ベトナムの教科書にも載るほどの格式、二大仏教寺院の一つ、覚林寺。そこでは、悲しい生い立ちを背負い、お寺で楽しく暮らす6才と9才の小僧さんと出会いました。
(画像は、華やかな色合いの覚林寺山門)
教科書にも載っている名刹
ベトナムの経済都市ホーチミン、チョロン地区は下町情緒あふれるベトナム最大の中華街です。そこに1744年に建立された覚林寺があります。そのまま読むと「かくりんじ」、ベトナム語では「チュア ヤックラム」と言います。
覚林寺はホーチミンで最も古く建てられ、中心部の永厳寺と並び、二大仏教寺院という地位を築いています。学校の教科書にも載っているほどですから、相当な格式なのでしょう。
山門をくぐると覚林寺のシンボル、高さ32メートルを誇る、六角形の七重塔がそびえ立ちます。
各階はワンフロア、縦横10mほどの広いスペースの中央に仏像が鎮座しています。
四階には18本の手を持つ准胝(じゅんてい)観音、元の姿はインドの女神ドゥルガーとされ、その美しさとは裏腹に、神々の武器を操る戦いの女神です。五階には大きなお腹の布袋様、ベトナムでは商売繁盛のご利益で知られています。
美術館さながらの本堂
ここは敷地が広く、山門から一番奥の本堂までかなり歩きます。その途中には真っ白な仏像、これは龍に乗って人々を救う観音様です。そして同じく真っ白な大仏が木々の間で座禅を組んでいます。
墓地もあり、そこには日本では見かけない2mから3mもある大きな墓石が建っていました。
本堂は薄暗く、ひんやりとした空気がとても厳かです。広い空間には、幾つもの仏殿、たくさんの仏像や儒教の偉人の像も並んでいました。他にも美術館さながらの調度品の数々。400年前の大理石のイス、200年前に造られた一本木のテーブル、歴代の住職の肖像画などが目を楽しませてくれます。
捨て子だった小僧さんたち
本堂では6人ほどのお坊さんが昼食中、ゴーンと大きな鐘が鳴りお経が始まりました。唱えているのは何とまだ小さい小僧さん。髪を中心だけ残し、廻りをツルツルに剃っている髪型に特徴があります。
お寺の職員さんに聞くと、この小僧さんはまだ6才。そして捨て子だったそうです。
ベトナムでは貧しくて子供を育てられないという理由で、お寺に子供を置いていってしまうという悲しい別れが今でもあるのです。この子も物心つく前からこのお寺で育っているとのことでした。
ここには他にも捨て子だった3才から15才の小僧さんが6人もいて、一緒に生活をしながら仏教を学んでいるのです。
もう一人いた9才の小僧さんと一緒にお話しを聞いてみました。お寺の決まりで知らない人とは話してはいけないそうですが、職員さんが「照れ屋で人見知りですがどうぞ」と配慮してくれました。
何才ですか?お経は難しくない?どんなことを考えてお経を唱えてるの?ここでの生活はどお?学校は楽しい?
「6才だよ。お経は毎日やってるから難しくないよ。お経の時は何も考えてないよ。何で僕に聞くの~?」
「9才です。ここでの生活はとても楽しいです。みんなと一緒に暮らせて、小学校にも行けるし。今日も午後から授業です。学校では数学と国語が好きです。」
さらに質問しようとすると、もう逃げだしそうです。
「僕たちにあまり聞かないでよ~!難しいことは分からないから大人のお坊さんに聞いて!」
二人とも照れながら学校へ行ってしまいました。かわいいです。