沖縄のお墓は、日本国内における一般的なお墓の形式とは違い、形が特長的で、独特の文化や風習を併せ持っています。初めて観光などで沖縄を訪れた人は、見慣れないお墓の形式や大きさに驚く方も多いのではないでしょうか。
ここでは、普段、あまり知る機会のない沖縄のお墓の文化や特長、歴史、お墓にまつわる課題などについてわかりやすく説明します。
沖縄のお墓は独特の特長がある
長方形の石を積み重ねた「和墓」という従来のお墓の形とは異なり、沖縄のお墓は、まるで小さな家のような印象を与えます。しっかりとした石の扉や屋根に囲まれた特長的で大きなお墓は、遺骨を収納する部分も広く、焼香台も置かれています。
沖縄の人々にとって、お墓はただ故人を埋葬するだけの場所ではなく、より故人を身近に感じ、供養するための場所なのです。
沖縄のお墓の歴史
沖縄で今のような形式のお墓が造られるようになったのは、16世紀以降です。
もっとも代表的な亀甲墓や破風墓と呼ばれるお墓を造ることは、王族や士族にしか許されておらず、一般庶民は森や洞窟の中に遺体を安置・埋葬する「風葬」が一般的でした。
廃藩置県が行われた明治時代に、やっと一般の人々がお墓を造ることが許されたのです。そのことから、沖縄は日本の中でも火葬の歴史が浅く、独特の風習が残ったと言えるでしょう。
特に琉球王国時代、聖地となっていた久高島においては、1960年代まで風葬が行われていたようです。
沖縄のお墓が大きい理由
沖縄のお墓で最大の特長とも言えるのが、その大きさです。屋根や扉もあり、小さな家のような印象を与えるお墓の大きさは、小型のもので5㎡、大型のものになると30㎡もあります。
では、なぜ沖縄のお墓はほかの地域のお墓に比べて大きいのでしょうか。
その理由の1つとして、風葬文化が起因していると考えられます。かつて沖縄で行われていた風葬は、石で覆われた部屋の中に遺体を安置し、骨になるのを待って遺族が骨壺に納骨するものでした。広い空間が必要だったことから、大きなお墓になったようです。
2つ目の理由が、父系親族全員の遺骨を埋葬する伝統的な門中墓の風習です。門中墓は、儒教の影響を受けているため「先祖を敬う」という意識が強く、必然的に多くの骨壺を納骨しなければなりません。
そのほかにも、故人を供養するための行事である「清明祭」という宴会がお墓の前で行われるため、親族や故人とゆかりのある人々が集まるスペースが必要なことも、お墓が大きく造られる理由と言えます。
沖縄のお墓の種類と特長
亀甲墓、破風墓、掘り込み墓
沖縄のお墓の種類でもっともポピュラーなのが、亀甲墓・破風墓・掘り込み墓です。
亀甲墓
太平洋戦争で防空壕としても使用された亀甲墓は、中国南部から17世紀に伝来したとされています。デザインは「女性の子宮」をイメージしたもので、屋根部分が亀の甲羅の形に似ていることから「亀甲墓」と呼ばれるようになりました。
傾斜地や丘を掘り込んで周囲を石垣の柵で囲み、お墓の入り口付近に棺を置くスペースを設けています。亀甲墓の前には清明祭が行われる広い前庭があるのが特長ですが、現在は生活様式の変化もあり、規模は控えめになっています。
破風墓
琉球王朝の王室だけが造ることを許されていた破風墓は、屋根部分が三角形になっているのが特長で、現在でも人気のあるデザインです。
屋根部分の側面につけられている山形の板を「破風」と呼び、雨や風の吹きこみを防ぐ役割を担っています。
このお墓が造られはじめた頃は、石を積み上げて造っていましたが、戦後以降はコンクリートを流し込む方法で造られています。
掘り込み墓
石や漆喰などで入り口を塞いだシンプルなデザインの掘り込み墓は、「フィンチャー」とも呼ばれ、仮のお墓として使われていました。この掘り込み墓は沖縄の島全体に分布しており、特に砂岩層に多く見られます。
沖縄のお墓にまつわる課題
美しい海に囲まれた沖縄のお墓は、海風による塩害対策や、墓主の高齢化による無縁仏の増加が大きな課題となっています。
本土のように御影石を使用して造られたお墓とは違い、コンクリートを使用して造る沖縄のお墓は、台風や塩害の影響を受けやすく、劣化による損傷が目立ってしまいます。
一度ひびが入ってしまったコンクリートは毎年修繕を繰り返さなければならなくなり、修繕費用がかさんでしまうのです。
また、風葬の文化があった沖縄は、山の中や人里から離れた所にお墓を造っていたため、若い世代に承継することが難しく、そのまま無縁仏となって放置されてしまうケースも増えています。
無縁仏の増加は、全国的に見ても大きな問題となっていますが、沖縄でも一族間で意見の食い違いなども多く、お墓の管理がさらに難しくなっているのが現状です。
まとめ
小さな家のようで、どこか温かみさえ感じる沖縄のお墓は、墓地特有の怖いというイメージがありません。それは沖縄の人々が、一族と共にそこに集い、先祖を身近に感じながら供養してきたからと言えるでしょう。
沖縄で余生を過ごしたい、沖縄にお墓を建てたいと考える方も多いかもしれません。沖縄のお墓や葬儀について、まずは話だけでも聞きたいという方はお気軽にお問い合わせください。
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