日本に留学していた僧侶が建立した永厳寺。“平和の鐘”は日本との友好を後世に残しています。
そこではご親切な一族と出会い、法要と会食にまで参加させていただきました。
ベトナムの信仰の中心
ベトナムの経済の中心ホーチミン。国際空港から市街中心部に向かう途中に、ベトナム南部で最も広い敷地を誇る永厳寺、ベトナム語ではチュア ヴィンギエムがあります。
永厳寺は前回ご紹介した覚林寺と並んでホーチミン二大寺院の一つ、同じく教科書でも紹介されている由緒正しき寺院です。
ここはベトナムを訪れる世界中の観光客から最も人気があるお寺であり、更にホーチミン市民の信仰の中心です。ベトナムではお正月を旧暦で祝うのですが、初詣に行く習慣は日本と同じです。
旧正月には多くの方がこの永厳寺を訪れ、ここは人々で埋め尽くされ、お祭り騒ぎの状態になるということでした。日本で言えは成田山のようなお寺なのでしょう。
煌びやかな本堂の中心には黄金の仏像が鎮座していて、この本尊こそがこのお寺の象徴です。午前と午後の一日二回、ご本尊を前に僧侶と信者、合わせて50名ほどが読経をあげるのです。近所の人だけでなく、遠方から週に何度も通う方もいるとのことでした。
日本との深い繋がり、平和の鐘
このお寺は日本との繋がりがとても深いことで知られています。建立者である僧侶は、日本に留学した後に、ベトナムの北から南まで仏教を広め、11971年にここを開いたのです。
更には本堂の近くには大きな釣鐘の鐘つき堂があり、“平和の鐘”と名付けられています。これは日本の曹洞宗寺院から寄贈されたものです。そこには日本語で「日本とベトナムの友好と平和」が刻印されていて、その絆を後世に伝えています。
ベトナムの法要と精進料理
本堂の写真を撮っていると三人の女性が寄ってきました。皆さん法衣を着ているのですっかり尼僧さんかと思ったのですが、これは“アオチャン”という在家の方が参拝する時の正装でした。
同行してくれていた20才の大学生も「私だって持ってますよ。ちゃんとしたお参りの時はみんなアオチャン着ますから」とベトナムの人々の信仰心の深さを話してくれました。
ご婦人たちはこれから法要があるそうです。
「カメラ好きなの?これから法要で親戚一同が集まるから集合写真撮ってくれる?」
この日は先月亡くなった祖父の四十九日の法要でした。おや?と思ったのが、法要中の僧侶の前机には既に食事が出されていて、会場の脇の別テーブルでは30人程の僧侶が既に食べ始めているのです。読経と会食が同時に進行するのは日本では見慣れない光景です。
この食事はこのご家族が用意したもので、僧侶はこれを法要中に目の前で食べて差し上げることが丁寧なご供養ということでした。
法要は三十分程度で終了。ご婦人たちから「せっかくだから一緒に食事しましょうよ」と、敷地内にある精進料理のレストランに誘っていただきました。
小さい子からお年寄りまで40人ほどが集まっています。テーブルを囲んでご先祖を偲んだり、それぞれの近況を話したり、雰囲気は日本の法要と変わりません。
精進料理は、もち米や素麺を使った主食がボリュームがあり、カレー風味の煮物やチャーハンも日本人に合う美味しさで大満足です。
こんなに親切にしていただき、改めてベトナムと日本の友好に感謝。これからも益々この絆が深まるようにと願えるお寺でした。