神奈川県横浜市の市営霊園・納骨堂は7ヶ所あります。国内で最も人口の多い市である横浜市だけあり、市営霊園だけでなく納骨堂も続々と開設されています。
横浜市西区にある久保山墓地は、明治7(1874)年度に開設された歴史ある市営霊園です。
総面積12万6,213㎡という広大な敷地に広がる墓地は、どのような霊園なのでしょうか。
久保山墓地の最寄り駅からのアクセス
公共交通機関を使って久保山墓地へ行くには、京浜急行線黄金町駅から行く方法と、JR横須賀線保土ケ谷駅から行く方法があります。
京浜急行線黄金町駅からだと市営バス32系統「保土ケ谷車庫行き」に乗り「久保山霊堂前」で下車します。
JR横須賀線保土ケ谷駅だと東口から市営バス32系統「日本大通り県庁前行き」または「市庁前行き」に乗り「久保山霊堂前」で下車します。
どちらもバスに乗っている時間は15分程度です。自宅から行きやすい路線を利用するのをおすすめします。
今回は京浜急行線の黄金町駅から行くことにしました。黄金町駅のバス停は改札を出てすぐの場所にあります。高架下なので、雨の日でも濡れることなくバスを待つことができます。
1つのバス停に複数路線のバスが停車するので、行き先を間違えないよう注意する必要があります。
時刻表を見ると、バスは多くて1時間に2本、1時間に1本しかない時間もありました。あらかじめバスの時間を調べておいた方がよさそうです。
駅の周りにはコンビニや飲食店も数多くありました。大きいスーパーはありませんでしたが、ミニスーパーのまいばすけっとがありました。お線香やお供え物、供花を購入できます。
久保山墓地近辺
久保山墓地の最寄りのバス停、「久保山霊堂前」は浄土宗光明寺の目の前にあります。ここから久保山墓地までは徒歩約5分ほど。乗ってきたバスの進行方向と同じ方向に歩いて行きます。
バスは駅を出発するとなだらかな坂道になっていて、久保山墓地手前にはかなりの急坂を上っているのが分かりました。バス停から墓地までの道のりは平たんなので坂はありません。
久保山墓地入口近辺
久保山墓地の周辺でお寺と同じくらい目に付いたのが、茶屋と呼ばれるお店です。お墓の相談がメインですが、お墓参りに来た方も立ち寄っていました。
こちらのお店では供花やお線香などを購入できるようで、火をつけてもらったお線香を持ってそのまま久保山墓地にお参りに行く方も見かけました。茶屋の中には店頭に貸し出し用の水桶や柄杓を置いているところもありました。
久保山墓地の周辺環境
久保山墓地の中でバス停に最も近い場所にあるのが、バス停の名前にもなっている久保山霊堂です。
霊堂内の納骨堂は、6体分の遺骨を納めることができる家族納骨壇と、1体分の遺骨を預けられるロッカー式の短期保管庫があります。遺骨の一時預かり施設として、随時新規使用者の申込みを受け付けています。
また霊堂内には固定椅子が220席ほどあり、通夜・告別式にも使用できる大式場や、法事や小葬儀に使用できる22畳の小式場もあります。
また、霊園に向かう途中に久保山斎場もあります。
こちらは1〜3階まである駐車場がありました。この日は友引の前日ということで「休場日」の看板が出ていました。
久保山墓地全体の案内
横浜市の市営霊園の中でも最も長い歴史を持つ久保山墓地。
常清寺・林光寺・大聖院の3寺の土地が主になって造られた、140年以上の長い歴史を持つ墓地です。1万4,000区画に及ぶ区画の中には著名人が眠る墓も多い墓地です。
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久保山墓地内の区画
久保山墓地は市営霊園と寺院墓地が混在しています。
ある程度番号通りに並んでいる区画もあれば、番号が飛んで区画が広がっている区画もあります。
管理事務所の横を入ると、裏手に久保山墓地が一面に広がっています。
まずは園内中央にある「かるべ茶屋」を目指して歩いて行くことにしました。
管理事務所〜かるべ茶屋(区画K36・K39・K40・K43、K44・K35・K45・K46)
ゆるやかに坂になった広めの通路を進んで行くと、右側にはK36区、左側にはK39区とK40区が広がっています。
和型の墓地が立ち並ぶ、入口から近い便利な区画です。
K39区、K40区には一際目立つ大きな墓地がありました。墓石にある「美澤先生」とはY高と呼ばれる横浜商法学校の前進、横浜商法学校初代校長、美澤進氏のことです。墓石の前には校訓が書かれた石碑もあります。
