和宗総本山「四天王寺」は今から1400年以上前に聖徳太子が建立した日本最古の本格的な仏教寺院の一つとされており、創建の経緯が「日本書紀」にも記されています。
今回は、そんな四天王寺の歴史や、伽藍などの見どころを紹介するとともに、寺院墓地の情報もお伝えしたいと思います。
四天王寺の歴史
大阪市天王寺区にある「四天王寺」は、山号を荒陵山といい、本尊は救世観音菩薩で、「金光明四天王大護国寺」とも呼ばれます。今から1400年以上前の593年(推古天皇元年)に建立され、奈良の飛鳥寺とともに日本最古の本格的な仏教寺院とされています。
四天王寺建立のいきさつは、日本最古の正史書「日本書紀」で次のように伝えられています。
その後、戦火や災害に何度も遭い、四天王寺はそのたびに建物の大半が焼失しました。
戦国時代の1576年(天正4年)には石山本願寺攻めの兵火で焼失し、間もなく豊臣秀吉が再建したものも1614年(慶長19年)の大坂冬の陣で焼け落ちました。近代でも1934年(昭和9年)の室戸台風で倒壊し、太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)には大阪大空襲でも焼失するなど数々の難苦に遭っています。現在の伽藍は1963年(昭和38年)に完成したもので、鉄筋コンクリート造で飛鳥時代当時の様式を忠実に再現しています。
「和宗」の総本山
四天王寺創建当時の日本の仏教には宗派という概念はありませんでした。創建後、聖徳太子を崇拝していた最澄の天台宗と縁を深め、四天王寺も長らく天台宗に属していましたが、戦後の1946年(昭和21年)に建立当時の精神に立ち返り天台宗から独立、聖徳太子の十七条憲法第一条「和を以て貴しと為す」をとって「和宗」としました。
そして四天王寺では、創建当初からの「四箇院(しかいん)の制」の精神を今に伝えています。
四箇院とは、敬田院、施薬院、療病院、悲田院の4つの施設のことで、聖徳太子は仏教の根本である「慈悲」を実践する場として、四天王寺にこの四箇院を作りました。
敬田院は寺院そのものであり、施薬院は薬と食の養生を行う場所(現代でいう薬局)、療病院は病気を治す場所(現代でいう病院)、悲田院は病者や身寄りのない老人など弱者を助けるための社会福祉施設にあたります。
四天王寺では今でも聖徳太子の精神を受け継ぎ、系列の福祉事業団で老人ホームや病院などの事業を行っています。
四天王寺の伽藍
四天王寺の伽藍の配置は南から北へ中門、五重塔、金堂、講堂が一直線に並び、それを回廊が囲む形となっています。当時の大陸の影響を受けたこの様式は「四天王寺式伽藍配置」とよばれ、日本最古の建築様式の一つです。
中心伽藍の北側には重要文化財の「六時礼讃堂」があり、昼夜6回にわたり礼讃を行うところから「六時堂」の名があります。
宝物館に安置されている国宝の「四天王寺縁起」は、聖徳太子の自筆と伝えられていましたが、現在では平安時代中期の書写とする見方が通説となっています。
また、境内北東部の「極楽浄土の庭」は桜の名所として有名です。
四天王寺の見どころ
四天王寺は華やかな行事が多いのも魅力です。代表的なものをいくつかご紹介します。
修正会結願(どやどや)
元旦から始まる修正会(しゅしょうえ)の結願日1月14日に日本三大奇祭のひとつ「どやどや」が行われます。
ふんどしに鉢巻き姿の男性が紅白の組に分かれお札を奪い合う迫力満点のお祭りで、現在は近隣の高校の男子生徒が参加しています。
聖霊会舞楽大法要
毎年4月22日の聖徳太子の命日に行われる大規模な舞楽法要です。石舞台で披露される天王寺舞楽は重要無形民俗文化財に指定されています。
