道路の拡張工事中に出てきた家々を守る石柱、その数473基。
女性スタッフが叩いてくれた大きな銅鑼の響きは、今までにない不思議な感覚でした。
ラオスには珍しい“お寺”でなく“神社”
ラオスの首都ビエンチャンに「Vientiane City Pillar Shrin」という直訳すると「ビエンチャン市の柱の神社」があります。ラオスでは殆どの宗教施設がラオス語のWat(寺)もしくはTemple(寺)ですが、Shrin(神社)というのはとても珍しい表現です。
ここは2012年に完成した新しい建物で、ヨーロッパのお城のような尖塔と、濃い緑色の屋根が特徴的で、神社と言っても、日本のように鳥居や参道があるわけではありません。
この宗教施設がお寺ではなく、なぜ神社なのか。それは神社というのは、山、川、木、岩、など、神が宿りその土地を護ってくれる自然物を祀るのですが、ここでも仏様をご本尊として祀っているのではなく、“石柱”を祀っているからなのです。
地中から発掘された数々の石柱
この神社で祀っている石柱というのは、この村の家々の守り神でした。ラオスは後発途上国とは言え、近年の首都ビエンチャンの発展は目覚ましく、道路の拡張工事がいたるところで進められています。
この村もたくさんの道路工事で地面を掘り起こしたのですが、その時に次々に大きな石の柱が出てきました。その数は何と473基。
その当時の発掘の様子は展示されている写真で確認することができます。地中の奥底から出てくる幾つもの石柱。多くは1mほどで日本の墓石と同じようなサイズです。そして中には縄文土器のような模様が彫られているものもありました。それらを専門家の立ち合いの元に掘り出し、たくさんの僧侶が供養をしている姿が映っていました。
日本の神道にも道祖神(どうそしん)という、道に祀られ、村を守ってくれる石像がありますが、意味合いも姿もこの道祖神に近いのでしょう。この国も仏教が広がる以前は、自然物を崇拝の対象として手を合わせていたのです。
現在それらの石柱はこの建物の壁の中に積まれていて、参拝者はガラス越しから見ることができるようになっていました。
そして、この石柱を一つのまとめたのが、現在この建物中央に建てられた金色の柱。過度な装飾や彫刻が殆どなく、とてもシンプルな姿が自然物を表していることを感じました。
石柱を祀る風習と不思議な銅鑼
ここに三年務めているというスタッフの女性にお話しを聞いてみました。
「昔は一軒の家につき、一つの石を祀る風習がありました。石を置くことによって、家を守り、魔よけになり、幸運を招くとされていたのです。今はそうした風習はなくなり、家を建てる時にその土地を僧侶に拝んでもらうというように形が変わってきています。」
と、日本だったら家を建てる時に神主さんにお願いする“上棟式”や“建前”のような儀式があることを教えてくれました。
そして、女性スタッフが「これはとても珍しいものでよ」と、大きな銅鑼を、かぼちゃサイズのバチで軽くたたいてくれました。
「ゴーン」という音は普通だったのですが、その後が驚きです。叩いた後に中央の円を両手で軽く、子供の頭をなでるようにさするのです。
すると「ゴオオオン ゴオオン ワンワン ワンワン・・」という鐘の響きが両手でさすっている間中、建物全体に延々と鳴り響くのです。音を手で奏でて、四方八方から延々と聞こえるなんてとても不思議な感覚でした。