臨済宗に善の思想を取り入れた一休禅師(一休さん)、その一休禅師が晩年を過ごした臨済宗大徳寺派の禅寺「酬恩庵 一休寺(しゅうおんあん いっきゅうじ)」には、豊かな自然があり、どこか人の心を落ち着けてくれます。
ここでは、一休さんでおなじみの「酬恩庵 一休寺」をご紹介します。
「酬恩庵 一休寺」のはじまり
一休寺は、鎌倉時代に臨済宗の高僧である大應国師が中国から禅を学び、お寺を建立したのがはじまりです。
もともとは戦火の影響を受けて復興もままならずにいたものを、宗祖である大應国師を慕っていた一休禅師(一休宗純、一休さんのモデルとなった人)という室町時代の臨済宗の禅僧が、長い年月をかけて修復をしお堂を再興、師恩にむくいる意味で「酬恩庵」と名付けました。そして、その一休禅師がこのお寺で晩年を過ごしたことから「一休寺」という通称が広まりました。
一休禅師は文明13年(1481年)に亡くなられ、その遺骨は一休寺に葬られました。いまでも山道を右に折れた場所に一休禅師の墓所があり、宮内庁が御陵墓として管理をしています。
能楽と教養を兼ね備えた一休禅師
毎年9月、中秋の時期に「一休寺薪能(いっきゅうじたきぎのう)」が行われています。能の名人と言われた金春禅竹や音阿弥も一休禅師から禅の教えを受けていたことから、禅の思想と能は深い関係があります。
「薪能」という名前は、この場所が「薪村」という名前の村だったことに由来していると言われています。
また、茶室「虎丘庵」は京都東山の麓にあったものを一休禅師が移築したものです。草庵造りの静寂穏雅な建物で、屋根は檜皮葺きと当時の文化交流会館のような建物であったとされ、一休禅師の嗜んだ能楽を垣間見ることができます。
他にも一休寺フォトコンテスト、毎年8月15日〜16日に極彩色で描かれた「観音三十三身図」の掛け軸を方丈に掲げる観音三十三身図公開など、美術や芸能にまつわる年中行事があります。
禅宗の「食べる修行」を体験できる
禅宗では食べることも修行の一つと考えられ、その食事を「精進料理」と呼びます。
精進とは仏教用語で「美食を戒めて粗食をし、精神修養をする」という意味です。仏教では「不殺生戒」を第一としているため、肉や魚を全く使わない「修行としての料理」として精進料理が出されます。
一休寺ではこうした禅宗の修行の一環である精進料理を食すことができます。特に一汁九菜善は、湯葉や菜の花、蕗(ふき)のとうなど、「おかげさま」の心で日常に感謝する精神を育てるという考えのもと作られています。
これらの精進料理は訪問される2日前までの予約が可能です。
また、一休寺の中にある和カフェで提供されている「善哉(ぜんざい)」は、もともと仏教用語からきており、小豆汁があまりに美味しかったために思わず「善き哉この汁」と言った一休禅師のエピソードに由来しています。ふっくらとした小豆に加え香ばしく焼き上げたお餅もついており、和菓子が好きな方に人気があります。
名品「一休寺納豆」
一休寺のお土産として「一休寺納豆」が有名です。
「一休寺納豆」は一休禅師が作り上げたとされるもので、肉や魚を食べない僧侶にとっては長期間保存できるタンパク源として重宝されていました。そして、その製法は現代まで受け継がれています。
江戸時代初期から続く「方丈庭園」
方丈庭園は、江戸時代初期に松花堂昭乗や石川丈山らの合作だと伝えられていて、江戸時代初期の代表的な庭として国の名所にも指定されています。
方丈庭園は南、北、東、と3つの違った風景を持つ庭から構成され、互いの絶妙な関係性が四季折々の風情を醸し出しています。特に南庭は最も広く、方丈の正面に広がっており、サツキやサザンカ、ソテツなどが植えられ、軒下まで白石が敷き詰められています。
現在の一休寺も、変わらず綺麗で風情のある庭や自然に囲まれており、春には桜、秋には紅葉を見に多くの人が訪れ、その景色を楽しんでいます。
一休寺の拝観案内 (アクセス・拝観料)
一休寺は、JR京田辺駅から徒歩15分、タクシーなら5分ほどの場所にあります。駐車場もあるため、車で行くことも可能です(駐車料金は、普通車は300円、中型・小型バスは500円、大型バスは800円)。
境内には階段など足元が悪い場所があるので歩きやすい靴での拝観をおすすめします。また、ペットと一緒の拝観はできません。
拝観料は中学生以上の大人500円、子供250円で、拝観時間は午前9時から午後5時までですが、宝物殿のみ午前9時半から午後16時半までとなっています。
拝観の際は、「酬恩」と書かれている御朱印や「善哉」と書かれた御朱印をもらうことができます。
《墓所案内》一休寺
「酬恩庵 一休寺」の中には一休寺霊苑という寺院墓地があります。
一休寺の歴史ある庭園から近く、風情あふれる雰囲気が漂っています。緑も多く四季折々の姿を見せるこの墓地には一般区画と永代供養塔があり、一休寺の檀徒となることで利用できます。
永代供養塔は、33回忌まで骨壷に安置し、供養後に合葬するため、ずっと供養することができない方でも安心して利用できます。
まとめ
「酬恩庵 一休寺」には、一休禅師が禅から学んだことが詰まっており、芸能や教養に深い一面があります。また、歴史と風情にあふれる一休寺を散策してみると趣深さを感じられます。京都を訪れる際には一度足を運んでみてはいかがでしょうか。