涅槃像に添い寝する人、食事を作る近所の人々、身寄りのない高齢者も生活する開放されたお寺。
とても元気で明るい住職は、カンボジア7万人の僧侶のうち3番目の地位という高僧でした。
地域の人々に開放されたお寺
カンボジアのプノンペン国際空港から北東へ車で小一時間ほどに、地域の人々に愛されるワット・ソムラオン アンデットというお寺があります。
小高い丘から境内へ。20mほどの涅槃像が横たわっているのですが、その真横で人が添い寝しているのです。お弁当やジュースも持ってきて、毎日ここで休憩しているようです。とても気持ちよさそうでした。
その先にはお釈迦の誕生を表したスペースがあり、そこでは高齢の女性がお線香を整えてます。「私には家族がいないから、住職にお願いして死ぬまでここで生活させてもらってるの。お寺の掃除をして、若い人にお釈迦様のお話しもするのよ」と、こうした身寄りがない高齢者が26人も住んでいるとのことでした。
ドン!ドン!と響く太鼓はお昼ご飯の合図です。そこには100人以上が座れる食卓がセットされていて、たくさんのご近所の人々が食事の準備をしてました。そして僧侶もご近所さんもみんなで昼食を食べ始めるのです。地域の人々を大切にして、気軽に人々が集まる理想的なお寺の風景でした。
週末は二万人が訪れる魔法の祈祷
さて、このお寺は祈祷がとても有名でその効果は“魔法”とまで言われているのです。
この日もその祈祷を受けに多くの人が訪れていました。本堂の手前では、僧侶が大きな水がめから水を汲んで、腰を下ろした人の頭からザバザバと水をかけてます。何度も何度も水をかけられて、洋服までずぶぬれになりながらも、その方はありがたく手を合わせているのです。
この祈祷を受けに、金土日の週末の三日間だけで2万人の人々が訪れることもあるのです。この日は平日だったので20人程でしたが、週末は一度に200人の方々に聖水をかけるそうです。
カンボジアで三番目の高僧
こうして人々が集い、魔法の祈祷を生み出したのはどんな住職なのか、とても興味が沸きます。この日は本堂で住職の読経があるというので参列してみました。読経が始まりしばらくすると、住職は参列者に向かって歩き出し、一人一人に大きな声で話しかけます。
「結婚するの?!お互いずっと好きだね?!私の顔を見て誓いなさい!」
「子供が欲しいの?!毎朝のこの花を頭に乗せて祈りなさい!」
「ビジネスを成功させたいならスマホを祈祷しよう!それで電話すれば取引は直ぐにOK!」
と、とにかく元気に、時には笑い声をあげながら話しかけているのです。
そして私を見ると「日本人?嬉しいね!日本語も英語も話せないけど、ニコニコで伝わるよね?」と、楽しそうに話をしてくれました。
「ここは40年前は何もなかったんだよ。私がこのお寺を建てて、その後は、アメリカ、オーストララリア、フランス、スリランカにお寺を建てる指導をしてきたんだ」
住職は、人々が集まる布教のやり方、お寺を建てるための資金集めのノウハウがあり、それを各国で指導しているのです。ここでの近所の人々が集う様子を見ていると納得できます。
そして、住職のこの実績と人柄は国内でも大きく評価されています。
「このメダル分かる?これ以上の位は無いんだよ。カンボジアには7万人のお坊さんがいるけど、私は3番目の位。また来てね。今度は一緒にご飯を食べよう!」