お墓には、ご先祖様が眠る場所、家系のシンボル、ご先祖様を敬う場所など、人それぞれイメージがあるかと思います。
現代では、考え方が多様化してきて「お墓はいらない」と考える人も増えてきています。また、どの宗教にも信仰を持っていない人も、お墓を建てないことが多くなっています。
お墓を建てない場合、どのような供養の方法があるのでしょうか。この記事では、お墓を作らない選択をした方のための新しい供養の形を紹介していきます。
なぜお墓はいらない?どんな理由で不要と思うのか
現代の日本では、「お墓はいらない」「お墓は必要ない」と考える人が増えています。この記事をご覧であればお墓はいらないと思っている人も多いでしょう。
まずここではどんな理由からお墓はいらないと思うのか、例を挙げてみます。
後継者がいない
まず挙げられるのは、日本が抱えている少子高齢化や核家族化の問題です。
お墓の世話を頼める身内が少なくなっていく中で、自分が旅立った後のことが心配になるのも自然の流れでしょう。後継者がいないため、お墓を残せないという人も少なくありません。従来のお墓を継承するためには後継者が必要なため、後継者がいなくなってしまえばお墓が不要となってしまうのも頷けます。
また、お墓のある場所から離れて生活することも珍しくなりました。遠方になってしまえば満足にお墓参りすることもできず、管理も難しくなってしまいます。お墓は簡単に引っ越しもできません。そうなるとお墓が煩わしく感じてしまうかもしれません。
金銭的な負担が大きい
多くの人がいらないと思う理由して挙げるのは金銭面ではないでしょうか。
地域によって差はありますが、墓地の区画や墓石の購入費用、その後の管理費、僧侶に支払うお布施などを合計すると、数百万円もの金額がかかってきます。残された遺族にとって、葬儀代とも合わせて考えると、決して安い金額ではありません。子どもが複数人いて、費用を分担できればいいのですが、そうでない場合にはさらに負担が大きくなります。
無宗教の人が増えている
少し前のデータですが、アメリカの「ピュー・リサーチ・センター」という調査機関による2012年の調査で、日本人の57%が無宗教という結果が発表されました。無宗教の人は、特定の宗教を信仰しない、あるいは信仰心自体を持っていません。日本の寺院は、仏教寺院であることが多いので、そこにお墓を建てる必要性を感じないのです。
たとえ無宗教でなくとも、葬儀や法要、墓参り以外の用事で、寺院へ足を運ぶことが少なくなっている、という現状もあるといえます。
そもそもお墓って?
なぜお墓は必要とされているのでしょう。そもそもお墓ってどのようなものでしょうか。
ひとことに「お墓」といっても、いわゆる石のお墓だけではありません。樹木や花を墓標として埋葬する「樹木葬」や、遺骨を主に建物内に安置し供養する「納骨堂」、そして多くの方がイメージするもっとも伝統的なお墓のスタイル「一般墓」です。
「お墓はいらない=一般的な石のお墓がいらない」という人も多いかもしれません。まずはお墓についてきちんと整理し直してみましょう。
お墓ってどんな種類がある?
一般墓とは
一般墓は、家族や親せきなど「家」単位で利用されるお墓で、代々子孫へと引き継がれていく伝統的なお墓のスタイルです。管理費を支払っている限り永続的に使用することができ、収める遺骨数に制限がないのが特徴です。
樹木葬とは
樹木葬(樹林墓地)とは、遺骨を埋葬した場所に木を植えるお墓の形態のことを指します。 樹木葬では墓石を建てず、樹木や花を墓標として埋葬する形が一般的ですが、さまざまな種類があります。自然に還りたいと考える方を中心に人気が出ている樹木葬ですが、永代供養付きの場合が多いため、後継ぎや墓地を管理してくれる人がいないという方にとってもメリットがあります。樹木葬は寺院のほか、都立霊園のような公営霊園や民営霊園でも近年多く導入されてきています。
納骨堂とは
納骨堂とは、遺骨を主に建物内に安置し、供養する施設のことです。元々は遺骨を一時的に納めるための施設でしたが、最近では遺骨を祭祀する施設としての役割を担うことも多くなりました。広大な敷地を必要としないため、主に都市部を中心に、近年樹木葬とともに注目を集めている新しいタイプのお墓です。宗旨や宗派に関わらず納骨が可能な施設も増えています。
実は「墓石が必要」とは限らない!
日本では、霊園・墓地に墓石を建て、そこへ遺骨を納める方法が一般的です。人間の寿命よりもずっと長く残る「石」は、古くから故人の供養に使われてきました。
ところが、海外に目を向けると、いろいろな方法で故人の供養が行われています。例えば、インドでは遺骨や遺灰をガンジス川へ撒きます。ひと昔前の中国や韓国では、遺体を土に埋めてその上に土を盛っていました。チベットでは、遺体を野天に放置して、鳥が啄む「鳥葬」が行われているそうです。
お墓は「死者の遺骸や遺骨を葬った所」という意味のとおり、必ずしも石である必要はないのです。
お墓を建てない場合、どんな供養の方法があるの?
