受けて浄土宗三祖然阿良忠上人が開山しました。室町時代の後土御門天皇から、関東の念仏修行の根本道場として関東総本山の称号を受けました。
そして江戸時代には、徳川家康が僧侶を養成する機関として壇林を定め、光明寺を関東十八壇林の筆頭としたことから、末寺は62寺にもなり、全国から僧侶が集まったと言われています。
大本山 光明寺の見どころ
本堂の大殿は鎌倉最大ですが、山門も高さ20mと関東随一の大きさを誇ります。庭園も有名で、一つは小堀遠州が作ったとされる蓮池を中心にした記主庭園、もう一つは枯山水の庭園「三尊五祖来迎之庭」で阿弥陀三尊と浄土教を説いた五大祖師を摸した石庭の自然との対比は見ものです。
また、弟子の良暁が1495年に勅許を受けて十夜法要を行い、以来毎年10月12日より15日までの4日間、500年以上に渡り盛大に十夜法要が行われています。この法要は浄土宗寺院で広く行われています。
鎌倉の光明寺は桜の名所でもあり、3月には「観桜会」が催され、お寺の駐車場でフリーマーケットが開かれたり、茶席が設けられたりしています。他にも、日向国延岡藩の領主である内藤家歴代藩主や正室の墓所にお参りできます。
御本尊「阿弥陀如来」、「如意輪観世音」、開山「記主禅師」などの御朱印があります。
《墓所案内》天照山蓮華院 光明寺
鎌倉の天照山蓮華院光明寺の中にある寺院墓地です。過去の宗派は問われませんが、使用するためには浄土宗に帰依する必要があります。
JR鎌倉駅より徒歩20分と少々距離がありますが、大本山光明寺の自然を感じられる墓地です。法要設備や駐車場もあります。
《墓所案内》塔頭 天照山千手院
光明寺の学生寮があった場所に建てられた寺院墓地で、JR鎌倉駅より徒歩20分、大本山光明寺の山門の北側にあります。会食施設、法要施設、休憩所が整備されています。松尾芭蕉の句碑が建っており、光明寺の歴史的を感じられます。
大本山・紫雲山 くろ谷 金戒光明寺(京都市左京区)
金戒光明寺は、浄土宗最初の寺院で、浄土宗七大本山の一つです。15歳で比叡山に登られた法然上人が、修行を終えて山頂で念仏を唱えた時に紫雲がみなぎり光明があたりを照らしたことから、この地に草庵を結び、浄土宗最初の寺院となりました。この草庵は後に紫雲山光明寺と呼ばれるようになります。
また、南北朝時代の後光厳天皇に戒を授け際に金戒の二字をいただいたことから、金戒光明寺と呼ばれるようになります。
大本山 金戒光明寺の見どころ
境内には、山門、阿弥陀堂、本堂など18にもなる塔頭寺院が並び、彼岸の中日の頃には沈む夕陽を拝める京都盆地唯一の場所で知られています。御影堂には、法然上人75歳の御影と中山文殊と吉備観音が安置されています。江戸時代末期に建立された山門には釈迦三尊像と十六羅漢像が安置され、楼上からは市内を一望できます。三重塔の本尊である文殊菩薩と脇侍の尊像は、運慶作と伝えられていて重要文化財に指定されており、見どころの一つとなっています。
庭園は、白砂と杉苔の枯山水庭園「紫雲の庭」と、紅葉と池が調和した回遊式庭園です。紅葉の時期には御影堂、庭園、山門などが拝観できる特別公開が行われ、夜間背景で見られる紅葉と庭園の美しさが目を楽しませてくれます。
法然上人御廟所には法然の遺骨が祀られています。また、幕末には會津藩主松平容保が京都守護職に任命され、ここに本陣が置かれて1,000人が常駐したという歴史もあり、新撰組発祥の地としても有名です。
また、「アフロ大仏」として有名な五劫思惟阿弥陀の御朱印は、旅の思い出としてぜひもらっておきたいところです。
《墓所案内》くろ谷 金戒光明寺「紫雲墓地」
借景として東山連峰を望む優美な墓地で、京都の風情ある自然に囲まれています。バリアフリーなので、足が悪い方でも問題ありません。他にも会食施設、法要施設・多目的ホール、駐車場を備えています。宗教・宗派不問。
京阪丸太町駅から市バスで岡崎神社前下車、徒歩約5分。車の場合は京都南ICより35分で到着します。
一般墓所:一聖地(1m2)あたり永代使用料170万円、年間管理費12,000円
※使用料・管理費には墓石費用は含まれていません。その他、冥加料30万円がかかります。
納骨堂(一霊あたり):分骨8万円、総骨10万円
※納骨は浄土宗の方のみ。お申し込みの前に檀那寺に相談が必要です。
西山浄土宗総本山 光明寺(京都府長岡京市)
法然上人が、43歳の時、立教開宗された地に建てられた寺院です。1185年に源氏の熊谷次郎直実が罪業を償いたいと法然上人を訪ね、「罪が深くても念仏を申せば必ず救われる」と教えられたことから直ちに剃髪し法力房蓮生と名づけられました。1198年に粟生広谷に寺を建て、法然上人によって念仏三昧院と名づけられたのが、こちらの光明寺の始まりです。
1227年に叡山の衆徒が法然上人の墳墓を暴こうとしたので、弟子たちが遺骸の石棺を太秦に移すと、棺から数条の光明が放たれ、南西の粟生野を照らしたことから遺骸を粟生野の地で荼毘に付し御廟堂を建てました。これ以後、念仏三昧院は光明寺と呼ばれることになりました。
西山浄土宗総本山 光明寺の見どころ
境内は約1万8,000坪と広大で、33棟の建物があります。法然上人が初めて教えを説かれた場所には「浄土門根元地」の石碑が建っており、熊谷連生法師の故事を記念した「東行逆馬の碑」からは武士らしさを感じます。光明寺の中心となる御影堂の「法然上人御自作の張子の御影」は、一度お参りに足を運んでおきたい場所です。
京都の紅葉の名所には、大宰府に流された菅原道真を祀る北野天満宮、京都三大門で有名な二王門のある仁和寺、瑠璃の庭で知られる瑠璃光院などたくさんありますが、光明寺は約500本の楓が参道の両側に植えられた「もみじ参道」が有名で、「紅葉の特別入山」もあり、季節の情緒を楽しめる寺院でもあります。
《墓所案内》西山浄土宗総本山 光明寺
総本山光明寺の豊かな自然に囲まれた静閑な寺院墓地です。駐車場がないため、車で行く場合はJR長岡京駅前駐車場を利用し、パークアンドライドでアクセスできます。徒歩の方は、阪急長岡天神駅からバスで旭が丘ホーム前で下車すると光明寺が見えます。
30万円で永代納骨供養合祀墓を利用でき、遺骨の一部(分骨)を法然上人のお墓(御本廟)の隣にある納骨堂に納めてもらえます。
まとめ
大本山光明寺、大本山くろ谷金戒光明寺、西山浄土宗総本山光明寺ともに、浄土宗の宗祖・法然上人とゆかりの深い、格式ある寺院です。
鎌倉、京都、長岡京など自然と歴史を楽しめる閑静な地に足を運び、情景と仏門の風情を楽しんでみてはいかがでしょうか。