色とりどりのもみじで有名な高台寺(京都市東山区)は、豊臣秀吉の正室・北政所(ねね)が秀吉の菩提を弔うために建立した臨済宗建仁寺派の寺院です。この記事では、高台寺の歴史と見どころを紹介します。
北政所の想いが込められた寺院・高台寺
高台寺は豊臣秀吉の正室・北政所(ねね)が秀吉の菩提を弔うために建立した寺院としてよく知られています。戦国時代の武将・豊臣秀吉と北政所は、当時では珍しく恋愛によって結ばれた夫婦でした。高台寺の名は北政所が出家後に名乗った「高台院湖月尼」に由来しています。
高台寺の歴史
高台寺は北政所が秀吉の菩提を弔うため、徳川家康の財政支援を得て1606年(慶長11年)に建立したお寺で、正式名称は高台寿聖禅寺です。開山は曹洞宗の弓箴善彊でしたが、1624年(寛永元年)の中興開山で臨済宗建仁寺の三江紹益を招いたのを機に臨済宗のお寺となりました。
秀吉が最期を迎えた伏見城から方丈、茶室、化粧御殿が移築され、建立当時は豪華絢爛で壮観な寺院だったと伝えられています。その後、火災に何度か見舞われ仏殿や方丈は消失してしまいましたが、秀吉や北政所を祀る霊屋(おたまや)、三江紹益を祀る開山堂や、千利休が設計した傘亭(からかさてい)、時雨亭(しぐれてい)の茶屋などは当時のまま残されており、重要文化財に指定されています。
高台寺の魅力
北政所の想いが込められた高台寺には見どころが数多くあります。その中で特におすすめの場所を挙げてみましょう。
美しいライトアップ
通常の拝観時間は17:30までですが、夜間特別拝観の期間は22:00まで繰り下げられ、庭園や建物のライトアップを楽しむことができます。時折行われる歴史的建立物を使ったプロジェクションマッピングでは、幻想的な光景を堪能できます。
秀吉も愛した茶会
茶道をこよなく愛した秀吉にちなんで、高台寺では茶会が定期的に開かれています。新緑を楽しむ「新緑茶会」、夏の夕暮れに集う「浴衣の茶会」、夜が長い冬にろうそくの灯りの下で行われる夜咄(よばなし)を楽しむ「夜咄茶会」など、1年間で8つの茶会があります。高台寺では茶会のスタンプラリーを実施しており、8つ全ての茶会のスタンプを集めると、茶会に招待してもらうことができます。
桃山美術の傑作「高台寺蒔絵」
北政所が眠る高台寺の霊屋には「高台寺蒔絵(まきえ)」と呼ばれる蒔絵が残っています。蒔絵とは、漆器の表面に漆で絵や文字、文様などを描き、その漆が乾かないうちに金粉や銀粉を蒔きつける漆工芸です。筆記用具や家具小物の装飾として平安時代中期以降に盛んになり、桃山時代には建造物でも使われるようになりました。秀吉と北政所が祀られている霊屋(たまや)の須弥壇(しゅみだん)や厨子(ずし)、霊屋に収められている箪笥(たんす)などの調度類には、桃山時代に流行した細密で優美な技法が施されており「高台寺蒔絵」と呼ばれています。
北政所の終焉の地・圓徳院
高台寺の塔頭(たっちゅう)の一つ、圓徳院は北政所が晩年の19年間を過ごした地とされています。秀吉と北政所が暮らした伏見城の化粧御殿と前庭が移築され、北政所を慕う大名や茶人、歌人、陶芸家など文化人が多く訪れたと言われています。化粧御殿は後に焼失しましたが、庭園は当時のものが残されており、北政所も眺めたであろう美しい景色を今でも楽しむことができます。
座禅や茶道の体験
高台寺では予約制のコースで座禅や茶道を体験できます。基本から教わることができるため、初心者でも安心です。歴史ある座禅や茶道に高台寺で入門してみてはいかがでしょうか。
高台寺周辺のおすすめスポット
高台寺の周辺にも魅力的なスポットがあります。足を伸ばしてみると新しい発見があるかもしれません。
ねねの道
高台寺と圓徳院の間を京都東山の円山公園から清水寺方面へ抜ける石畳の道は「ねねの道」と呼ばれています。ねねの道から高台寺の境内に続く石段は「台所坂」と呼ばれ、北政所が秀吉の菩提を弔うために行き来した道と伝えられています。この道をたどれば当時の北政所の想いを感じることができるかもしれません。
京料理を楽しめるお食事処 京都高台寺「羽柴」
ねねの道の中程、圓徳院の敷地内にあるお食事処、京都高台寺「羽柴」では京料理を手軽に楽しむことができます。自家製の京生ゆばをふんだんに盛り込んだ「京ゆば膳」、北政所の優しさをイメージした「はんなり膳」(要予約)、秀吉が考案したと伝わる「陣中弁当」(要予約)などを、観光名所の八坂の塔を眺めながら楽しむことができます。
「御朱印」は3種類
御朱印を集めるのも寺院めぐりの楽しみの一つです。高台寺の御朱印は3種類で、拝観入口の受付、天満宮の売店、利生堂の3か所で受け付けています。
拝観料について
高台寺の拝観料は大人600円、中高生250円となっています。圓徳院と合わせた共通割引拝観券は900円で、両方訪れる場合にはこちらがおすすめです。高台寺境内の駐車場は1時間600円ですが、拝観の際は1時間の無料券が発行されます。
《墓所案内》鷲峰山 高台寺
1606年(慶長11年)に建立され豊臣秀吉の正室・北政所が晩年を過ごした高台寺の庭園墓地です。北政所が眠る霊屋の北に広がる静寂に包まれた苑内は、管理も隅々まで行き届いており駐車場も完備されています。1区画90cm×90cmで、永代使用料が150万円です。JR京都駅から市バス206号系統(東山通方面行き)に乗車し、「東山安井」停留所で下車すれば徒歩約5分の場所にあります。京阪本線の祇園四条駅からは徒歩10分、JR京都駅からはタクシーで約15分です。
《墓所案内》両足院
両足院は高台寺と同じ臨済宗建仁寺派の寺院で、京都府名勝庭園の書院前庭、白砂と苔に青松が美しい唐門前庭、高台寺の茶室を移築した臨池亭など、美しい茶室や庭園で知られています。永代使用料は150万円からです。JR京都駅から市バス206号系統(東山通方面行き)で「東山安井」停留所下車で徒歩3分です。京阪本線の祇園四条駅からは徒歩7分、阪急京都線の河原町駅から徒歩10分、JR京都駅からタクシーで約15分の場所にあります。
まとめ
高台寺は京都市発表「京都観光調査」でも例年上位に挙がる人気スポットですが、境内は落ち着いた空気に包まれています。豊臣家の最期を見届けた北政所の想いが込められた美しい庭園や霊屋を巡ってみてはいかがでしょうか。