お墓の引越し=改葬、墓じまいなどと並んで最近のお墓事情を語る上で重要な言葉に「墓友(はかとも)」があります。
情報番組のほか、ドラマの題材で扱われたこともあります。また、女優・川島なお美さんのお葬式でも話題になりましたので「墓友」という言葉を耳にしたことがある方も少なくないでしょう。
今回はこの「墓友」についてご説明します。
墓友とは
「墓友」というのは読んで字のごとく、お墓の友だちです。
川島なお美さんの「墓友」のように、「同じお寺のお墓で眠る人との交流」を「墓友」ととらえることもあります。ある意味、お寺の檀家さん同士も広い意味での「墓友」といえるかもしれません。
また、同じお墓の中に入る人同士の交流も「墓友」といいます。お墓が縁になっているということでは、同じお寺の墓地の仲間と同じですが、より密度の濃い関係と言えるかもしれません。
昨今話題になっている「墓友」はどちらかというとこの「同じお墓の中に眠る人同士」の交流を指すことが多いようです。
そして今、お墓に関する相談の中でも上位を占めるのが「誰がお墓を継ぐの?」という問題です。
独身の人や子どもがいない人など「継承者がいない」という方もいますし、子どもがいても負担をかけたくないという方もいます。こうした「お墓の継承者問題」の解決策の一つとして、近年、注目を集めているのが、いわゆる永代供養墓です。
永代供養墓は形式などによって納骨堂や樹木葬と分類されることもありますが、いずれも永代供養サービスの付いたお墓です。
その永代供養墓が共通項となる、地縁や血縁に代わる支え合いのかたち。それが「墓友」です。
「一緒のお墓に入る」ことを前提としたお付き合いなど、生前にお墓を求める際に生まれる新しいコミュニティと言えるかもしれません。
永代供養墓とは
近年、お墓の広告などでも「永代供養墓」という言葉を目にすることが多くなりました。「永代供養墓」は、一般的には霊園や寺院が遺族に代わって供養・管理をしてくれるお墓という意味で使われています。
これまでのお墓は、家で代々受け継いでいくものでした。しかし核家族化や少子高齢化などで家族形態が変化したことや、「子どもがいない」「子どもに負担をかけたくない」という人が増えたことから、後を継いでくれる人がいなくても購入できるお墓が望まれるようになりました。
永代供養墓であれば後継ぎがいない人でも契約でき、永続的に供養と管理が受けられます。そのため「自分の死後は誰が供養してくれるのだろう」と心配する必要はありません。また、遺骨の有無に関係なく生前に申し込みができるという特長もあります。
どんな人が墓友になるの?
墓友になる人というのは、圧倒的に女性同士が多いそうです。
すでに友人同士だった方々で、一緒にお墓を探すということもありますし、墓地を運営している団体が企画する会などで知り合って、墓友になるというケースもあるようです。初めは知らない人同士でも、墓地の運営団体が主催するさまざまなイベントへの参加を通じて、交流が深まっていくというわけです。
またお互いが支えあうということで、例えばお墓が縁でつながった仲間同士が、万一の時にはお葬式などの施主にもなるし、合同慰霊祭などで先にお墓に入った友たちを供養したり、死後も友だち同士で助け合うということもあります。
このほか、高齢者施設などで、入居者のためにお墓を用意するといったケースもあります。施設のお墓については、故人の遺骨を埋葬することができるということだけでなく、先に逝った方を葬り、また年に何回か合同慰霊祭などを行うことで、施設に暮らす入居者にとっても「将来、自分も供養してもらえる」という安心感につながると言われています。
舞台になった墓友
2014年には紀伊國屋ホール(東京都新宿区)において劇団俳優座創立70 周年記念公演『七人の墓友』が上演されました。
「新しい墓の在り方を模索するお墓仲間=墓友」を切り口に、お墓の後継者問題、孤独死など、とかく深刻になりがちなテーマを社会派コメディーとして明るく、軽やかに描き切った作品です。
この舞台の演出を手掛けた佐藤徹也氏は、「お墓は現代の縮図」と言います。
日本では、『お墓は長男が継ぐもの』とか『先祖代々のお墓を守っていく』という概念がどんどん薄まりつつあり、これまでの常識にしばられない新しい形態のお墓がたくさん登場しています。もはや何でもありという状況はまさしく現代の縮図であり、『墓友』というテーマを通じて、今の日本そのものを語ることにつながるのではないか
鎌倉新書「月刊 仏事」インタビューより
「お参りしてくれる人がいない」「お墓を継ぐ人がいない」という厳しい現実を突き抜けた先に「ものすごく前向きな今がある」と佐藤氏は語っています。