神道のお墓 – 仏教式との違い/お墓参りの作法とお供えの仕方

神社の参道

日本には神社がコンビニの数をも超えて約8万社あるとされています。日本に住む人なら、初詣、七五三、お祭り、神前結婚式など何らかの形で神社にかかわったことがあり、神道を宗教として信じている人も少なからずいます。
しかし神道のお墓参りの作法やお供えの仕方について、どのようなものかを知っている方は少ないのではないでしょうか。日本では多数派である仏教式のお墓参りにはなじみがありますが、神道のお墓参りの作法は分からない、そんな方も多いでしょう。

ここでは、神道のお墓参りの作法やお供えの仕方を、仏教の場合と比較して解説しています。いざというときに困らないよう、神道式のお墓参りの作法やお供え物についての知識を深めましょう。

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神道とは?

日本では、ありとあらゆる自然のものすべてに神様が宿っていると考えられてきました。神道とは、日本に古くから続いてきたそのような八百万(やおよろず)の神への信仰に、大陸から伝来した仏教、道教、儒教などが影響して展開してきた日本独自の宗教です。
仏教が伝来したときは、神道の神様も仏教の神様も八百万の神の一つであるとされ、神道と仏教が神仏習合ということで区別されなかった時代もありました。

神道のお墓とは?

神道の祭祀を行う場所が神社ですが、神道では死は穢れ(けがれ)とされているので、一般的には、鳥居の内側や敷地内に墓地は所有していません。
そのため、お墓を建てる場合は、地域に代々伝わってきた村墓地や、宗教不問の寺院墓地や民営霊園公営霊園などで墓所を購入して利用します。

神道のお墓の基本的な形や構成は、仏教式とさほど変わりません。
ただし、神道では焼香を行わないので「香炉」がなく、玉串(榊)を奉げるための「八足台(はっそくだい)」という台があります。

神道の墓石(兜巾加工)

神道式の墓石の特徴としては、仏教式の場合は頭の部分が平らであることが多いのですが、神道の場合は角を落として「兜巾(ときん)」と呼ばれる四角錐のような加工を施す場合が多いです。
この兜巾の形は、修験者の被る黒色の頭巾の形とも、三種の神器の一つである「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」を表したものであるとも言われます。

神道の墓石に刻まれる文字の多くは、「○○家之奥都(津)城」となります。
「奥都(津)城(おくつき)」とは、上代の墓のことであり、神道式の墓もそう呼ばれています。「都(津)」は、万葉仮名で「~の」の意味となり、「都」は神官や氏子など、「津」は一般の信徒の墓に使われます。

また、神道では戒名ではなく霊名が用いられます。霊名は姓名の下に「之霊・命・命霊・霊位」などを付けます。

神道式と仏教式のお墓参りの違い

神道式と仏教式との大きな違いは、仏教ではお墓参りのときに華やかな生花をお供えしますが、神道ではお花ではなく、常緑樹で鮮やかな緑色の葉のついた「榊(さかき)」の枝をお供えすることです。
また、仏教では線香を焚き「焼香」をしますが、神道ではロウソクを灯し、「玉串(榊)」「神饌(しんせん)」という決まったお供え物を捧げます。

ただし、地域や霊園の慣例により仏教式との区別があいまいであったり、現代では先祖や故人の好きだったお花や食べ物をお供えしたりする場合もあるようです。

お墓参りの時期

仏教では、お盆にお墓参りをするというのが慣例ですが、神道でも、仏教の初盆や新盆である「新盆祭・新御霊祭(あらみたままつり)」にはお墓参りをします。
その他にも祥月命日(しょうつきめいにち:毎年巡ってくる命日)や年忌法要にあたる式年祭(しきねんさい)に合わせてお墓参りをするところは仏教と同様です。

お墓参りの服装

仏教など他の宗教と同様、葬儀のときには決まった服装がありますが、お墓参りの服装に特別なルールはありません。
ただし、露出は多すぎないようにし、色味の鮮やかすぎる服装や華美なアクセサリーは避け、落ち着いた色合い・デザインの服装にしましょう。

お墓参りの持ち物

神道のお墓参りにいく場合、以下が必要なものとして挙げられます。

  • 掃除するための道具(仏教式と同様)
  • 榊の枝
  • ロウソク、ライターなど
  • お供え物:神饌(酒・塩・水・米)

神道式のお墓参りの作法

神道式のお墓にお参りにいったときの作法を解説します。

1.お墓を清める

まず、お墓やお墓周りのお掃除をします。その方法は仏教式との違いはなく、墓石をていねいに拭き清め、お水をかけます。お墓周りを箒で掃き、雑草などを抜きます。

2.榊をお供えする

お墓を清めたら、榊をお供えします。通常のお墓参りでは、ただ榊の枝を台に置いたり飾ったりするだけですが、改まったお参りのときには「玉串」を捧げます。
玉串とは、榊の枝に紙垂(しで)と呼ばれる白い和紙をつけたものです。神道の葬儀や例祭、結婚式などの改まった儀式のときには、この玉串の奉奠(ほうてん:つつしんで供えること)が大切な役割を果たします。
神聖なものなので、両方の手で持ち、枝側を時計回りに祭壇に向けて捧げるのが基本です。

3.ロウソクを灯す

仏教式では線香を焚きますが、神道ではロウソクに火を灯します。火をつけるライターなども忘れず持参するようにしましょう。

4.お供え物をする

神道では、神饌(酒・米・塩・水)と呼ばれるお供え物をします。米を中心に置き、右に塩、左に水をお供えするのが基本です。

5.参拝をする

ロウソクを灯しお供えをしたら、お墓に向かい、「二礼二拍手一礼」という神道の基本的拝礼作法に従い参拝します。2回頭を下げ2回拍手したあと、最後に1回頭を下げます。この作法は、神社で行う参拝の仕方と同じです。静かな墓地や霊園で音をたてるのは気がひけるという方もいると思いますが、2回拍手するときは大きく音をたててください。
ただし、葬儀や五十日祭までの間は、音をたてないように「しのび手」という手を合わせただけの拍手をします。

まとめ

日本では少数派であるといえる神道のお墓参りの作法やお供えの仕方を、仏教の場合と比較して解説しました。
どの宗教でもお墓参りでは、ご先祖様や亡くなった方に思いをはせ、感謝するということが大切です。ただ、いざというときのために神道の作法なども心得ておきたいものです。


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