K36区は久保山斎場の裏手まで広がる区画です。洋型の墓石はほぼ見かけず、和型の墓石が数多く立ち並んでいます。
さらに先へ進むと、坂は徐々にきつい下り坂になります。それでも広さはあるので、しっかりと足元に注意を払えば不安はありません。
坂の途中、左側にはK43区、K44区があります。和型の墓石が並び、洋型の墓石は見当たりません。
ゆるやかな坂の先は階段になっていて、階段の右側に広がっているのがK35区です。K35区には洋型の墓石もいくつか見られ、これまでの区画より白い墓石の墓地が多く見られます。
階段は広さもありしっかりとした手すりもあります。それでも長さがあり、お年寄りや小さなお子さんですと上るのに少し心配になる階段でした。
坂や階段を一度下りきったら、再び上り坂となります。奥に見える建物が、目標にしているかるべ茶屋です。
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かるべ茶屋・からす茶屋
軽く息があがりながらも、かるべ茶屋に着きました。こちらは墓石や墓地の相談だけでなく、お線香や供花のセット販売や墓参代行サービス、法事用会席も行うことができます。
かるべ茶屋の並びにはからす茶屋もあります。
2つの茶屋の間に広がる墓地は円覚寺墓地です。
周辺には市営霊園の墓地だけでなく西戸部墓地、東光寺墓地、からす茶屋墓地、林光寺墓地なども広がっています。
からす茶屋裏手〜久保山斎場方面(区画K31・K32・K33、K35)
からす茶屋の裏手にはK31区、K32区が広がっています。奥に見える建物は霊園に向かう途中で通った久保山斎場です。
K31区、K32区の奥にはK33区、K35区が広がっていますが、久保山斎場の手前には妙音寺墓地が広がっています。
かるべ茶屋周辺(区画K25・K26・K27、K28)
かるべ茶屋、からす茶屋が並ぶ道に戻り、園内をさらに奥に進んでいきます。
このあたりはK25区とK26区です。墓地の広さも墓石も異なる、様々な墓地が広がっています。
K25区の先は階段になっていて、みなとみらいのビル群がきれいに見えます。
手すりがついた階段とスロープもありますが、角度が急なので車椅子やベビーカーでは厳しいと思われます。
手前側がK27区、奥に広がっているのがK28区です。白い墓石や石を使った墓地が多いのが印象的でした。
階段を降りるとまた下り坂が続きます。
かるべ茶屋〜円宝寺方面(区画K23・K21・K03・K24・K20・K04)
通路の右側からK23区、K21区、K03区と続き、左側はK24区、K20区、K04区と続いていきます。
K21区周辺では長い歴史を感じさせる墓石も多く見られました。
このあたりも、さまざまな墓石が見られ広さも異なる墓地が広がっています。
K03区へと坂を下りていくと、新しい墓石や洋型の墓石も目にすることができました。K03区はこれから新しく墓石が建てられる区画が多く、区画番号や広さが表示された区画が多かったです。
坂を下りきるとK02区があり、ちょうど久保山墓地を縦断した形になります。
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島茶屋(区画K01・K04)
K02区の隣には臨済宗円宝寺があり、その隣には島茶屋があります。こちらでもお線香や供花などを購入できます。
近くには自動販売機もありますので飲み物を買うこともできます。
島茶屋の道路を挟んだ向かい側にあるのがK01区です。
K01区の隣にあるのが円満寺で、周辺には円満寺墓地も広がっています。K01区は平地に広がっていて、ゴミ箱やトイレも近くお墓参りには便利そうです。
道路を再び渡り、K04区とK05区の間の道を進んでいきます。
K04区もこれから新しく建てられる墓地が多く見られました。
著名人の墓も多い久保山墓地ですが、個人の墓と言うことで案内板などはほぼありません。
官修墓地
「官修墓地」と書かれた看板があり、古めかしい階段を上がると、ほかの墓地とは明らかに雰囲気の違う広い墓地があります。
墓地の正面には石碑があり、戊辰戦争で命を落とした長州藩士が眠っていることが分かります。
以前は神奈川県の管理だった長州藩の官修墓地ですが、ほとんど無縁のままの状態で荒廃していたため昭和56(1981)年に西区観光協会と山口県によって整備されたそうです。
