キリスト教は、世界で最も多くの人が信仰する宗教です。ブリタニカ国際年鑑2016年版によれば、2015年時点の信者数は約24億人で、約17億人を数える2位のイスラム教とも7億人の差があります。しかし、日本では仏教や神道の信仰が多く、キリスト教式の葬儀に出席したりお墓参りをしたりという経験がない方も多いのではないでしょうか。
キリスト教のお墓は日本で多い仏教式のお墓と異なる点があります。この記事では、建てる前に知っておきたいキリスト教のお墓の特徴やお墓参りの方法などについて詳しく紹介します。キリスト教の墓地やお墓を探している方は必見です。
キリスト教のお墓の特徴
キリスト教では、死者は最後の審判の日に肉体に戻り復活するという思想に基づき「土葬」を行うのが本来の姿ですが、日本では多くの自治体で土葬が禁じられているため火葬を行います。
世界的にも火葬が増えてきたこともあり、カトリックでも2016年にローマ法王が火葬を認める指針を明らかにし、遺灰を教会の管轄地に収めるよう指示しています。その場合キリスト教では、亡くなった人は天に召されると考えるため、かならずしもお墓は必要ではなく、納骨堂に遺骨を納めるスタイルも普及しています。
お墓を設ける場合でも、先祖代々をまつる仏教とは違い1人で1つの墓が基本となります。
キリスト教にもカトリック、プロテスタント、聖公会、正教会など多くの流れがあり、どのグループでも墓石の素材やデザインに制約はありませんが、十字架が刻まれるのが一般的です。墓石は仏教のものと比べ石の高さが低めで「オルガン型」「プレート型」などと呼ばれます。
墓石に刻む文字にも特徴があります。日本の仏教では墓碑の正面に「〇〇家代々墓」など家(いえ)の名前を刻むことが大半ですが、キリスト教では故人の名前や洗礼名のほか、聖書の一節、賛美歌などが刻まれます。
線香を供える習慣がないので香炉はありません。その代わりに、ろうそくを立てる場所を設けます。
キリスト教と仏教のお墓はどう違う?
まず、仏教とキリスト教では死後の世界についての考え方が異なります。日本の仏教では先祖を「仏」として崇拝し、お墓は「肉体の魂が眠る場所」で、自宅の仏壇の位牌が「精神の魂が眠る場所」だと考えています。このため、彼岸やお盆など決められた日にお墓参りや法要を行い、先祖代々のお墓を継承して守ってゆく慣習が根付いています。
一方、キリスト教では、死は新たな人生の始まりであり、死後の魂は地上に留まることなく「天国に召される」「神の元へ凱旋する」と考えます。
ですから、お墓は故人の魂が眠る場所ではなく、あくまで故人に思いを馳せるための「記念碑」という意味合いになります。また、先祖を「仏」として崇拝する思想もありませんので、お墓で供養を行うという感覚はありません。もちろんキリスト教でも故人を偲ぶ追悼式や集会は行いますが、それらの催しは教会などお墓以外の場所でも行われます。
キリスト教のお墓を建てる場所は?
お墓を建てる時には、まず場所の確保が不可欠です。仏教寺院にキリスト教式のお墓を建てるわけにはいきませんので、生前の所属教会の墓地、公営の霊園、宗教を問わず利用できる民間の霊園が候補となります。
カトリック系や聖公会では生前の所属教会が所有する墓地に建てるケースが多く、プロテスタント系各派は統括団体の日本基督教団が管理する墓地を利用するのが一般的です。教会の墓地に埋葬を希望する場合は、その教会で洗礼を受け信者になる必要があります。
キリスト教の納骨
仏教の場合には四十九日の法要を終えて納骨するのが一般的ですが、カトリックの場合、7日目に行われる追悼ミサの翌日かその1か月後、プロテスタント各派では1か月後の召天記念日に納骨します。
火葬が終わり納骨を迎えるまでは、自宅や教会で遺骨・遺灰を保管し、祈りを捧げます。
納骨式では、聖書朗読、説教、賛美歌合唱が行われ、最後に全員で祈りを捧げます。
その後は、カトリックや聖公会などでは神に召されたすべての人へ祈りを捧げる日として11月に礼拝を行うことが多く、プロテスタント各派では亡くなってから5年目までの召天記念日に墓前で記念会を開く場合が多いようです。
キリスト教のお墓参りの方法
キリスト教のしきたりでは、仏教ほどお墓参りを重視しておらず、お彼岸やお盆のように一斉にお参りする習慣はありません。
お墓参りは故人の命日などに行うことが多いですが、その場合も仏教のように「仏である故人」を拝むのではなく、故人とともに「神」に祈ります。焼香やお供え物の習慣もなく、白い花を墓石に添え、ろうそくに火を灯し祈りを捧げます。花は小菊やユリ、カーネーションが多く使われます。十字の切り方や祈りの手順は宗派により異なります。
まとめ
キリスト教の葬儀やお墓は仏教とは異なった独自のスタイルがあります。また、お墓を建てられる場所も全国に多数の寺院がある仏教系に比べると数が限られます。
どんなお墓をどこに建てたらよいか分からない、埋葬やお墓にかかる費用が不安だ、お墓を建てるにあたって必要な手続きが分からないなど、キリスト教式のお墓や墓地についてのお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。