京都市内に7つある市営墓地のうちの1つ「京都市営 若王子山(にゃくおうじやま)墓地」は、その名の通り若王子山山頂にあります。参拝するには山道を登る以外に方法はなく、決して便利とは言えない墓地ですが、同志社墓地があることもあり訪れる人は後を絶ちません。
森の中にある静寂に満ちた、若王子山墓地を紹介します。
若王子山墓地の最寄り駅からのアクセス
若王子山墓地周辺には駐車場は一切ありません。最寄り駅の蹴上駅近辺にも駐車場はないので、結局は市バスや地下鉄に乗り山道を歩くことになります。
京都市営地下鉄を利用した場合
若王子山墓地の最寄り駅は京都市営地下鉄東西線蹴上駅です。1番出口から若王子山墓地まで徒歩で約30分かかります。
蹴上駅出口を出て右に進むと、「ねじりまんぽ」(蹴上トンネル)があります。上からの重みに耐えられるようねじれたように斜めに積み上げたレンガがノスタルジックで、通り抜けるとタイムスリップしたような気分になります。
「ねじりまんぽ」の上は、蹴上インクラインが通っています。南禅寺船溜と蹴上船溜を往復させるために敷設された全長約582mの傾斜鉄道で、現在は国の史跡として整備されています。両脇には約90本の桜並木があり、多くの観光客が集まる人気のスポットとなっています。
臨済宗南禅寺派大本山「南禅寺」を通り抜けます。
同志社大学創設者である新島襄は南禅寺内に埋葬される予定でしたが、直前に南禅寺側がキリスト教の葬儀に難色を示したことから現在の同志社墓地に埋葬地が変更されたそうです。
南禅寺三門のそばには「観門亭(かんもんてい)」というお土産物屋さんがあります。
和菓子や佃煮・工芸品などを販売しているほか、トイレもあるのでここでひと休みするのもよいのではないでしょうか。
南禅寺の脇から山道に入ると、途中まではこのような整備された道が続きます。
南禅寺の奥の院や滝行が行える駒ヶ滝などを越えると舗装が無くなり、急に山奥に来たかのような雰囲気に変わります。
若王子山墓地までは、しばらく足場が良いとは言えないような道が続きます。このため、蹴上駅方面からのルートは山歩きに慣れていない方にはおすすめできません。
京都市営バスを利用した場合
最寄りのバス停は「東天王町」「南禅寺永観堂道」「宮ノ前町」と3つあります。この中でも市内の各方面からアクセスの良い「東天王町」からの行き方を説明します。
各バス停からの所要時間は「東天王町」「南禅寺永観堂道」は約30分、「宮ノ前町」は約25分です。
東天王町バス停には京都市バス5、93、203、204系統が停車します。
京都駅や嵐山、四条河原町など市内各方面から乗り継ぎなしで訪れることができます。
バス停にある周辺観光案内図には、若王子山墓地でなく「新島襄・八重の墓」と書かれています。この先も要所要所に道案内があるので、迷わずたどり着くことができます。
バス停を過ぎると、住友家が収集した美術品や工芸品を収蔵・展示する泉屋博古館(せんおくはくこかん)が見えてきます。
住友家第15代当主住友春翠が収集した中国古銅器と鏡鑑を中心に書画、洋画、近代陶磁器、茶道具、文房具、能面・能装束など多様なコレクションを誇ります。「泉屋」は江戸時代の住友の屋号だそうです。
若王子神社前から銀閣寺まで琵琶湖疎水沿いに歩道が続く「哲学の道」。この南端にあたる若王子橋を渡ります。
「哲学の道」は春は桜、初夏は新緑、秋は紅葉と四季折々の景色が楽しめ、多くの観光客が訪れます。また水がきれいなことから、京都でも有数のホタル観賞スポットとなっています。
若王子神社(正式名称は熊野若王子神社)の脇を通ります。
境内裏山には桜花苑があり、例年4月第1日曜日には桜花祭典が行われます。
若王子神社を過ぎると、若王子山墓地につながる山道の始まりです。
ところどころに設置された「新島襄・八重の墓あと〇〇分」という表示に励まされながら25分ほどの山道を登り進めます。
山頂にある若王子山墓地までは、おおむねこのような山道が続きます。
イノシシやサルなどの野生動物が生息しているそうなので、日中でも一人での参拝は避けたほうが良いかもしれません。
山道ではありますが、足場がやや整えられていることと道案内が多く分かりやすいことから、このルートで若王子山墓地に行くのが一番簡単なようです。
若王子山墓地全体の雰囲気
若王子山墓地を含む京都市営墓地は、明治6年の火葬禁止令により埋葬地を確保出来ない人々に対し京都府が墓地の区画を指定したのが始まりとのこと。
明治22年に市制が施行されたときに京都市に移管され、平成25年度には名称が「共葬墓地」から「市営墓地」に変更されました。
若王子山墓地の面積は5,525㎡。京都市営墓地の中でもやや規模の小さい墓地です。市が区画・造成したのではなく、利用者が自然発生的に開拓を行い、今のような墓地の形になったそうです。