円宝寺〜妙音寺方面(K6〜K19区)
階段を下りて元の道に戻り、坂道を上がっていくとK19区があります。
K6区の隣にはK7区があり、K8〜K12区と続いていきます。
K19区の隣にはK18区があり、さらにK17〜K13区が広がっています。
このあたりは通路も広く、きれいに舗装されています。
通路に面している墓地は広々としてお参りしやすいですが、1ブロック奥にいくごとに斜面がきつくなります。人がすれ違うのがやっとというほどの細い通路になっています。
K12、K13区はこれから墓石が建てられる区画が多く、墓石も洋型の新しいものが目立ちました。
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妙音寺〜かるべ茶屋方面(K46〜K52区)
坂を上るとK52区です。かるべ茶屋がある霊園の中心に向かって歩いて行くと、また下り坂です。K52区の隣にK51区、K49、K48区と続き、K51区の下にK50区があります。
通路はそこそこの広さがありますが、各所に段差が多く歩きやすいとは言えません。墓地の広さもばらつきがあり、墓石は和型が多いながらも個性的な墓石も見られる区画となっています。
K51区にはNHK朝の連続テレビ小説のモデルにもなり、「赤毛のアン」を翻訳したことでも知られている村岡花子先生のお墓があります。
案内は一切ありませんので、坂を上ったり階段を下りたりしながら探しました。K51区とK14区の通路沿いの角地に村岡先生の墓地はありました。しっかりと歴史を感じさせるのに洗練された印象のある墓地です。
K14区には元内閣総理大臣・吉田茂の養父でもある吉田家本家の墓地があります。
K48区の隣にあるK47区には、今でも人気の高い「男はつらいよ」シリーズの初代おいちゃん役を演じていた森川信さんのお墓があります。
丘の上にあり、見晴らしのいい場所です。奥に見える墓地は、林光寺墓地と中山墓地です。
K46区はほどよいゆとりのある区画になっていて、通路も広くなっています。
しかし通れると思っていた通路が行き止まりだったりと区画を通り抜けるのが難しくなっています。
管理事務所周辺(区画K42・K37・K38 ・K52)
K42区は東福寺墓地、順忍寺墓地、普門院墓地、妙音寺墓地の寺院墓地に囲まれた区画です。K42区から管理事務所方面へ向かう途中にあるのがK37区、K38区です。
勾配を利用した段差のある区画になっています。墓地は広めの区画が多く、趣のある区画です。
管理事務所左手(K53区〜K62区)
管理事務所に併設されている公園の横に出て、バス通りをさらに歩いていきます。
木村茶屋と田中茶屋の間の道へ入り、細い道を先へ進みます。細い道の先はマンションの脇道につながり、さらに進むとK61区があります。
なだらかに下っていく坂の両脇に区画が広がっています。どちらも墓石だけでなく灯籠や五輪塔が建てられ、植木が植えられている墓地も数多く見られました。
外柵がある墓地も多く、かなり広い墓地になっているのが分かります。
K59区も外柵のある墓地が多くなっています。
このあたりからはみなとみらい地区のビルが見え、景観もよく風が吹き抜ける心地の良い場所です。
K59区の先には階段があり、その先にはK53、K54、K55区があります。
K55区は階段を下りてすぐの区画です。周辺は墓地なので視界をさえぎるものがなく、開放的な雰囲気です。
K53区は区画全体が下り坂になっています。柵の向こう側に見えるのはK50区周辺の墓地です。
K59区から下りてきた階段の右手側にもう一つ階段があり、そこを下りるとK54区があります。広い墓地もあればコンパクトな墓地もあり、どれも歴史を感じさせる墓石が多いです。
K59区へつながる階段を上り、K56区、K57区、K58区へと進んで行きます。K56区には、横浜で生みだされた眞葛焼(まくずやき)の創始者である陶芸家・宮川香山のお墓もあります。
K56区、K57区、K58区の墓地は、外柵もある広々とした広い墓地もあれば、通路の脇に墓石と線香立てと花立てのみのかなりコンパクトな墓地もありました。かなり広さに違いがあるという印象です。
このあたりの区画は高低差があり、上り下りしやすい手すりのついたきれいな階段もありました。
無縁供養墓