万灯供養
お盆の先祖供養として行われます。約1万本のろうそくに火が灯され、般若心経に合わせて僧侶が練り歩く印象的な催しです。
七夕のゆうべ
毎年7月に3日間開催される七夕祭りです。「星空観望会」「ふれあいコンサート」など毎年多くのイベントがあります。
天王寺駅からの参道は毎月21日の大師会と22日の太子会、春と秋の彼岸会には特に賑わいます。骨董品や古書などの露店も多く、骨董市としても人気です。
御朱印・拝観料・アクセス
御朱印は、納経所と庚申堂で受けることができます。四天王寺では、以下のような数多くの巡礼の御朱印を取り扱っています。
- 西国33ヶ所観音霊場(救世観世音菩薩)
- 新西国33ヶ所観音霊場 第1番(救世観世音菩薩)
- 近畿36不動尊霊場 第1番(亀井不動尊)
- おおさか13仏霊場 第4番(普賢菩薩)
- 聖徳太子御遺跡霊場 第1番(太子二才像)
- 法然上人25霊場 第6番(円光大師)
- 四国88ヶ所霊場(弘法大師)
- 河内飛鳥古寺霊場 第1番(救世観世音菩薩)
- 摂津国88ヶ所霊場 第25番(如意輪観音)
- 摂津国33ヶ所霊場 第33番(救世観世音菩薩)
- 西山国師16霊場(円光大師)
- 大阪七福神めぐり 第1番(布袋尊)
- 西国薬師霊場 第16番(薬師如来)
- なにわ七幸めぐり(聖徳太子)
- 神仏霊場会 大阪2番(救世観世音菩薩)
また、お寺の名の由来になった四天王が彫られたお守りが六時堂などで授与されています。
拝観料は中心伽藍が大人300円、極楽浄土の庭が大人300円、宝物館が大人500円で、境内やその他のお堂は無料です。門は常に開けられており、お堂の外側は1日24時間のうちいつでも参拝することができます。
アクセスはJR「天王寺駅」から徒歩12分、大阪市谷町線「四天王寺前夕陽ヶ丘駅」から徒歩5分です。
ちなみに、四天王寺周辺の区名や駅名などに使われている「天王寺」は四天王寺の略称からきています。
《墓所案内》和宗総本山 四天王寺
和宗総本山「四天王寺」の敷地内には霊苑、納骨総祭塔(合祀墓)、永代祠堂という墓所があります。どの墓所も宗派は問われませんが、法要はすべて四天王寺の僧侶にて勤める形となります。
《墓所案内》四天王寺 高安山霊園 (奈良県生駒郡三郷町)
大阪と奈良の間の生駒~信貴山系の麓、金剛生駒紀泉国定公園の中にある、和宗総本山「四天王寺」が事業主体となっている霊園です。自然環境に恵まれた苑内はバリアフリー仕様となっています。
JR「天王寺駅」から近鉄線、ケーブルカー、バスで約30分(乗り換え時間含まず)、日曜祝日は天王寺駅から無料バスが運行しています。車で大阪方面から向かう場合は、阪神高速東大阪線 – 第二阪奈有料道路(壱分出口) – 国道168号線 – 東山 – フラワーロード – 信貴生駒スカイラインという道のりです。駐車場も完備されています。
《墓所案内》四天王寺 大和別院 (奈良県奈良市)
四天王寺 大和別院は、1952年(昭和27年)に創建された四天王寺の別院です。
豊かな自然に囲また広大な霊園で、坂を登ったところにありますが、苑内はすべてバリアフリー仕様となっています。近鉄奈良線「富雄駅」から徒歩10分で向かうことができます。日曜祝日と彼岸、お盆は富雄駅からの無料バスが運行されており、駐車場も完備されています。
まとめ
聖徳太子ゆかりの和宗総本山「四天王寺」、1400年も昔から人々に親しまれてきたこの寺院は、仏教の慈悲の精神を今に伝え、華やかな行事と縁日で人を惹きつける魅力ある場所となっています。ぜひ一度訪れて、広い境内をゆっくり散策してみてはいかがでしょうか。