墓地の周囲に境界となるものはなく、「霊園」というよりも「山頂付近にお墓がまとまってある場所」といった感じです。
一角には同志社大学が管理する同志社墓地があり、その周辺にはキリスト教徒の墓が多くあるのも特徴です。
新島襄が眠る同志社墓地
若王子山墓地のうち1割強の広さを占めるのが同志社大学の共同墓地です。同志社大学創設者である新島襄とその妻の八重を始め、外国人宣教師など同志社関係者が多く眠っています。
大河ドラマ「八重の桜」で一躍有名になったこともあり、一般の参拝者も多く訪れるそうです。
同志社墓地内には、同志社関係者の希望に応えて1973年に設けられた「同志社共葬墓」があります。毎年5月には納骨式が行われ、同志社で教授を務めるなどしたゆかりのある方々の分骨したご遺骨が埋葬されます。
納骨式の他、同志社創立記念日の11月29日と新島襄が永眠した1月23日には祈祷会が行われます。
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若王子山墓地内の区画と設備
若王子山墓地の区画
若王子山墓地も他の京都市営墓地と同じように、第1区から第4区まで区画が分けられているようです。しかし現地で確認したところ、墓地内には区画を表示するものは見つけられませんでした。
墓地内には墓石が建てられておらず空いている場所もありましたが、新しい墓石は見かけませんでした。区画によって広さは違うものの、墓石のみといったお墓が多いこともあり、ゆったりとしているように感じます。
区画については募集が出たときに確認するのが良いでしょう。
若王子山墓地の設備
若王子山墓地は京都市によりゴミ箱の設置や定期的な草刈りなどが行われています。しかし水道やトイレ・自動販売機などの設備は一切ありません。このため、参拝前にしっかりと準備する必要があります。
また、若王子山墓地周辺には、お線香やお供物などを購入できる店舗は見かけませんでした。必要なものは、お墓参りに行く前にあらかじめ用意していきましょう。
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若王子山墓地全体の雰囲気
最寄りのバス停や地下鉄からの道のりは山道のため、足腰に自信のある方でないと参拝は難しいでしょう。園内の通路も舗装されていないので、土の上を歩くことになります。石や枝も多く落ちているので、歩きやすい道とは言えません。
サンダルやヒールのある履物は避け、スニーカーなどの歩きやすい靴で訪れるのが望ましいです。
また、野生動物に荒らされないようお供えしたものは持って帰る、山火事防止のため火の取り扱いに注意するなど、山の中にある墓地特有の注意が求められます。
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若王子山墓地使用者募集について
募集の告知と申し込み
若王子山墓地を始めとした京都市営墓地の利用者募集は不定期で、市民しんぶん(全市版)及び京都市のホームページ上で告知されます。新たな造成は行っていないため、募集対象は返還された区画となります。
また、市営墓地のため宗旨宗派は自由で、指定の石材店はありません
申し込み資格
申し込み資格としては、京都市内在住で、住民票により居住が確認できる方(法人は不可)などの条件があります。
また、すでに市営墓地を使用されている方は申し込みをすることはできません。
費用
使用登録時に納める墓地使用料は1㎡あたり8万円~20万円という価格帯で、京都市営墓地の中で最も低価格となっています。
また、毎年納付する墓地管理料は京都市営墓地すべて共通で、1㎡当たり1,900円です。
若王子山墓地の墓地使用料は、第1区が200,000円 、第2区が160,000円、第3区が120,000円、第4区が80,000円となっています。
募集状況
若王子山墓地をはじめとする市営墓地は、定期的に使用者の新規募集を行っています。しかし、毎年ではなく京都市のホームページによると募集実績は平成4、6、11、13~18、20~28年度とのこと。
若王子山墓地の募集や詳細については京都市保健福祉局に問い合わせるのが確実だと思われます。
高齢になってからのお墓参りのことを考えるとハードルが高く感じられるものの、静かな環境と費用が抑えられる点がメリットとなる若王子山墓地。
まずは「新島襄・八重の墓」を参拝し、その雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。
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