K11区の奥に建てられているのが無縁供養墓です。うちっぱなしのコンクリートが独特の雰囲気を持ち、凛とした雰囲気があります。
案内板には無縁供養墓の場所などは記されていませんでした。
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久保山墓地の設備
管理事務所
管理事務所は久保山墓地入口にあります。管理事務所の横にはトイレがあり、同じ敷地内に遊具のある公園もあります。
子どもたちが楽しそうに遊んでいて、明るくのどかな雰囲気です。公園には遊んでいる親子連れのほか、お弁当を食べている方やお茶を飲んでる方も見かけました。
ゴミ捨て場
管理事務所の裏はゴミ捨て場になっています。燃やすゴミ、ビン、缶、ペットボトル、古い塔婆など細かく分類して捨てられます。
墓地内にはゴミ箱がある場所もありますが、大半は区画ごとに指定されたゴミ捨て場が設けられていました。
どのゴミ捨て場にもゴミは残っておらず、しっかりと掃除もされたきれいな状態でした。
一方で墓地内に2、3ヶ所見かけたゴミ箱スペースには、大きな袋に入れられたゴミがいくつもありました。
おそらく墓地内のゴミ捨て場のゴミを集めて、収集車が入れる場所に設置されたゴミ箱にまとめているのではないでしょうか。
トイレ
園内にトイレは2ヶ所です。管理事務所の隣とK02区の近くにあります。どちらも区画の端になりますので、お墓参りの前に済ませておくことをおすすめします。
また墓地で水場は見かけませんでした。ゴミ捨て場にバケツと柄杓が置いてあるところも1ヶ所だけ見かけましたが、水道はありませんでした。
久保山墓地全体の雰囲気
園内の敷地が広いので、お墓参りで大混雑ということはなさそうです。ただし、バスは平日の日中でも混雑していましたので、バスが大混雑することは考えられます。
平日の日中でしたが、お墓参りに来ている方を2組ほど見かけました。親子連れでゆっくりと坂を下りながらお参りに来ている方もいました。
園内にはカラスの姿も確認しました。そのため、食べ物などのお供え物は持ち帰るよう注意を促す看板も建てられています。
久保山墓地は広大な敷地に広がる、園内の高低差がかなり激しい墓地でした。墓地内には、至る所に長い坂や階段、坂や段差があります。区画によって歩くのが大変な場所も多いですが、慣れれば歩きやすい通路も見つかると思います。
場所によって広さや雰囲気が異なりますが、やはり景観がいいのはとても魅力的です。
園内に緑が多いわけではないのに、墓地に植えられた植木や周辺の寺院の木々などのおかげでさみしい感じはしませんでした。
高台にある久保山墓地からは、みなとみらい地区から横浜駅周辺を見渡せます。観覧車や高層ビル群などが遠くに見え、格別の開放感が味わえます。開放的で景色がいいのは何よりも魅力です。
しっかりと管理がされているので、ゴミが散乱している場所や雑草が生え放題になっている墓地などは見かけませんでした。
久保山墓地の使用者募集について
現在久保山墓地では新規分譲は行っておらず、1.4〜1.9㎡の返還墓地の募集のみとなっています。毎年の募集ではないので、今年度の募集があるかはまだ分かりません。募集がある場合は、毎年9月に横浜市のホームページと広報よこはま9月号に掲載されます。募集期間は約1ヶ月です。
ここ最近の募集を見ると、平成29年度〜令和元年度には募集が行われています。募集数を超えた場合10月に公開抽選が行われ、11月に見学会が開かれます。翌年の2月以降に使用開始となっています。倍率は毎回異なりますが、令和元年度は0.83倍で無抽選でした。
主な応募資格は、横浜市内に住人登録をして3ヶ月以上で資格審査時点で住民登録がある方、1世帯1申込み、自宅や一時保管施設に遺骨を保管・収蔵している方などがあります。
申込の詳細は、募集が開始されたら横浜区役所や行政サービスコーナーなどで、申込書類「横浜市営墓地・納骨堂 申込みのしおり」が配布されますので、そちらをご確認ください。
広大な敷地と見晴らしのいい景観。そして有名人も数多く眠る墓地。久保山墓地の魅力はやはりそこに尽きます。
お近くの方はもちろんですが、バス停からは近いので横浜市にお住まいの方は検討してみてはいかがでしょうか。
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