ここでは、石のお墓を建てずに故人やご先祖を供養していきたいと思ったときの方法をご紹介します。
樹木葬
墓石を建てず、樹木や花を墓標として、遺骨を土に還す埋葬方法です。1999年に、岩手県の「祥雲寺」で人間の埋葬方法として初めて採用されました。
現在では、遺骨ごとに苗木を植えたり、墓地と同じように区画分けされていたり、大きな木の周りに合同で埋葬したりと、さまざまな形式のものが広がっています。この方法は、どの樹木の下でもできるわけではなく、許可を得ている霊園や墓地の敷地内で行うことができます。自然に還るという考え方も受け入れられやすく、樹木葬を検討する人は年々多くなっています。
樹木葬のメリットは、費用を抑えて入れることと、永代供養をしてもらえることが多い点です。また、必ず家族で入らなくてはいけないこともなく、宗旨・宗派も問われません。
納骨堂
納骨堂は屋外にある墓地ではなく、主に建物の中などに個人や家族で遺骨を納められる施設です。寺院や霊園が管理し、家族に代わって供養を依頼することができます。納骨堂の種類やタイプも多様化しておりさまざまな種類があります。
- ロッカー式
コインロッカーのような扉付きの同じ大きさのお壇がずらりと並んだ納骨堂 - 自動搬送式
個別に納骨するロッカー式納骨堂やICカードをかざすと、バックヤードから参拝ブースまで遺骨が自動で搬送される納骨堂 - 仏壇式
契約単位ごとに仏壇が用意されている納骨堂 - 位牌式
戒名や没年月日などが書かれた位牌を個人スペースのシンボルとして掲げる納骨堂 - 墓石式
一般的なお墓と同じように、墓石を用意するタイプの納骨堂
納骨堂のメリットは、費用を抑えて入れることや屋内施設が多く雨や風といった天気の影響を受けにくいことです。比較的アクセスのよい立地が多く、お墓参りのしやすい点も人気です。
永代供養墓
一般的には、霊園や寺院が遺族に代わって供養・管理をしてくれるお墓を指します。
永代供養墓にもさまざまな種類があります。納骨堂や樹木葬は、永代供養付きのものが多くあります。また、他の方の遺骨と一緒に納骨する合祀墓は、費用を抑えたい方に多く選ばれています。
散骨
故人の遺骨を粉末状にして、海・空・山などに向かって撒くものです。
国内外の有名人・著名人の中にも散骨を選んだ方は多くいます。撒くことができる場所は限られているので、散骨を行う場合は専門業者に依頼することが一般的です。
なお、日本には「墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)」というものがあります。昭和23年に制定された法律で、第2章第4条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」とあります。しかし、墓埋法はもともと土葬を対象としており、自宅の庭や所有地または他人の所有地に勝手に遺体や遺骨を埋葬することを禁止している内容となっているので、遺灰を海や山に撒く葬法は想定しておらず法律の対象外となっています。
手元供養
手元供養とは、机上に収まるくらいのスペースを使い、小さな骨壺に遺骨を入れて、仏壇と一緒に置き、いつでも遺骨を側に置いておくことができる供養法です。一般的な仏壇より小さい手元供養用の仏壇を使います。
なお、墓埋法では「焼骨を自宅で保管する事は、本条に違反するものではない」と言う見解が示されているので、遺骨の自宅安置に関しては法律に触れませんし、その期間に定めもありません。
ゼロ葬(0葬)
「ゼロ葬」、この呼び名を聞いたことがある人は、かなり少ないのではないでしょうか。
葬儀・埋葬をせず、お墓・仏壇も作らず、火葬のみ行うというものです。遺骨は、火葬場でそのまま処分してもらったり、郵送で合祀墓へ送り埋葬してもらったりして納められます。身寄りがない、親族間で疎遠になっているなどの場合に執り行うことがあります。
お墓を建てない場合、どんな注意点があるの?
では、実際にお墓を建てないと決めたとき、どのような問題が発生するでしょうか?
ここでは、お墓を建てないと発生するかもしれない注意点をご紹介します。事前に確認しておくことで回避できるトラブルもありますので、確認しておきましょう。
家族や親族に理解してもらえない
本人がお墓はいらないと思っていても、残された家族や親族が同じ気持ちとは限りません。亡くなった故人を偲ぶためにお墓を必要だと考える人もまだまだ多くいます。
どの方法を用いるときも同じですが、必ず家族間での話し合いをしっかり行いましょう。家族間でも意見が分かれ、後になってから「やはり個別のお墓がほしかった」というトラブルが起こることもあります。
遺骨を取り出せなくなる可能性
合祀や散骨などをしてしまうと、後から遺骨が取り出せなくなってしまいます。このような埋葬方法をとる場合は、なおさら慎重に考えて決めていきましょう。後になってから「やはり個別に遺骨を取り出したい」というトラブルは実はよくあることなのです。
お墓を建てる負担が後回しに⁉
子どもに負担をかけないために墓石のお墓を建てないという選択肢が、実は逆になってしまうこともあります。子どもの代でお墓を建てるという選択をした場合、負担をするのは子どもたちとなってしまう・・・ということが起こるからです。
まとめ
「お墓はいらない」と考える方々は、ご先祖様を大事に思っていないというわけでは決してありません。現代の日本が抱えている問題を象徴した考え方を持っているともいえるでしょう。
お墓を建てるか建てないかの選択は、そう頻繁に行うものではありません。ご家族の中でも意見が分かれることが多いものです。
「いいお墓」でもご相談を受け付けていますので、後悔のない選択をするために少しでも不安なことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。